《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第35話 えいちゃん先生①

わたしは、醫務室や食堂と同じ1F、會議室に連れられた。ると、殺風景な室に、白い機と灰の椅子。

それに向かいあって座る子さんと村のの子、がいた。日焼けした、くりくりとした大きな瞳、やせてはいるが健康的な印象だ。

さんが質問をする。

大分疲れた様子だった。

「で、村の様子を聞いてるんだけど、話してくれないかなあ」

その子は目を輝かせて答える。

頭と腕の包帯が痛々しいが、いたって元気だ。

「うん。村ね。村の人はお腹を空かせるからね。わたしが川菜を取ってくると喜ぶんだよ?ミズウナって言ってね。知ってる? お姉さん。川に行けばあるよ。でもどの辺りにあるかは緒だよ。ミズウナが生えてると野生の貂が‥‥‥‥」

「ああ、うん、貂ね。あのね。村では何か変わった事無い? こんな戦艦が來たりしたら、どう思うかな?」

「どう? それは村長さんが決めるよ。村長さんはね。あたしが生まれた時、トイレに行ってたんだって。それでお母さんが、『村長さん、アピが生まれましたよ』って言ったら、はい、今出ます。って答えたんだって。あ、でもその時はまだあたしに名前が付いてなかったかな。それでね‥‥‥‥」

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渚さんがわたしに振り向いて、小聲で。

「ね。こんなじで一向に報が取れないのよ。ハシリューの文化なのかしら。逢初さんって、小児科でしょ? 悪いんだけど、何とかならない? この艦に保育士とか養護教諭の資格者いないのかしら」

「わたしは‥‥持ってませんね」

さんがその聲を聞いて、話しかけてくる。

「例の『元』特別枠の子が持ってたけど、運営がその子落としちゃったしね。だからこの艦には現在いないのよね」

「じゃあ、やるだけやってみます」

わたしは、子さんの隣に座った。

「アピちゃん。お怪我はどう? 元気みたいね」

「あ!! えいちゃん先生だ~!!」

アピちゃんはを乗り出してきた。まあ、手當をしてあげたのだから、わたしの顔は覚えていてくれてるようだ。

そう、この子はずっとわたしを「えいちゃん先生」と呼んでいる。

「‥‥‥‥先生もアピちゃんのミズウナ食べたいな~」

「天ぷらにするとおいしいんだよ」

「アピちゃんて力持ち? 村の人全員にミズウナあげるとすると、何回川に行くのかな」

「えっとね。1回で10人分だから、えっと‥‥‥ね。7回は行くよ。でもそんなに行ったら疲れちゃうよ~」

「危なくない?」

「危ないよ。貂もいるけど、人は襲わないから。Botが來た時はびっくりした~」

さんと渚さんが顔を見合わせた。何故Botに追われてたのか?

「Bot怖いよね。もしかしてミズウナ採りでBotに?」

「うん。あたしが採ってたらね、遠くからズゴゴ~って音がして、早めに逃げたんだけど、なんか、朝になるとまたズゴゴ~って音がして」

「すごいよね。そうやって2日も逃げてたなんて。ゴハンは食べれたの?」

「うん。エアバイクに腐らないゴハンがついてるから。あとミズウナ食べたけど苦かった。ミズウナはねぇ。やっぱり生じゃ――――」

「ふふ。そう。苦かったの。でもそんなにおうちに帰らなかったらお母さん心配しない?」

「心配、‥‥してると思う」

「だって村にはの人しかいないんでしょ? アピちゃんを探しに村を出るにしても、Botがいるんじゃけないかも」

「そんな事ないよ。Botは滅多に出ないし。あと、村には今男のお客さんがふたりいて、いつもお酒飲んでるよ」

「!!」

あ、これは。わたしは子さんと渚さんと頷き合った。

「まあ、男の人、珍しいわね。どんな人?」

「あのね。DMT(デアメーテル)乗ってるって。すっごい大きいヤツ。あ、あたしを助けてくれたDMTは小っちゃかったなあ。でも男の人乗ってるんでしょ? あたし、結婚してって、言っといたから」

