《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第14話 右手Ⅲ①
「寢ちゃいましたか。赤ちゃん」
わたし、逢初(あいぞめ)依(えい)は、診療用(ドクターズ)丸椅子(スツール)を立ち上がった。そして、寢った暖斗(はると)くんのに目を向ける。
無邪気な寢顔だ。本當に赤ちゃんみたいな寢顔。
「ふふ」
思わず口もとから笑みがこぼれる。
あれから、そう、自分の家の事を話してから、2回目のミルクを飲んで(冷めてしまったけれど)、し雑談をしていたら、彼がウトウトしだしたのだ。
「笑ってほしいな」
彼から言われた。親からも、周りの大人からも、子からも、ましてや男子からなんて。
こんな言葉をもらったのは初めてだ。なんだろう、の奧がぽやっと溫かい。
彼は、「右手」の手のひらを天井に向けて、指を開いている。まただ。毎回こうしているという事は、時の眠儀式の殘渣かもしれない。手の甲でマットレスをなぞる、とか。
「ふふ、本當に赤ちゃんみたいなんだから」
自然と口にしてしまう。
Advertisement
「さて、始めなきゃ。失禮しま~す」
さっき暖斗くんにOKをもらった、リハビリマッサージの準備に取り掛かる。彼のバイタルは非接でも、室のセンサーが常時中央モニターに表示している。だけど、さらに詳細でなデータを取るとなると、やはりアナログで接型になる。データも自分のPCに直送されるから、手間が省ける。
パイロットスーツを開け、下著をめくり、暖斗くんの腹部にセンサーをっていく。同時に手首と足首にも。いつもバイト先でやっているせいだろう、抵抗なくできた。その後、手足をさすったり、ゆっくり折り曲げたりしてみた。初回なので軽めにやってみたが、暖斗くんが痛がる様子も無く無事終わった。
「MK(マジカルカレント)後癥候群(アフターエフェクツ)、ってものすごく知見がないのね。そもそも軍事機で、関わった醫療関係者がない。だからタテヨコにも広がらない、広げられない。癥例數がない。発現の不確実が高い。癥狀が不安定。効能を示す治療法、薬剤無し。――――結果、予後の対処法が確立しない、できない」
Advertisement
わたしは、暖斗くんの腹部に塗った膏を拭き取りながら、語りかける。
「ごめんね。暖斗くん。力になれなくて。なんで病気になるか、っていう源がまだ全然摑めてないの。だから治療法がない、作用機序もないからお薬も無い。ミルク飲んで寢てたら治るって、驚いたでしょう。ただの対処療法、醫療の敗北だよ。EBMがなきゃ、ダメだよね」
でもこれは、反撃のチャンスなのだ、とも思う。暖斗くんは、今までの3回の出撃で、3回とも病変あり。初めての「発癥確率100%」患者なのだ。
正直、3度目の出撃で暖斗くんに癥狀ありの報が來た時には、心臓が脈打った。
しかも1回目は、重力子回路に余剰電圧をかけていない、「MK後癥が理論上おこらない」筈の癥例(ケース)。さらなる謎は出てきたが、そんな事実に対して、準準醫師資格者、なんちゃってドクターのさらになんちゃって、の自分に今できること、は。
「暖斗くんを必ず回復させること、そして、臨床レベルでのデータの蓄積。いつかわたし達はこの病気にも打ち勝つ、必ず。わたしを含めた、多くの人達のデータを見た、使った、誰がが、必ず。それが醫者の端くれ、『醫療人(わたし)』の矜持」
*****
醫務室でPCにデータを整理し、記録する。実はこの験乗艦が決まった時に、小児科長から軍醫の紹介をけていた。
一般病棟を訪れた軍醫さんは年配の男3人だった。名刺をいただいたが、かなり上の方の方々だった。そのの1人は、わたしの父を知っている、と言っていた。父は、醫療関係の材を卸す商社マンだ。きっとこの病院にも出りしているのだろう。何しろ父が家に滅多に來ないから、そういう會話も無い。
