《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第22話 下の名前①

逢初(あいぞめ)さんは、黙って頷いていた。

何も、泣くことはないのに。

――――そして。僕に睡魔が訪れた。

僕が寢落ちしそうになる頃、彼が僕の右手にそおっと潛り込んできて、貓の様に丸まったのをうっすら憶えている。

それから僕らは、2時間ほど寢た。

*****

うっすらと人のく気配をじて目が覚めた。時計は7:30を指していた。

「やっぱり。家での立ち位置とかあるのか‥‥‥‥」

僕は、彼の話を、ベッドの上で思い出していた。

逢初(あいぞめ)さんの思い出話は、僕には自分のことのように、ほろ苦い。

中學生の僕に、彼の現狀をどうこうできる訳じゃないけど、できれば彼には、笑っていてほしい。

逢初(あいぞめ)さんの家の事。よくある話ではあるよね。重婚制度のデメリットの部分。

父親が寄り付かなくなってしまった「実質的な母子家庭」。

大人達が、「置きヨメ」、「置き妻」とか言ってるのがうっすら聞こえてくるけど、僕にもわかってしまうくらい良くないニュアンスで言う。父親の資源、お金とか、ちゃんと母子に渡されてるのか? 國の重複婚姻手當と子ども手當があれば、食べるに困る事は無いとはいえ、十分な暮らしができるとも言えない。

Advertisement

しかも、當事者の人達は、それを隠したがる。バレると一等下に見られてしまう、恥、って考えてしまうから。

あの時、お父さんの『右手』が大切な思い出だって言って、目を閉じていた逢初さん。

を見ていたら、僕の記憶と被った。

なぜか鳴沢さん家の帰りの、綺麗な夕焼けを思い出したんだ。

自然と逢初さんに

「おいで。」

って言っちゃってた。

‥‥‥‥ヤバイ。「何かイタイ事を言ってないか? 俺?」 って焦ったけど。

でも、あの後の逢初さんのリアクションもなんか変だった。手に持ったタオルで顔をおおってた。

え、待って。それタオルだよね? 雑巾寄りの。

――――渡したの僕なんだけどさ。

*****

「あ、そう言えば、暖斗くんの『右手』って‥‥‥‥」

わたしは、暖斗くんの右手の上で目を覚ました。わずかに、彼が覚醒する気配をじたから。

あの時、手に持ったタオルで火照った顔を隠しながら、わたしは思い出していた。この醫務室に彼が初めて來た時のことを。

初陣の後、初めて彼が発癥して醫務室に來た日。

暖斗くんの手は震えていた。あの日、あの1回だけだったけれど。

みんなを守る為に戦ってくれた年。

彼の手をさすりながら、自分にできる事は無いか問うたはずだ。

今、わたしはその彼の『右手』に、甘えてしまった。

本當にこれでいいのか、

チクリ。

罪悪の欠片がを刺す。

*****

僕もそろそろ起きようか、と思った瞬間に、逢初さんがバネみたいに飛び起きた。

ああそうか。何回か、彼が右手の上に乗ってるのを見た気がするけれど、こんな風に跳ね起きるから、「あれ、気のせいかな?」とか、僕が寢ぼけて見逃してたんだ。

は、小走りにバックヤードにある洗面に向かって行った。そして、「おはよう」の聲だけが聞こえてきた。

「おはよう。逢初さん」

「ごめん。やっぱり手痕がすごいよ、わ~~。わたし寢起きだからね。暖斗くんこっち來ちゃだめよ?」

「うん、わかったよ、というか、けないからね。どうせ。」

「あ、やっぱりまだけない? ミルク作るよ。待っててね」

「ああ、手が空いたらでいいよ。ここは子のだしなみを優先しなよ」

程なくして(20分ほど笑)、彼は出てきた。手にはミルクを、そしてそのほほにはテーピングをってあった。

荒れとかニキビとか言ってごまかすから、暖斗くんは『知らない』で通してね」

うんうん、――「そういう事」は全部に任せときな――って、異母姉(ねえ)さんが言ってたからね。

あ、でもこれって、「僕らだけの」、になるのかな?

