《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第30話 大車②
「わかった。ウチが話せるだけは話すから、聞けるんだったら依に直接聞いてくれ」
麻妃は、しばらく考えた後、そう答えた。
何だろう。イヤな予。とりあえず僕は頷いた。
「今年の4月から5月にかけて、依はちょっとしたトラブルを抱えてね。そのファンクラブ発起人の3年生がそれの解決に関わって。訳あり案件な。その関係で、『逢初さんはオレと付き合ってるから』って報を拡散してくれって、周囲に言ってるんだよ。その人なりに依を助けるムーヴらしいけど。なんか2対2のダブルデートをしたとかいう話も聞いたね。そのダブルデートのもうひと組が3年の清水先輩と水口さん」
なんだそれ。意味が分からん。あ、でも。
「そのふたりは僕も知ってる。3年の有名な男カップルじゃん」
「うん。そうなんだ。その男と相野原先輩と依のダブルデートだったんだって」
僕は、その名前を聞いて固まった。
「ちょっと待った。今何て!?」
見ると、麻妃は口に手を當て、舌を出している。
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「あ、しまった。相野原先輩って、ネタバレしちまった」
相野原先輩。男子のない學校において、男子同士の人間関係は、割と重要で濃い。
僕も面倒見てもらったことがある。
文武両道で、人があり、長181cmでイケメンの相野原先輩。それが依のファンクラブの発起人で――――運営者だって?
しかも!!
「生徒會長じゃないかぁぁぁ!!」
思わす絶する僕に、麻妃が冷靜にツッコんだ。
「早くゴハン食べなよ。暖斗くん」
ようやく朝食を食べ終えた。でも正直味がしなかった。
依にトラブル?
相野原先輩?
ダブルデート?
報が多すぎる!
ま、それも含めて後は本人に訊けって事か‥‥‥。麻妃に食を片付けてもらい、車椅子でトイレに運んでもらった。
麻妃は真顔で、
「手伝おうか」
と言っていたが丁重にお斷わりした。醫務室に戻ると、依と桃山さんが居た。
「おはよう。麻妃ちゃん。暖斗くん」
「おはようございます」
依は明るく、桃山さんは丁寧にあいさつをしてくれた。僕は、さっきの話が気になってしまう。だめだ。桃山さんもいるし、今じゃない。一旦忘れよう。
「暖斗くん。今から桃山さんの検診するから、こっち來ちゃだめよ?」
と、言うと依は、4mほど奧側の場所を診察スペースにして、シャ~っとカーテンを引いた。僕は依に言う。
「じゃ、僕は食堂にでも行ってた方が」
「大丈夫ですよ。暖斗くんけないし。私気にしませんから」
代わりに桃山さんの聲がした。
「あ、なんか、みなと一中(いっちゅう)トリオに、私が混ざったじですね」
桃山さんはちょっと楽しそうだった。カーテン越しにトークが始まった。
「中學じゃ、3人仲良しだったりするんですか?」
「い~や。ウチと依は友達で、ウチと暖斗くんは馴染みで。で、依と暖斗くんはクラスメイトなんだけど、薄な暖斗くんは、依の事知らなかったってさ」
「ああそれは。わたしがクラスで目立たないから。男子と基本絡まないし」
「麻妃。言い方。今はもう逢初さんもちゃんと友達だよ。々お世話になってるし」
「あっはは。暖斗くん、ムキになんなって」
「やっぱり。‥‥‥なんだかんだで、もう3人とも仲良しじゃないですか。いいなあ。そういう會話。雰囲気。塞ヶ瀬中(ウチ)も男子のクラスメイトしいなあ」
そういう桃山さんは、本當に羨ましそうな聲だった。そこへ麻妃が。
「究極、ウチの學區に引っ越しちゃえばいいじゃん。塞ヶ瀬の男子みたいに」