こういう事で父の向を知るのは、ちょっと悲しかった。
「梅園(うめぞの)先生の息子さんも決まってね。それであなたに頼みがあるのです。逢初さん」
3人の先頭にいた紳士然の男がそう言っていた。「梅園」というのが咲見(さきみ)暖斗くんの父親姓だというのはこの時知った。咲見というのは、第2席(セカンド)であるお母さんの姓なのだろう。
4人の妻との重婚制度は、その家ごとに々と事がつきまとう。
あと、準準醫師のわたしにも、センセイとまでは呼ばれないが、一応醫師の方々からも「さん」付けで呼ばれる事を知った。
だって、小児科長(せんせい)は、わたしの事「依(えい)」って呼びつけだから。みんなの前でも。
でも、そうすると、ベテランの看護師長よりもわたしの方が格上となってしまう。1年半前までランドセルを背負っていたわたしが。資格絶対のヒエラルキーをじるとともに、命を預かる「醫師」の重みもじた。
頼みというのは、暖斗くんのMK後癥の事だった。昔から彼の事を知っている口ぶりだった。
14才になるのを待っていた、とも。
そして、MK後癥の今ある知見を全て見せてもらった。データを貰った、のではなく、見せただけ、なのは、小児科長(せんせい)がわたしの記憶力を軍醫さん達に伝えていたから。そしてデータで渡すのがご法度だからだろう。
まあ、民間人の中學生に見せる事ができるデータなんて高が知れていて、きっと本當に軍事機な事は當然伏せていたのかな? とは後で想像したけれど。
その上で協力を要請されて、即時了承した。こちらとしては軍の戦艦に乗せていただく分で、斷る理由がない。先生方の研究では、AI予想では高確率でMK後癥が出るとのことだから、その対処は必要だったし。
「MK能力者のパイロットが戦場で力をふるえば、多大な戦果が見込めます。が、後癥候群を克服できなければ、エースパイロットを何日間も不稼働にする事になりますね。――――さらにそれが敵に知られれば、大きなリスクになります。逢初さん」
あの時、重い、とじた言葉だったが、今はさらに重い。本部運営と連絡が取れなくなり、ネットもつながらない。この戦艦「ラポルト」が遊撃する事態になり、大人達のヘルプが見込めない狀況。
あれから1ヶ月、船醫として、MK後癥対策を中心として特別極研修をけたけれど、ふと気になった。
あの研修は、15人の船員全ての命と健康を、わたしに負わせるため?
運営や軍部は、「こうなること」を最初から予想していた?
いや‥‥‥‥まさかね。
PCから手を離し、わたしは両手を突きあげてストレッチをする。暖斗くんは‥‥‥‥まだ眠ったまま。醫務室のバックヤードと食堂の廚房はつながっているので、そちらへいって、あまり飲まないけど、コーヒーをもらって來た。
傾けたカップの先に、暖斗くんのベッドが見える。まだ、「右手」のひらを上に向けて寢ている。ふふ、と笑いそうになったが、すぐに真顔になった。嫌な予が背に走ったからだ。
MK後癥の彼は、現在首から下がかない。だから、位変換(ねがえり)も打てない。醫務室のベッドは、自分が家に持って帰りたいくらいマットレスの圧分散がすごい。でも、ずっと同じ姿勢で寢るのはいただけない。肺栓塞栓癥(エコノミークラス癥候群)や、もしも、後癥で心機能が低下していたら褥(じょく)瘡(そう)の可能もある。わたしは立ち上がって、暖斗くんのをさすった。
一通りの施が終わって、暖斗くんのを元に戻すと、右手がやはり、上を向いていた。
本當に、手のひらを見せて上を向くんだね。必ず。
「なぁんで?」
思わず聲をあげ、ふきだした。
※「オレもマッサージしてしれくれ。依先生!!」と願ったそこのアナタ!!
ここまで、この作品を読んでいただき、本當にありがとうございます!!
ブックマーク登録、高評価が、この長い話を続けるモチベになります。
ぜひぜひ! お願い致します!!
評価 ☆☆☆☆☆ を ★★★★★ に!!
