《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第32話 理(ことわり)①

麥茶を飲み終えた後も、僕達は無言だった。

僕は、天井を見上げる。依(えい)がトラブルにあった事。相野原先輩がそれを解決した事。ふたりがデートした事。付き合ってるっていうのは本當にウワサだけだった事。

でも、本當に何も無いのかな、ウワサだよって言って本當の本當は付き合ってるとか?

そんな疑念が次から次へと湧いてくる。思わず橫目で依をチラ見していた。

電車の男はどういうつもりだったのか? 依をどんな目で見てたのかな? 相野原先輩と依は、デートの後2人で夜景を見に行ったりとかしてないのかな?。

想像したらキリが無い。同じ言い方をしていいのか分からないけれど、だぶん2人とも依の事が好きなんだろ。僕にはまだ、よく判らないだ。

いや、待てよ。「好き」って、そもそもなのか? もっと特別なじゃないの? なんだかよく分からなくなってきた。

自分の両親は、やっぱとかしたんだろうか。親の若い頃の畫とか見たことあるけど、あんまりリアルに想像したくないや。他の人も、したから結婚したんだよね。依の家の様に、上手くいかなくなっちゃう事もあるんだろうな。

僕も、大人になれば自然とわかるのだろうか?

時計は22時15分。遅い時間になっちゃった。依は、ベッドに腰掛けたまま、両足をブラブラさせている。

依。もうこんな時間だよ。中學生がこんな事してたら、先生に怒られるよ」

わざと真面目な口調で言うと、彼は笑った。

「先生いないんですけど? でも遅いのには同意です。だから、わたしは部屋に戻るけれども」

そこで依は言葉を切った。両太ももを閉じてもじもじして。

「‥‥‥戻る、けれども。‥‥‥暖斗(はると)くん、あなたがさっきわたしに何て言ったか、もう一度教えてほしい」

「さっき? はて」

「わたしが電車のトラブルにあって、相野原先輩が介した、って説明した後に」

「う~ん。何か言った? あれ?」

そうだった。依はスーパー記憶力だった。この部屋での會話を文字起こししろ、といってもスラスラやってしまいそうだ。

「わたし、1年前にキャラ変して、周りから『変わった』って言ってもらえるようになったんだけど、何か損した気分なの。見た目を気にして、良くなるように願ったり、努力したらダメなのかな? って言った後に。ほら、暖斗くん」

「え~と、何て言ったかな。依は正確に憶えてるんだね」

僕が頭をかくと、彼はちょっと口を尖らせた。

「もう。忘れちゃったってことは、そういうこと? 気持ちがった言葉じゃないのね」

依の首がガクン、と落ちる。

「わたしが自分のの無事を伝えたら、『良かった』って言ってくれたじゃん? もう、ほら、『事が収まって良かった。あと、悪いのはその男で――』って」

「あ、言った。悪いのはその男で、依が―――」

依を見ると、上半をこちらに向けて上目づかいだった。こぼれ落ちんばかりの黒瞳が僕をとらえている。

依が、か、可い‥‥‥のが悪い訳じゃ無い‥‥‥と」

「暖斗くんは、わたしのこと、そういう風に思ってくれてるの?」

「あ、や、何ていうかその、流れというか、言葉のアヤというか」

「じゃ、違うんだ」

「いや! 違わないけど、そうじゃなくて」

僕は顔の前で無意味に振り回した両腕に気がついて、ゆっくり下ろした。そして。

「――そんなに、可いって言われたいの?」

と、たずねてみた。

「うん。言われたいよ」

ノータイムで即答。この返事はちょっと驚いた。本心?

「言われたいよ。だって、そのくらい言ってもらわないと損なことばかりだもん。電車でのこと。先輩とのウワサ。平気じゃないよ? 今でも思い出したら、イヤな気分になるし、ウワサが既事実になるのもイヤだし。平気じゃないんだからね!?」

は、僕の隣で、もう一度両手で顔をふさいだ。

空飛ぶ戦艦の、とある中學生パイロットの、夜更けの自室。

そして、「その時」は唐突に來た。

※「『その時』って、何? まさか?」と思った そこのアナタ!!

ここまで、この作品を読んでいただき、本當にありがとうございます!!

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