そう。実は、塞ヶ瀬學區にもちゃんと男子が住んでいる。でも、塞ヶ瀬中が子ばっかになった時に、住民票だけ変えたり、人に住所を借りたりして、無理やり転校したんだよね。
それもあって、塞ヶ瀬中は男子生徒ゼロ。「子校」狀態になってしまった。
桃山さんは、ゆっくりと言う。
「ダメなんです。うち、母親が弱くて。今住んでるトコがかかりつけの病院とかにも近くて。家も通い婚(コミュート)方式だから、お父さんの許可なく住所替えとかできないし」
と、靜かに言ってたけど、すぐ、明るい口調になった。
「そう、通い婚(コミュート)方式と言えば、暖斗くん家は中央集中(セントラル)方式なんですよね。和風ですか? 洋風ですか?」
「いやあ、ぜんぜん大した家では‥‥‥」
「洋風だよ。離れは和風もある」
「わあ、すごい」
「ちょっと麻妃。勝手に答えんなよ」
「暖斗くんパパの嫁の4家族全員住んでるからね。母屋で毎日全員で食事さ。ちょっとした宴會みたいな雰囲気」
「‥‥うらやましいなあ。賑やかで楽しそう」
「わたしもお屋敷の前を通った事があるくらい。そう。あそこ奧はそうなってるんだね」
と、言う桃山さんと依の聲が聞こえた。
「ちなみにお風呂は、男用と用でふたつある。犬とメイドさんがひとり。トイレは多數。離れも多數。それが母屋と屋でつながってて‥‥」
僕は麻妃の太ももをグーで軽く小突いた。
「麻妃。もういいって」
「いいなあ。私もそんなお屋敷に住んでみたいなあ。あ、みんな。私アピってる訳じゃないからね。そこの點誤解なく。‥‥‥‥でも。暖斗くん。幸せな結婚と神的に満たされた生活は、の子のせめてもの夢なんだよ。それだけはわかってね」
その言葉に、依がピタ、と作を止めたのがわかった。
カーテンの向こうで、どんな表かは判らなかったけれど。
桃山さんは、ハッキリとした口調でこんな事を言っていた。
「そう‥‥‥シャツは‥‥‥下‥‥‥そう‥‥‥ごめんね‥‥‥‥」
小聲でしゃべる依の聲が、カーテンの向こうから微かに聞こえる。それから、明らかに服をぐようなれの音も。
これ、僕はここに居ていいのかな。運んでくれれば食堂に行ってもいいけれど、なんて考えてたら、麻妃は僕に視線を向けてニヤニヤする。
「ウチ、まだここに居た方がいいか。暖斗くんが変な気起こさないように。アリバイ作りだね」
「‥‥‥‥仮に起こしたとしても、やらないよ。かないし」
カーテンの向こうから、うっふふ、と子の笑う聲が聞こえた。たぶん桃山さんだ。
「でも暖斗くん。ウチの介助のおかげで、大分けるようになってんじゃない? 午後には退院できるくらい。これなら音立てずにカーテンをそっと覗き見るくらい出來るよ?」
「麻妃。できないしやらないって。俺を一どうしたいんよ」
なんて會話をふたりでしてたら、依がカーテンから出てきた。し険しい表だ。
「暖斗くんの退院の判斷は、わたしがします。あと、今桃山さんは本當に服著てないんだからね。外でふざけないで!」
は? そんな事言われたら‥‥‥‥。はっ! 麻妃がコッチ見てニヤニヤしてやがる。
僕はとっさに顔を背けた。
「逢初さ~ん。男子にそれ知られちゃうと、私も辛~い」
カーテン越しに桃山さんが、わざとゆっくり目にこう言った。
そりゃそうだ。
これは依が悪い。
「ごめ~ん。桃山さん」
依が慌てて戻っていった。
たぶん今桃山さんに平謝りしてる。
そう、依は尋常じゃ無いほど頭がいい。それは判ったけど、やっぱり、こういうとこ天然なんだよね。
※「いや、カーテン越しの桃山さんなんて想像しね~し」という そこのアナタ!!
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