↓ ↓ このCMの下です ↓↓
Twitter いぬうと ベビアサ作者 https://twitter.com/babyassault/
Twitterでの作品解説、ネタバレ、伏線解説、ご要があれば。
【書籍化・コミカライズ】無自覚な天才少女は気付かない~あらゆる分野で努力しても家族が全く褒めてくれないので、家出して冒険者になりました~
各分野のエキスパートである両親と兄姉5人を持つリリアーヌ・アジェットは幼いころから家族から最高水準の教育を受け続け、15歳になった今ではあらゆる分野で天才と呼ばれている。 しかし家族が全員「この子はこんなに可愛い上に素晴らしい才能もあるのだから、自分くらいは心を鬼にして厳しいことを言わないとわがままに育ってしまうだろう」とそれぞれ思っていたせいで、一度も褒められた事がなかった。 ある日突然遠縁の少女、ニナが事情があって義妹となったのだが、いくら頑張っても自分を認めてくれなかった家族が全員ニナには惜しみなく褒め言葉をかける様子を見て絶望したリリアーヌは書置きを殘して姿を消した。 (ここまでが第8部分) 新天地で身分を偽り名を変えたリリアーヌだが、家族の言う「このくらいできて當然」という言葉を真に受けて成長したため信じられないくらいに自己評価が低い。「このくらいできて當然の最低レベルだと習いましたが……」と、無自覚に周りの心をボキボキに折っていく。 殘された家族は「自分を含めた家族全員が一度もリリアーヌを褒めたことがなかった」とやっと気づくのだが…… 【コミカライズ進行中】
8 170小さなヒカリの物語
高校入學式の朝、俺こと柊康介(ひいらぎこうすけ)は學校の中庭で一人の少女と出會う。少女は大剣を片手に、オウムという黒い異形のものと戦っていた。その少女の名は四ノ瀬(しのせ)ヒカリ。昔に疎遠になった、康介の幼馴染だった。話を聞くと、ヒカリは討魔師という、オウムを倒すための家系で三年もの間、討魔師育成學校に通っていたという。康介はそれを聞いて昔犯した忘れられない罪の記憶に、ヒカリを手伝うことを決める。
8 165クラス転移で仲間外れ?僕だけ◯◯◯!
主人公美月輝夜は中學生のころ、クラスメイトの美樹夏蓮をイジメから守る。だが、仕返しとして五人の男にイジメられて不登校になってしまう。15才になって、何とかトラウマを乗り越えて高校に行くことに! しかし、一週間後にクラスメイトと共に異世界に召喚されてしまう。そして起こる幾つかの困難。 美月は、どのように異世界をすごしていくのでしょう?的な感じです。 ありきたりな異世界転移ものです。 イラストを見たかったらなろうにて閲覧ください。ノベルバは挿し絵を入れれない見たいですね。 人間、貓耳っ娘、鬼っ娘、妖精が出てます。あとは狐っ娘ともしかしたら機械っ娘も出る予定。一応チーレム作品になる予定。あと、作者は若干ロリコン気味なので(逆にお姉さんキャラが得意でないだけなんですけどねw)比較的に幼そうなキャラが多めです。 更新は18時今のところ隔日更新してます。 初投稿作品です。
8 982度目の転移はクラスみんなで(凍結中)
主人公、黒崎仁は元勇者だった しかし今はいじめられっ子 そんなある日突然、教室に魔法陣が現れた そして黒崎仁はまたもや勇者になって世界を救うことになってしまった やっと移動してきました!
8 56チートスキルで異世界を生きる!
文武両道で、優しくてカッコいい。そんな主人公折原俊哉は、下校中に光に包まれて目が覚めた所は真っ白な空間。 女神のミスで死んでしまった俊哉は、女神に好かれ通常よりも多くチートを貰い異世界で無雙する。 読みにくいと思いますが、宜しくお願いします。
8 103S級冒険者パーティから追放された幸運な僕、女神と出會い最強になる 〜勇者である妹より先に魔王討伐を目指す〜
ノベルバのランキング最高10位! 『ラック』というS級幸運の能力値を持った青年ネロは突如、自分のことしか考えていない最強のS級パーティ『漆黒の翼』からの戦力外通報を告げられ、叩き出されてしまう。 そんなネロは偶然にも腹を空かした赤髪の女神(幼女)と出會う。彼女を助けたことによりお禮に能力値を底上げされる。『女神の加護』と『幸運値最強』のネロは授けられた贈り物、女神とともに最強を目指す旅へとーー!! 勇者の妹より先に「魔王」の首を狙うハイファンタジー。 ※第2章辺りから急展開です。
8 177