《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第6話 MKⅠ②
「MK(マジカルカレント)を説明するには、DMTの重力子エンジンについて知ってないと話になんねー。まずは、そっから行くぞ」
彼は僕の前で仁王立ちになると、パッド型のPCを取り出して、その畫像を織りぜながら話し出した。出航時に軍から全員に支給されたヤツだ。
「暖斗くん。重力子エンジンは、重力子回路と、エンジン部に分かれるのは知ってんな?」
「うん」と僕は答える。そこから彼は一気に続けた。
「重力子回路に電気が流れると、そこの時間と空間が歪む――重力場だ。ずっと見つからなかった幻の素粒子、重力子――グラビトン――を発見して、この星の重力の2 %分だけコントロール出來る様になった人類が、生み出したカラクリだ」
「でね。重力子回路に通電させると、重力場が生まれて任意の方向――つまり好きな方向――に、を『落とす』ことができる。例え真上、空に向かってでもな。それが重力子回路だ。そしてその『落とす』力を円柱で円方向にぐるっと一周させて、中心にある錘(おもり)羽(ばね)というハネを回す」
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「いや、回す、と言うより右回転に落ち続けさせる、と言った方が正確だな。まあその、中心のハネを回した分だけを、回転運として取り出せる。ここまでが一般に言う重力子エンジンだ」
彼が持つパッドPCで、畫像を見せてもらった。
金屬製の筒の側に、基盤がらせん狀にり付けられている。これが重力子回路。その筒の中で回転するのが錘(おもり)羽(ばね)、パスタのフジッリにそっくりで、らせん階段みたいな形をしている。
回路もハネもらせん狀なのは、安定した回転を得るためと、重力の変化を縦席隔壁(ヒステリコス)に向けずに、DMTの背中方向へ逃がすためだそうだ。
「で、単に回転運だけを取り出す機械をエンジン、その回転で発電する機械を重力子ジェネレーター、若しくは重力子ダイナモーターって言うけど、重力子エンジンで一括りにする人も多いから、この辺はザックリ知っとけばいいよ」
七道さんはパッドの畫面をなぞってページを変えた。
「で、こっからがMK(マジカルカレント)と、その後癥のハナシな」
「うん。本題だね」
僕はを乗り出した。
「基本的には軍機なんだ。でもそういう癥狀が出ることはもう各國でバレバレだから、かなり軽い方の軍事機だな。出航前に知ってたのは、付屬中3人娘と、私、岸尾と逢初。
直前合宿の時に個別に呼ばれて、誓約書にサインして、レクをけたよ。今は、暖斗くんが寢てる間に乗員全員に説明があったけどね」
「なんだ、麻妃(マッキ)も知ってたのか、水くさいなあ」
僕はため息をついた。
「まあそう言うなって。実際に暖斗くんに癥狀が出ると判るまでは、機扱いだったんだからさ。で、MK(エムケー)って略したりするけど、これが『マジカルカレント』の略な。『魔法の微弱電流』だ」
僕らのいるハンガーデッキは、常に何かしらの機械音が響いている。ここにあと2人、七道さんと同じ整備士の子がいるはずなんだけど、コンコンカンカン作業の音だけで姿は見えない。
「正直、軍でもこの現象の正がまだ解ってねーんだ。解ってんのは、特定の人間の脳波が、さっきの重力子回路に影響を與えるってハナシだ」
「その重力子回路は、電気を流せば流す程、比例して重力を取り出せる。それをさっきの要領――回転運で発電な。それで電気に変えれば、最初に重力子回路に流した電力量との差額が得られたエネルギーって事になるけど――」
「まあ、回路に印加した電力なんて微々たるもんだから、小電力で大電力を得る、打ち出の小槌みたいなシステムだ」
そしてここで、七道さんはし申し訳なさげな表をした。
「で、こっからは、量子論とか素粒子理學になってくんで、ちょっと難しくて私も人に説明する程解ってねーんだけど」
七道さんは頭をかく。
「重力ってのは、私らをこの星の中心に引っぱりつつも、異次元、余剰次元に逃げてる分が大きいらしいなあ。この重力子回路がグラビトンって重力素粒子をちょびっとだけコントロールすることで、その逃げてく重力をゲット出來てんだそうだ」
「だから、3次元を超えたエネルギー発生をしている。質量保存の法則、エネルギー保存の法則はこの回路には適用されないんだとよ? ここんとこ伝わった?」
彼は僕の顔を覗き込んだ。
「そこは一応わかったよ。つまりは、回路に電気流せば流すほど、『余剰次元エネルギー』からよりたくさんの電気が得られる夢の機械だ。それは知ってる。僕らの親世代は電気を使ったら、その分だけ『電気使用料』を払ってたってね」
「だってなあ。『基本料プラス使った分』、だってな。そんなん気にしながら生活するなんて、窮屈だったろうな」
僕の返事に七道さんもうんうんと頷いた。
「そうそう。でもメリットばかりじゃねーんだな。まず、その回路に電気を流す、ってトコがネックなんだ。大電圧をかけても、回路に電気がチョロチョロとしか流れねーんだよ。だから、得られる重力も、チョロチョロとしか。ってことで、クッソ頑丈でクッソ重い錘羽を、ゆっくりとしか回せないんだ」
「暖斗くんも知っての通り、DMTの主兵裝、回転槍(サリッサ)な。あの中にも重力子回路がってる。初速がつかないから、予備回転をさせて、時間かけて回転數を上げないとダメ。あれが秒でMAX回転してたら、マジでガチの最恐! 手用兵裝(インスツルメント)なんだけど。普通の刀剣なんかじゃけ太刀すらできね~から」
彼は悔しそうに言った。
「これが、重力子エンジン第1の謎な。そして、第2が、マジカルカレント。なんと、回路の近くにいる人間のある特定の脳波が、一定量しか流れないハズの回路に干渉して、より多くの電流を流す事が出來てしまう。結果、ジェネレーターはより多くのエネルギーを発生させることができる」
「例えるなら時速100㎞しか出せない車のハズが、マジカルカレント能力者が運転すると、あら不思議、105㎞とか110㎞までスピードが上がる。そんなじ。消費電力はほぼ同じでね」
七道璃湖は、呆れたじで両手を上げる。本當に、核心部分が解明されていないのが、悔しそうだった。
そして、続けた。
「そして、第3の謎な」
※重力子エンジン、変わったエンジンだな。と思ったそこのアナタ!!
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