《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第27話 作戦會議②
同刻、艦橋(ブリッジ)。作戦を練る渚の元に、岸(きし)尾(お)麻妃(まき)と桃山(ももやま)詩(うため)が來た。
「ごめんなさいね。ふたりとも。あなた達の意見がしくて」
「ぜんぜん別に~。暖斗くんの事だよね?」
「ええ。やはり、なんだけど、スポ中ペアとの連攜が間に合わなそうなのよ。大型Botが、移を始めたって」
麻妃は、渚が打ち込むPCの畫面を見ながら腕組みをする。
「暖斗くんはまあ、用なほうじゃないからなあ。コツを摑めば覚えは早いんだけど。スポ中ペアは、アレでしょう? 仕上がりすぎ、というか」
「そう。連攜のレベルが高くて。それだけでも今すぐ軍にスカウトしたいわ」
「惜しいな。アイツが居たらなあ。暖斗くんとの相ゼッタイ良いのに」
その麻妃の言葉に、渚が反応する。
「あ、前に言ってた元特別枠の子。あなたと暖斗くんの馴染みっていう」
「そうそう」
「そんなに言うんなら、見てみたかったわね。運営もせっかく々と準備してたのに、直前で落としちゃったものね。可哀想に。あ、でも、相って點では、あなたもスゴイのよ。桃山さん」
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「‥‥‥‥はい」
両手を前に組んだまま、桃山は返事をする。
「DMT(ディアメーテル)の縦はどう? 撃(スナイプ)は申し分ないんだけど、DMTの縦は、‥‥やっぱり大変よね?」
渚に訊かれ、申し訳無さそうに、はい‥‥、と返事をしてから話し出した。
「撃は大分慣れたんですけど、DMTかすのは不慣れで」
「いいのよ。出來なくて當然。まだ一週間だもの。撃をモノにしてくれただけでもスゴイわ。‥‥つくづく、この戦艦に乗ってる子は、尋常じゃない面子なのよ」
「どう? 行けそう? 渚學生」
艦長席に座る子(こごい)も心配そうだ。
だが、その表には、まだどこか余裕がある。
「ふたりの話を聞いて報の通整理ができたわ。これで行きましょう」
渚は、機のカドを手で、ポン! と叩いた。
そして子が。
「あとは、暖斗くんのメンタルだね。でも、私は心配してないよ」
その言葉に麻妃が答える。
「そだね。醫務室に行けば、また元気になるんじゃない?」
*****
同刻、醫務室。
逢初(あいぞめ)依(えい)は、午後にくる暖斗や他のパイロットの子たちのための、メディカルチェックの準備をしていた。
今日の夕方、大型Bot討伐の為の出撃が決まったからだ。
出撃直前になってしまうが、調面でのイレギュラーを無くして萬全とする為の処置だった。
依は、自分の右に手を當てる。あの日、震えていた暖斗の手を、自らの心臓に押し當てた事を思い出す。
思いで痛むに、深呼吸をひとつ。
「‥‥‥大丈夫だからね。暖斗くん」
*****
晝食後、僕は、醫務室で依のメディカルチェックをけていた。
「出撃日時が決まってるならやった方がいいって、わたしが稟議書を出したんだよ」
そう言いながら、依は聴診を、Tシャツ姿の僕のに當てた。
「こんなの今までやって無かったじゃん」
「Botは急に來たからね、今までは。でも今日はちがうでしょ? もし、出撃してからお腹が痛くなったらどうするの?」
依は、PCに結果を打ち込んでから、コトリ、と聴診を機に置くと、うつむいて黙ってしまった。
「‥‥‥‥」
「何? 依。どこか異常でもあった?」
依は、答えない。――何だろう?
しばしの沈黙の後に。
「あのね。暖斗くん」
「あ、やっとしゃべった。なになに?」
「うん‥‥‥‥。あのね。暖斗くんは、また醫務室(ここ)にちゃんと帰ってきてね」
「ん? ‥‥‥うん。そうするつもりだけれど」
ちょっと面食らった。どういう意味だろ?
「無茶しちゃダメよ。危なくなったら逃げていいんだからね?」
「なかなかそうはいかないけど。まあ、DMTを壊す訳にはいかないしね。何とか上手くやるよ」
「DMTじゃなくて、暖斗くんのよ。怪我とかしないようにね?」
何だろう。さっきから依はこんな事ばかり言う。
「なんか母親みたいだね」
怒られるつもりで言ってみたけど、様子が違った。
その言葉に依は、僕をまっすぐに見つめる。
し強い視線で。
「たぶん、あれだけミルクを毎回あげてたら、お母さんみたいな気持ちにもなるよ? でも、そうじゃなくって! 怪我したら治すのがわたしの役目なんだけれども! それとは‥‥別に。 ‥‥‥‥怪我しないで。神的な無理もしないで。必ずここに戻ってきて――そして、またわたしからミルクを飲んで」
ちょっとびっくりした。彼からは何度もそうやってミルクを飲ませてもらったから、し慣れて來たくらいだけど。
改めてハッキリ言われると、むっちゃ恥ずかしい。
目を白黒させていた僕に、依は靜かに言った。
「わたしは‥‥‥ここで、‥‥ずっと帰りを待ってるからね」
僕は考えた。今日の彼はいつもと違う。
そうか、前回の戦闘は、僕はいいとこ無しだったから。心配かけちゃってるんだ、と思った。
だったら。
「‥‥‥‥ごめんね。心配かけちゃうけど、大丈夫だから。‥‥‥僕は『弱い』んだ」
「え?」
「僕は『弱い』んだけど、それをしっかり自分でけ止めないと、『強く』はなれないんだよ」
「心構えとか神論のこと?」
「うん。依は、『醫療人』の覚悟を持って、この船に乗ってるでしょ? 僕も持つべきだったんだ。『みんなを守る』っていうパイロットの覚悟を。それが足りなかったんだよ。『守りたい』とか『頑張る』じゃあ、足りないんだ。依の言い方を借りれば、『なんちゃってパイロット』じゃあダメだよって、事だよね?」
わたしは、機上に出したを片付けていた。彼、暖斗くんのメディカルチェックが終わったからだ。出撃の時刻は決まっているから、順次、次の子を診なければ。
でも。
暖斗くんは、『覚悟』という言葉を使った。力強く。男子三日逢わざれば、なんて言葉もあるけど、彼は、敗戦を糧に、自力でアップグレードをしてしまったの?
なんだか、わたしの知っていた暖斗くんが、過去のにじてしまった。
「暖斗くん‥‥‥‥もしかして覚醒しちゃった?」
わたしは、思わず呟いた。
「子離れされる母親の気持ちって、こんなじなのかな‥‥‥‥」
※「そう。男の子ってそんなもんだよ? オトコの世界に旅立ってまうのさ‥」と思った そこのアナタ!!
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