《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第35話 えいちゃん先生②
ガヤガヤと會話が続く醫務室。
「やっほ~いベイビー! お、こんなに人いんの? じゃ、ウチ要らなくね?」
ドアが開いて、麻妃がってきた。
「依がヘルプ! って言うから來てみれば。人足りてんじゃん」
そうか。依のメールで來てくれたんだ。
「ちょうどよかった。麻妃(マッキ)。今みんなでこの旅の打ち上げ會の話してたんだよ。ウチでやろうと思うんだけど、また親に上手い事言っていてよ」
「‥‥‥‥いいけど。あんま気が乗らないなあ」
「なんでだよ」
「‥‥いいかい暖斗くん。いくらウチが『都合のいい馴染み』だからって、そんな何でもかんでもに使ったらいかんよね。それは自分で言いなよ。もしか暖斗くんの將來のヨメがこの15人の中にいるかもしれないんだから」
その言葉に浜さんの肩がビクッと揺れた。――けど、僕からはよく見えなかった。
「‥‥言いづらいんだよ。俺が子を連れてくるって言えば、親とか異母姉(あねき)達が冷やかすに決まってんじゃん。麻妃なら昔から家に出りしてるんだから、回ししてよ」
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「確かに、ぬっくん家の戸棚にまだウチの湯飲みとお茶碗あると思うけど」
その言葉に殘り3人がざわついた。
「さ、さすが馴染み。お屋敷にそこまで食い込んでるとは」
「麻妃ね。自分ちの夕食のオカズが気にらないとね、しれっとうちに食べに來てたんだよ。うちは大人數だから、麻妃の分取り分けても誰も気がつかない。普通に『あら~。麻妃ちゃんこんばんは』『いただきます。おばちゃん』って言って」
「き、岸尾さん。なかなかやるし」
「それは6歳くらいまでの話でしょうが」
と、そこへ、依(えい)がってきた。
「ああ、ありがとう。こんなに集まってくれて。誰かひとりで良かったのに」
と言う依の後ろから、ぞろぞろ人がってきた。
「へえ。醫務室ってこうなってるのね。わたくし。初めてみたわ」
「センパイ。なんか混んでますよ」
「だったら練兵場いこっか。もしくは風呂」
泉さん、來宮さん、初島さん、だった。
依が、誰かヘルプ、と言ったので「じゃあ私が」と人が集まって來てしまったと。
そうだ。運(C)負荷心(P)電図検(X)査もまだだった。それクリアしてやっと退院だ。
しかし、さっきまで靜かだった醫務室が急に賑やかになった。あ、華やかって言ってもいいかな? ‥‥依の呼びかけでこれだけ子が集まってくれた、という事に、ちょっとテンションが上がってしまった。
「暖斗くん‥‥何にやけてんの。キモイぞ」と麻妃にジト目でツッコまれた。
――こりゃ「梅園家での打ち上げ」、なんとか実現しないとな。
僕は麻妃のツッコミを無視して、もう一回頼む。
岸尾「なんかメンバー16人しかいないこの戦艦で醫務室にこんだけ集まるって、レアじゃね?」
暖斗「麻妃。さっきの話。なんとか頼むよ」
岸尾「だからね。未來のヨメを初めて家に呼ぶイベントかもしれないのに、そんな他人任せでいいのか、というハナシだよ」
初島「なになに? 何の話?」
桃山「この旅の打ち上げを暖斗くんちでやってくれる相談です」
來宮「お~。マジっスか。それは熱い」
泉 「で、なんでそんなお話にお嫁さんが関係するのかしら」
折越「それはぁ」
初島「ヨメって言えば、『おめかけさん』って言葉知ってる?」
折越「なにそれ」
來宮「知らないっス」
逢初「第二席妻(セカンド)の、古い言い方よね。ビフォーアサジタ時代の」
桃山「へええ。じゃあ第三席は?」
逢初「當時は一夫一妻制だから、第二席(セカンド)ですら『浮気、不倫』のくくりなの。だから呼び名は無いよ」
泉 「さすが依さん。博學ね」
暖斗「あの~」
浜 「めんどくさ。そ、そんなんでイチイチ『浮気』だとか気にしたら、子はやってけないし」
逢初「それは現代と當時は価値観とかが違うから‥‥」
桃山「でもさ、でもさ。結婚するなら第何席がいい?」
岸尾「ウチは気にしないなあ」
泉 「それはやっぱり第一席(ファースト)でしょ。『正妻枠』。旦那様を100%獨占出來るのよ。まさに月。第二席(つぎのこ)が來たら旦那様を半分取られちゃうのよ」
逢初「わたしも、第一席(ファースト)かな。結婚するなら、だけど」
暖斗「あの~。僕の質問が‥‥」
折越「ちなみはぁ、逆。第四席(ラスト)は、『ロマン枠』だもん。ヨメが4人居たからって、ダンナのが4等分なワケないじゃん。ちなみは、王子様の最後ののお相手、ロマン枠にな妻でってぇ、オイシイとこ全部持ってくわよ!」
岸尾「うへえ。えげつな。‥‥でも現実そうだったりするしなぁ」
桃山「私はやっぱり、第一席(ファースト)に憧れるかなあ。大してその勢いで♡」
浜 「好きな人と結婚できるなら、何番目でもいい」
來宮「じゃ、自分は空いてる第三席(サード)で。『影薄い枠』」
折越「椅子取りゲームじゃないし。ウケる」
暖斗「‥‥‥‥」
岸尾「それなら、第二席(セカンド)だって悪くないよ。『人枠』。第一席(ファースト)は、家柄とか家格とかうるさいけど、第二席(セカンド)が実はガチの相手だ、ってよくあるじゃん? ここがイチバン味しくね?」
浜 「な、なんかそんなドラマあったような?」
桃山「――あ、ホラ、第一席(ファースト)をお嬢に取られるんだけど、彼の本當のの相手は――ってヤツ!」
初島「親が見てた! 薄幸ヒロインがり上がる――」
來宮「『オレの第二席(セカンド)になってくれ!~悪役令嬢の罠で第一席(ファースト)を追われた私ですが、彼の真のをゲットしたので第二席(セカンド)でもOKです。いまさら第一席(ファースト)に戻ってくれと言われてももう遅い~』っスね」
初島「アンタ、よくそんな長いタイトル憶えてたわね‥‥」
來宮「余裕っス」
泉 「じゃあみなさん。さっき依さんが言ったみたいに、ビフォーアサジタ、サジタが蔓延する前の、一夫一妻制だったらどう? 今とどっちがいいかしら?」
折越「そりゃあ、花音(かのん)ちゃん。今の方がいいでしょ? 好きな男子ができたとしてぇ、その人のオンリーワンにならないと結婚できないなんて。無理ゲーよ無理ゲー! ちなみゼッタイ無理!」
初島「そうよね。私も自信ないなあ」
來宮「センパイならきっと大丈夫っス。でもやっぱ4枠無いとキツイ。あった方が」
初島「ありがと。さくら」
逢初「ビフォーアサジタの時代だと、男比は正常よ。男同比率世界(イーブン・ワールド)。前提條件を揃えないと、議論できないよ?」
一同「「イーブン・ワールド!!!」」
暖斗「‥‥‥‥」
桃山「わあ。イーブン・ワールドかあ。素敵♡」
折越「イケメンがひとり、イケメンがふたり‥‥‥‥」
逢初「イーブン・ワールドだったら、重婚しろ、なんて國も言わないと思うけれども」
浜 「想像できないし」
泉 「やっぱり、ビフォーアサジタの一夫一妻制が、本當はいいのかしら?」
岸尾「親がもう重婚世代だから、ウチは気にしないなあ」
浜 「でもイケメンが何人いても、き、競爭率が低くても、本當に好きな人と結婚できないと意味ないから、やっぱ4枠あったほうがいいし」
泉 「意外と一華さんて一途で堅実なのね」
仲谷「みなさん。お茶がりましたよ」
桃山「あ~。仲谷さんナイス。でも何で?」
仲谷「醫務室と廚房はつながってます。なんだか楽しそうな聲が聞こえたもので」
桃山「ごめ~ん。こっちで盛り上がっちゃって。聲かければ良かったね。ありがとね」
仲谷「いえ」
岸尾「‥‥‥‥で、ウチら何でここで駄(だ)弁(べ)ってんだっけ?」
逢初「さあ、なんでだっけ? でも何か楽しいからいいわ。‥‥‥‥あれ、暖斗くん。ベッドで寢ちゃってる。おなか出してると風邪ひきまちゅよ~」
逢初「‥‥‥‥」
岸尾「どした。依」
逢初「麻妃ちゃんは知ってるかな。わたしも驚いたんだけどね。暖斗くんの寢顔って、すごく赤ちゃんぽいの。なんというか、ほら。見て」
全員「どれどれ」
※暖斗くんの寢顔がついにバレました。だからって別にどうって事は無いのですが(笑)
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