《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第27話 作戦會議①
「終わったよ」
そう、弱々しく聲を上げたのは紅葉ヶ丘(もみじがおか)澪(みお)だった。ものすごく眠そうだ。
「解析ご苦労様。大変だってでしょう?」
と、子(こごい)莉(ひかり)が労りの言葉をかける。付屬中の3人娘、が戦艦ラポルトの艦橋(ブリッジ)にいる。
まだ早朝だ。
「まあ、今回は時間あったからじっくり出來たよ。大型Botの行予測して、こっちからカマかけた所はつぶしたから、もうほとんど、居場所は判るよ」
「助かるわ。これでパイロットの『生還率』も上がるわ」
紅葉ヶ丘はし不満そうなをしながら、子と、その傍らの渚(なぎさ)葵(ひなた)に言った。
「莉、作戦の『功率』って言ってよ。後は葵がどんな戦を立てるか、だよ」
「戦はあなたが頑張ってくれたから、シンプルに行くことにするわ。複數機のDMT(ディアメーテル)戦もあの子達初験だし」
艦橋(ブリッジ)の前部、舵席から3人に、泉(いずみ)花音(かのん)が聲をかける。
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「3人とも、プライベートでは、あの堅苦しい呼び方はなさらないのですね?」
子が苦笑しながら。
「ああ、泉さん、実はそうなんだよね。『〇〇學生』なんて、ホントは言いたくないんだけど、伝統ってのは‥‥どうもね」
泉は、育ちの良さそうなゆったりとした風で、語りかける。
「『報処理』係の澪さん、「『戦』の咲さん、『戦略』の莉さん、この艦がまがりなりにもこうやって航行できてるのは、あなた達3人のおかげね。‥‥あ、でも、『戦略』って、何をするのかしら。ごめんなさいね。気になったから訊いたけれど、莉さん、気を悪くなさらないで」
その問いに答えようとした子より早く、渚と紅葉ヶ丘が割り込んだ。
「あ~。泉さん、莉の『戦略』ってのはね、権謀數、マキャベリズムを地で行く手練手管の事よ。『爭いごと』が始まる前に勝敗を決めちゃうんだから、戦家(こっち)からしたら1ミリも面白く無いのよ」
「そうそう。せっかく人が報収集、解析しても、莉がそれ使って『終わらせちゃう』から、『オマエ! ちょっと待て!』だよ。もうデータ渡したくないんだよね」
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子はそんな2人を目に涼しいだ。
「あら、2人とも、『戦わずして人の兵を屈するは~』って習わなかったの?」
「「そうだけども!!」」
改めて子が泉を見た。
「泉さん。前回の反省を踏まえて附屬中(わたしたち)は出來うる準備はしたわ。でも、現場では常にイレギュラーが起こる。暖斗くん達がピンチになったら、また戦艦の急機、お願いね」
泉は、し微笑んだ。ブリッジの前部に、まるで自車の様なレイアウトの椅子があり、泉がそこに座っている。これがラボルトの舵席だ。
「わかったわ。それは任せて頂戴」
泉はおだやかに、しかし、しっかりとした口調で答えた。
*****
「うわ。大っきいんだね!」
正午前、僕はDMTデッキにいた。僕の目の前には、中型(ケントロン)DMT用の手用武(インスツルメント)、巨大なサーベルが懸架されていた。
フェンシング用のが、そのまま10倍の大きさになったじだ。
「また見學~?」
と、近くには、この前レールガンの説明をしてくれた網代(あじろ)さんがいる。デッキの主の七道さんは1つ奧のDMTの所にいて、多賀さんとDMTの肩の辺りにマーキングを施している。
そう、次の大型Bot討伐戦は、複數機のDMTで戦うので、各機に識別番號をれるそうな。
――なんて考えてたら、その七道さんが手を上げて走って來た。
「おっと暖斗くん! その剣に近づくのはいただけない」
「え? なんで?」
「刺突剣(サイフォス)は荷電すると弾けるんだ。もし誤作したら風圧だけで片になるぞ? ほら。ここ!」
そう言いながら彼はその巨大な剣の、刃の部分を指し示す。
「ここな。この刀、まるっと全部形狀記憶合金なんだ。それがソフトクリームみたいにうずまき狀に畳まれている。荷電されるとこのねじ曲がりが戻る形で、12mの刀が一瞬で50mの剣として長する。先端の『可変テーパードファイル』を回転させながら、ね」
「可変‥‥テーパードファイル‥‥!」
僕は刀の先端部に目をすべらせた。
確かに――巨大な針? みたいなが付いている。
あれで、敵を突くのか。
「だからよ、整備中に誤作なんかしちゃったら、人間のなんて一瞬でミンチだ」
「‥‥サリッサより長いんだね」