「そう。‥‥暖斗(はると)くんと結婚して‥‥‥‥え? 結婚!?」

んんん? また話が迷走しだした。

でも大丈夫。

この子には、イエス、ノーで答える質問、「クローズドクエスチョン」をすれば、反的に答えようとするから。「ほら理論」に書いてあった通り。

わたしは気を取りなおして、質問を続けた。

「その、村にいるお客さん、アピちゃんの事知ってるの? お酒飲んだら、酔っぱらう?」

「ふ~。助かったわ。さすが未來の小児科醫」

渚さんにそう言ってもらえた。

「いや、助かったよ。どうも私達は軍隊式のやり取りに慣れていて、ああいう會話をされるとね。あ~疲れた」

さんも苦笑いだった。

「でも、ある程度の報が取れたね。村の規模、様子、ふたりの客、DMT。あの子がBotに襲われたのは、捕獲の可能が高い。ガチ殺傷モードのBotなら、2日も逃げおおせられないからね」

そこでわたしは気がついた。

「あれ、そう言えば紅葉ヶ丘さんは」

渚さんが忌々しそうにいった。

「あの子はね。3分で逃げたわよ。久しぶりに電脳戦闘室(エンケパロス)から出てきたと思えば」

*****

「は~い。暖斗くんリンゴむいたからね。ちなみがむいたリンゴよぉ」

「食料、仲谷さんに無斷。勝手にもって來るなし」

「そうよねー。いちこ。折越さんお仕事は? いいの?」

今現在、醫務室で橫になってる僕は、ナゼか子3人に「接待」されている。

依が渚さんと退室してからしばらくしてこの3人、折越さん、浜さんと桃山さんのコンビが醫務室を訪れた。

なんでも會話アプリ(アノ・テリア)で、「醫務室の僕がひとりきりになるから誰か手の空いてる人お願い」と依から依頼メールがあったそうだ。

でも。

「折越さんはあの村の子の監視が仕事でしょ? ここに居ていいの?」

「だって渚さんが尋問終わるまでは大丈夫、って言ったもん。ちなみ悪くないもん」

「い、行った方がいいよ」

「え~? 暖斗くんはちなみがここに居たほうがいいよね?」

「ちょっと、暖斗くんは関係ないでしょ?」

「ほんとになんでこんな人が、け、憲兵なのか」

「そうよう。ちなみがこの艦の治安を守るミリタリーポリスなのよう」

「治安は守っても風紀はしまくってるよ。ま、また七道さんに詰められれば?」

「いやよう。七道さんはコワイのよう」

なんだこれ。最初僕への接待合戦だったけど、小競り合いが始まったぞ。

なんか異母姉(あねき)のケンカみたいだ。

「だってぇ暖斗くん家、中央集中(セントラル)方式なんでしょ。洋風の」

「ちょっとこの子信じらんない。誰に聞いたのよ」

「岸尾さんだもん。ちなみ悪くないもん」

「そっちか。うぬぬ。で、でも本現わした」

「ね~。暖斗くん。ちなみのお願い聞いて。暖斗くん家に遊びに行ってもいい?」

「うわ。折越さん。いきなりそれは無いんじゃない」

「ず、ずうずうしいし」

3人は僕の前でこんな掛け合いをしてた。う~ん。このままずっと見てられる気もするけれど、そろそろ。リンゴ食べ終わったし。

「あのさ」

「なによう。‥‥じゃなくて暖斗くんだったのね。や~だ~。ちなみにご用事?」

「前から考えてたんだけど、この旅が終わったら、みんなで集まらないかな、ウチに」

「「ええ?」」

「たぶん帰港したら公式に打ち上げみたいのやるでしょ? でもそれは式典禮裝だし。うちの南東の離れが空いてるんだよね。そこなら騒いでも大丈夫だから、さ」

「「おお、それは」」

3人とも聲をあげた。

「暖斗くん」

「‥‥‥でも子を15人家に連れてったら親と家族になんて冷やかされるか。そこだけ問題なんだよなあ。あ、先に麻妃使って‥‥ねじこんどけばいいか」

「あっ‥‥。暖斗くんと岸尾さんて、やっぱりそういう関係なんだ‥‥‥‥」

僕のセリフに反応してそう呟いた桃山さん。‥‥一何に気がついたんだろ?

※「打ち上げたのしそうだなあ」と思った そこのアナタ!!

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