《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第11話 重力子エンジン①
この戦艦の艦名が、無事?「ラポルト」になった日の午後、僕はDMT(デアメーテル)のハンガーデッキに足を運んでいた。
デッキには、ワイヤーや作業アームで懸架された僕のDMTがあった。クシュローシスと呼ばれる整備用の板狀構造に固定され、靜かに佇んでいる。その巨大な橫顔を見ながら、DMTを取り囲む整備橋(ゲピューラ)に座り込む。
「お、暖斗(はると)くんじゃん。はもういいんか?」
後ろから作業服姿の七道さんが現れた。
「うん。もうけるようになったよ」
「そっかそっか。今しがた君のDMTの処置が終わった所だ」
「えっ? どこか壊れてた? 壊したっけ?」
僕が慌ててそう言うと。
「ああ、今回は君さあ、戦闘でMK(マジカルカレント)使ったろ? 高速機した分足まわりの裝甲とかが、巖に當たってキズになるんだよ。まあ、DMTの裝甲素材はS(ス)-H(ク)CR(ロ)-N(ン)だから、細かいキズはほっといても治るけど、な。気になる所だけ私がCR(レジン)充填しておいた。後で見てみるか?」
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と、彼は答えた。良かった、壊して無かったとをなでおろしていると、両手を腰にあてて話していた七道さんが、突然ハッと顔を上げた。
「換気してるか? 換気。換気」
「換気? しないとダメなの?」
彼はパッドPCで換気の作確認をしながら、こちらを正視した。
「――今日の容は、語のSF設定のマニアックな話になる。興味の無い方は、ココでブラウザバックしてくれ」
「‥‥‥‥相変わらず誰に言ってんの? そういう畫の見過ぎだよ」
「いやあ、私らが専門的な事話し出すと、周り、特に商業科に引かれるから、一旦こう言って笑いを取りつつ一呼吸置くんだよ。暖斗くんは大丈夫?」
なんだかんだ言って、七道さんも々気にするんだな、なんて思いつつ、僕は返事をした。
「教えて下さい。七道パイセン。僕は、研修はDMT縦シミュと基礎トレばっかで、DMT構造學とかはちょっとしかやってないんで」
七道さんはニコニコ笑っていた。
「‥‥換気はよしっと。じゃあ続きな。さっき、裝甲が自己治癒するっていったじゃん。
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DMTの裝甲に使われているS(ス)-H(ク)CR(ロ)-N(ン)の「N」って、窒素の事なんだよ。窒素付加型で混種な複合樹脂のスゲーヤツ、って意味な――」
「――窒素付加型スーパーハイブリッドコンポジットレジン!! 空気中の窒素を大量に取り込んで、微細破折(マイクロクラック)なんかを埋めてくんだ。ただ、『複合樹脂』の中に迷彩用の顔料とか金屬元素とかを『混種(ハイブリッド)』で練り込んでるから、変なガスも出る。酸素濃度も変わる。それでこのデッキの換気が必要なんさ」
「さすが、七道さん、詳しいね」
「へっへー。な、専門的だろがよ」
ベリーショートの髪をかき上げながら、彼は楽しそうに笑う。
「まあ、私は『大工屋』だからね。暖斗くんのDMTは面倒みたる」
七道さんのちっこい背中を見ながら、僕は思い出した。僕がMK後癥の時の「対処法」、ミルクを飲んでる件を艦のみんなが知ってる、という事を。どう思われてるか、気になるから訊ねてみようか。
七道さんなら、聞きやすい。
「なんだよ。ソコいじってしいのか? まあ、たしかに、子からしたら艦生活のいい憂さ晴らしにされそうだな。イヤ、言えばいいじゃん。『笑ったは覚えてろよ!』って。普通の男子みたいに」
「いやあ、そういうの、極力言いたくないんだよね。この航海の間だけでも」
「‥‥‥‥そりゃあ隨分お優しいねえ。私はさ、逢初が前かけ作りに來た時に、あらましを聞いてたからな。からかう事に生産をじないけど。千晴はちょっと驚いてたかな。『見てみたい』とか。――で、柚月が珍しくクスクス笑ってたな」
あの帽子で表見えない多賀さんが、‥‥笑ってた?