「ああ、暖斗くんのサリッサは初心者用だから、あれでもし短いんだ。27mだっけ」
僕は腕を組み、目を伏せた。
「そのせいかさあ、どうしても初島さんと來宮さんとの連攜が合わないんだよね」
「この手用兵裝(インスツルメント)は裝甲の隙間狙い、一撃離型だからな~」
「‥‥‥‥しかしまあ、DMTの武って、変なのばっかだね。回転ドリルの槍に、びよ~んてびる剣」
「そうだよなあ。サイフォスつってももはや別だ。サリッサもだけど。そう名付けただけだよ。‥‥でもまあ、よくぞそこに気が付いた」
「そりゃ気づくよ」
「そもそもDMTってな、獨自の関節機構を持ってる。骨との人間とは違うんだ。例えばヌンチャクをDMTが裝備するとしよう」
七道さんは両手をかして、ヌンチャクを振り回す仕草をした。
「アレを振り回すには肩と肘の関節の可域を極限まで広げなきゃならない。不可能じゃ無いけど、肩の裝甲は邪魔だろうし、肘関節の強度はすごく落ちるよ。それこそ、サリッサの一突きでアソビが出るくらい。どうする?」
「あ~、それは困る。それじゃあもう兵じゃないじゃん! しかもヌンチャクをいくら敵に當てても裝甲割れないよね? そっか。変な武ばっかだけど、DMTとの相はいいのか」
彼はにっこりと笑った。
「さすが暖斗くん。分かりがいいね。一見、変態武のようでも、理に適ってるのさ」
「‥‥変態武って」
「もちろん、もっとより良い武が発明される事もあるかもしれない。もっと変態的なヤツがね」
DMTデッキから食堂に行くと、午前の訓練を終えた初島(はつしま)羽(みう)さんと來宮(きのみや)櫻(さくら)さんがいた。
4人掛けのテーブルに向かい合って座っていたけど、初島さんが、僕を手をパタパタさせて手招いて、席を空けてくれた。
並んだ2人に対面するように僕は座った。
初島さんが聞く。
「どうです? 見てきました?」
「うん。やっぱ実はデカイね」
そこへ來宮さんも加わる。
「ヤバい大きさッス」
3人で會話を進めながら、晝食を口に運んだ。
初島さんはし茶のショートヘア。後ろ2か所で短い髪をしばっている。
となりの來宮さんは、逆に長い髪で、それをシュシュでひとつにまとめていた。
ふたりはとても仲がいい。
今日の午前から合同練習を始めたんだけど、あまりにふたりの連攜が良くて、僕は浮いてしまっていた。
刺突剣(サイフォス)なんて変態‥‥じゃないけどクセ強(つよ)な武も使うし。
それで僕だけ早めに上がらせてもらって、デッキで刺突剣の実を見てきたんだけど。
「やっぱサイフォスとサリッサの間合いが違うんだよね。あとふたりの呼吸が合いすぎて、僕がり込めない、というか」
「それはしょうがないっス。私とセンパイは一同っス」
來宮さんは語尾が変だ。あとセンパイ、というのも気になるな。
「あれ? 來宮さんも同級生だよね? なんで初島さんをセンパイって呼ぶの?」
「ああ、それは」
と初島さんが言いかけた所で來宮さんが話しだした。
「フェンシング歴では『センパイ』ってコトっス。センパイは昔がらフェンシングやってて、陸上やめてプラプラしてた私を部にってくれたんです。だから同級生だけど『センパイ』」
「そういうことか」
膝を叩いた僕に、初島さんが言う。
「でも、櫻は、2年から始めたばかりなのにどんどん強くなって。私もってよかったよ」
「いや~。まだまだセンパイには敵わないし」
「ダメダメ。私に勝つくらいでないと」
僕は心する。
「あ~。やっぱりスポーツ子っぽい會話だねえ。さすが『スポ中』」
このふたりの在籍は私立周防(すおう)中學。
通稱「スポ中」
この辺りでスポーツに打ち込もうとするなら、この學校一択! 々な部活があって、どれも好績をあげているし、この地域は昔からサッカーが盛んだから、スポ中出でプロサッカー選手にまでなった有名選手とかなら結構いる。何人か名前を言えるよ。
「あれ? でもフェンシングってふたりでやるものだっけ?」
という僕の問いに、初島さんが答えた。
「フルーレでもエペでももちろん1対1ですよ。フェンシングとDMTで戦うのは當然、全然別です。ただ、武とかで共通點があるんで、私らたぶん選ばれたんですよね? 今回私達は刺突剣(サイフォス)を使う前提で、2人ペアでの訓練をけてたんです」
「なるほどね。じゃあ僕が今日いきなり合流しても」
「そうっス。暖斗くんはDMTの縦は経験あるし、MK(マジカルカレント)はヤバ目っスけど、いきなり私らフェンシングガチ勢とじゃ、息が合わなくて當然っス」
対、大型Bot戦。対策は著実に進んでいった。
※「おお? なんかラポルト艦の青春要素増えたな?」と思ったそこのアナタ!!
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