《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第20話 寛容とは②

「むしろ、逢初さんのは白くて綺麗だし、黒い髪もつやつやしてすごく綺麗だよね。だから、ちょっと得した気分かな」

え!? この人何言ってるの? 視界がぐるっと回る気がした。ちょっと!? え?

「いや! あ~! えええと、今のはナシ! 今のはナシで!」

暖斗くんは顔を真っ赤にして、こう言い出した。またこうとしたから、痛がりだしてしまったが。

そんな彼に、わたしは。

「‥‥暖斗くん。わたしの昔のあだ名知らないでしょう? 知ってたら、そんな事言わないよ?」

「あだ名? そんなの付けたら先生に怒られるよ?」

「先生にもわからない様に、こっそり呼ばれてたのよ」

「大丈夫だったの? いじめとかじゃない?」

「今はもう大丈夫。ある事を境にキャになることにしたの。ちゃんとキャになれたかはわからないけど、あだ名とかはもう消滅したよ」

「なんだ。それならよかった」

暖斗くんは、ふうっと息を吐いて、続けた。

「昔、かあ。そういえば、僕ら同じクラスなのに、この戦艦に乗り込むまでほとんど話とかしてないよね」

「そうね。でも男子って、いつも男子だけで固まってるし、そんな男子にどんどん話しかける子と、そういう爭いをさける子に分かれるから」

「爭い?」

「うん。‥‥やっぱり男子は、っていうか、暖斗くんは意識してないんだね。みんな必死だよ、子は。凄まじい競爭率を勝ち抜いて選んでもらわないと、余りになっちゃう。男子はどんどん結婚しちゃうからね。目指せ 第一席配偶者(ファースト)!! って」

「で、逢初さんは、競爭しない方針だと」

「うん。さいわい資格を取るのは得意みたいだから、その資格で食べていく方針で」

「なんかもったいないなあ。あ、醫者になるのは賛だよ」

「ね。暖斗くん」

わたしは、再び切り出す。こんな雑談をしてくれるのは、彼なりの優しさから、だから。

「‥‥‥‥許してくれるの? わたしの事。暖斗くんの手をマクラにしてたんだよ? 暖斗くんが寢ている隙に」

「ほっぺたに痕が付く以外に問題ある?」

「暖斗くんが病気でけない隙に、醫者の立場の人間が勝手にやったんだよ?」

「う~ん」

わたしは、暖斗くんの顔を見つめて、彼の言葉を待った。

「‥‥‥‥ぼかぼかしたんだよね」

「え?」

「ぽかぽか、暖かかったんだよ。『右手』が」

彼は微笑んだ。

「さっきも言ったけど、僕は不安だったんだよ。獨りでいたら、もっとストレスをじてたと思う。でも、君がいつも醫務室に居てくれて、一生懸命看病してくれたから、僕は戦えてるんだ。その君が僕が寢た後も僕のそばにいてくれて、右手を暖めてくれてたんだから、お禮を言うのは僕の方だよ」

うれしい。

彼の言葉を聞いたわたしの素直な心だった。

でも、わたしはそれに甘えてはいけない。

暖めてもらってたのはわたしの方なのだから。

「いっそ罵倒してくれた方が気が楽だった」って、ドラマとかでよくある臺詞だけど、本當にそうしてしかった。

あ、でもそれで、1つ思い出した。

なぜ、わたしが彼の右手に首(こうべ)を乗せたのか。

「わたしね。男の人の手にトラウマがあるの。今はっきり思い出したよ。なんでこんな事しちゃったんだろうってずっと考えてたけど、やっとわかった」

――――言葉を選びながら、恐る恐る、口にした。

「‥‥それって、話してもらえる?」

彼は、事も無げに言う。わたしは彼の言葉に、ドキリ、とした。

「えっと、それは」

それは、わたしと家、母の名譽に関わる話だった。正直ためらった。でも。

わたしは正直、この話は他人にしたくない。わたしの家は、いい狀態だとは決して言えない家だから。そんな家だと判ったら、わたしという人間が無価値な存在だという事が、暖斗くんにバレてしまうような気がしてしまう。

でも、仕方ない。これがわたしへの罰なのだろうと、れることにした。

わたしは、覚悟を決めると、深呼吸をして、口を開いた。

「うん。聞いて。わたしの『右手』のおはなし」

※本作では珍しい 過去回想回です。

ここまで、この作品を読んでいただき、本當にありがとうございます!!

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Twitter いぬうと ベビアサ作者 https://twitter.com/babyassault/

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