「まあ、止むを得ないのはみんな分かってるよ。この戦艦(ラポルト)には曲がったヤツは乗ってないからね。運営がそういうヤツはハネたらしいから」
へえ。そうなんだ。良かった。そこまで変に思われては無さそうだ。これならスプーンで逢初さんに食べさせてもらっている件も理解をもらえそうだ。
「それより逢初はどうだった。あの子はものすごい優秀らしいよ?」
急にそんな話を振られて、どきり、とした。
「ああ、々醫務室でお世話してもらいました。こんな事までやってくれるのか、ってくらい」
「中2で『準々醫師』の資格とか、普通にやべ~し、すでに持ってる他の資格も履歴書に書ききれなかったらしいじゃん?」
そうなのか? 僕はクラスメイトなのに、逢初さんの事をほとんど知らない。
*****
「右の肘関節がイマイチだったんだよ」
そう言って七道さんは僕の目の前で作業を始めた。あれ、さっき「終わった所」って言ってたような気がするけど。たぶん、僕が來たから追加でやってくれてるみたいだ。
彼曰く、回転槍(サリッサ)とかの手用武(インスツルメント)を持つ利き腕の関節が、一番先にガタが來るのだそうだ。
確かにDMTは戦艦より高くジャンプしても、著地する時は「フローター全開」にして、ほぼ自重ゼロにして著地するから、足とかはあまり負擔がないんだ。高速機する時にはホバリングするし。
でも槍で刺突する時はその反がモロに利き腕部にくるから、DMTで一番ケアが必要なのが利き腕ってことだね。
「ここの部品な、金屬疲労がハンパねーんだよ。‥‥今のに1個予備作っとくか」
「予備? あ、CAD/CAMか」
「そうそう。お~い。柚月(ゆづき)ぃ!」
「‥‥‥‥。は~い」
どこからか小さい聲がする。と、整備橋の下、DMTの足部の方から多賀柚月さんがぴょっこり顔を出した。居たんだそこに。
「柚月。ここの部品1個発注な。あ、待って。今型番の寫メ、アノ・テリアに送るから」
「‥‥‥‥。了解です」
多賀さんのブカブカの帽子が縦に揺れて、小さな聲がした。確か多賀さんが、CAD/CAM擔當。網代さんが3Dプリンター擔當だったハズ。この2つの機械があれば、DMTの部品や裝甲から僕の前かけまで、素材さえあれば作れてしまう、そうだ。
七道さんが語る。
「やっぱ。重力子エンジンの発明、実用化ってのが革命的だったんだよな。エンジンかしてれば無限に電力は生まれる。その電力で戦艦を空中に浮かす。鉄や大量の素材を積み込んでも、メガフローターで自重ゼロ。艦では必要な部品は自分で作れる、と。これで凄まじい程の継戦能力を得た訳だ、近代戦艦は」
「AIの自化も、だよね」
「そう。よく知ってんな。暖斗くん」
「親が言ってた」
「そうか。この戦艦のAI完全自運転化も、重力子エンジンのおかげだよ。AIって、この艦のコト全~部把握して、ハッキング対策しつつ超高速で思考してるから、消費電力ハンパ無いらしーしな。そのおかげで、私らみたいな中學生だけで運用しちゃってるんだけど」
七道さんは珍しくちょっと小聲になった。
「‥‥‥‥けどさ、一部の大人はこの験乗艦に反対してるらしいな」
「え? なんで」
「こっちはウチの親が言ってたハナシなんだけど。中學生に運用させた実績を作って、いざ戦爭になったら、徴兵年齢を14才まで下げるつもりじゃないかって。まあ、ネットでよくある謀論系のハナシなんだけど。『市外』の野黨議員とかが言い出しっぺらしい」
「‥‥‥‥マジ? 政治とかはよく分からないし、兵役義務は果たすけど、徴兵はイヤだなあ」
「だろ。でもこの通り、絋國には男子が生まれない。絶対數がなくて、軍は萬年人手不足。で、『#ガチ中學生16人で戦艦乗ってみた。ほおら、楽しそうでしょ。志願兵の応募サイトはこちらまで』っちゅう、現役中學生によるあざとカワイイ、キャンペーン実施中」
「ああ~。『艦の楽しそうな様子を畫配信せよ』って指令があったね。ネットつながらないから2日で終わったけど」
「一応、子と渚が、日次報告書も兼ねて撮影だけは続けてるぞ。編集は紅葉ヶ丘」
「すげー適役。何それ面白そう」
「あいつらじゃあ、盛り上がらね~だろ」
七道さんが、手をかしながら言う。
「‥‥‥‥なんかさあ、話が逸れたぞ。重力子エンジンは革命的だって所で」
「あ、そうだっけ」
七道さんのDMT構造學は、まだまだ続く。
※設定説明回は嫌いじゃないぞ。というそこのアナタ!!
後の展開の伏線なので楽しみにしててください。
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