いつも通りに、ミルクを飲ませてもらった。こんな事があったから、何か変化があるかと思ったけれど、彼はいつもの、とても落ち著いた表で、もの靜かだった。

ただ、僕の肩にまわされた手が熱かったな。

手痕を消すためにお湯でも使ったからかな?

――――なんて思ってたら、変化があった。

まずは、彼のセリフ。

「暖斗くんって、瞳が綺麗だよね。前から思ってたけど、やっと言えたよ」

「え? そう? そんなの言われた事ないかな」

「そう? 桃山さんや浜さんも言ってたよ。ああ、子は男子に敬語使う空気の中では言いづらかったから」

「前からって、何時から?」

「そうね。初めて暖斗くんが醫務室に來て、ミルク飲みながらわたしの顔ガン見した時かな?」

「最初じゃん。それに俺‥‥ガン見してねえし」

「うふふ。ごめんね。あの時はミルク飲むの必死だったし、他にやる事なかっただろうし、初めてのMK(マジカルカレント)後癥候群で不安だったしね」

「うん。それはまあ」

「あれからまだ何日かしか経ってないのに、わたしたち大分打ち解けたね。実は、もう1つ、今なら言える、にしてた事があるんだよ」

「ま、まだあんの?」

「うん。実はね。暖斗くんの寢顔が、赤ちゃんみたいなの。たぶん知ってるのはわたしだけ。麻妃ちゃん知ってるかな? 聞いてみようかな?」

――――なんだそれ。

「やめて。拡散止!」

「そっかあ。じゃあやめとくよ。でも、數々の親戚の子の面倒を見てきたわたしとしては、お世話したくなる寢顔なのよね~」

ミルクは飲み終わっていたけど、彼は、ニコニコしながら、僕の胃のあたりをぽんぽんとたたいてでた。そう、まるで赤ちゃんをあやす時のアレだ。反論しようとしたけど、先に眠気が來てしまった。‥‥そっか、ミルク飲んだし。

さっきからガヤガヤと、人の気配が遠くに聞こえる。防音の醫務室だけど、ここは食堂の廚房とつながっているバックヤードに近いからだと、思い出したりしな‥‥がら、お腹をでられる心地も‥‥相まって、‥‥‥‥まどろんでいく。

「どう? 眠ければ寢てもいいよ。その間にわたし、朝食行ってくるから」

僕にそう告げて、逢初さんはエプロンを外した。紺のプリーツスカートがふわりと回ってから、――彼の気配が消えた。

*****

わたしは、洗面臺でもう一度髪を整えると、相変わらずの悪い自分のを見た。ほほの白いテーピング。

まだ、ジン‥! と熱い。

しまった、と思った。

彼に許されて、『右手』に居場所をもらって、思いがけず舞い上がってしまった。るように口から言葉が出て、あんな馴れ馴れしい態度を。

彼との今後を考えて、絆を深めるのは良い。「醫療人と患者」としても。

だけど、とかそういうベクトルでは、「その先」は無い。――――わたしは誰とも結婚しないのだから。

鏡の中の青白い顔を見ながら、深呼吸をひとつする。

そろそろ、食堂へ向かおう。

※「逢初さんて自分に自信がないのな? でもそういう娘キライじゃないぜ」と思った そこのアナタ!!

ここまで、この作品を読んでいただき、本當にありがとうございます!!

ブックマーク登録、高評価が、この長い話を続けるモチベになります。

ぜひぜひ! お願い致します!!

評価 ☆☆☆☆☆ を ★★★★★ に!!

↓ ↓ このCMの下です ↓↓

Twitter いぬうと ベビアサ作者 https://twitter.com/babyassault/

Twitterでの作品解説、ネタバレ、伏線解説、ご要があれば。

    人が読んでいる<【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、女醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄光のラポルト16」と呼ばれるまで~>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください