《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第36話 耳村(じょじそん)①
翌日。朝。
「ごめんね。暖斗(はると)くん」
依(えい)が、顔の前で両手を合わせて僕に謝る。
それに麻妃(マッキ)も口を添えた。
「いやー。話が盛り上がっちゃってさあ」
昨日退院できるハズが、子達が大量に來てなんかワチャワチャしだしてるに、僕は寢落ちしてしまった。
依も、退院のことをすっかり失念してたみたいだ。
超頭いいんだけど、かなり天然。
まあ、あまり腹は立たなかったけど。
「自室でくつろぐのを一回損したけど、まあいいよ。なんかさあ、自室より醫務室(ここ)にいる時間の方が多くね?」
「ごめんなさい‥‥」
依が本當に申し訳なさそうなので、悪い気がしてきた。依は長キャラ、責任強いから気にしちゃうんだよね。
「いいよ。寢るだけならどこでも一緒だし。でもさ、なんか子がいっぱい來て、重婚がどうとか何番目がいいとか言ってたけど‥‥。僕が聞いてもいいハナシだったの?」
麻妃が、それは、と膝を叩いて口を開く。
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「そこはね。暖斗くんにわざと聞こえるように言ってんだよ。察しろよ。男子」
あ、全然反省してないな。コイツは。
しかし、途中まで彼達の話を聞いて思ったのは。
「意外だったよ。重婚の方が良い、って子があんなに多かったのは。僕はひいおじいちゃんから昔の話を聞いてるから」
依が答える。
「そうね。イマドキ子の意見よ。50年前は大変だったはずよ」
「そうなんか?」
と、麻妃が驚いた。
僕が言う。
「うん。サジタで男子が生まれにくいってわかって「みんなどうする?」って時に國が『奧さん2人目娶ってください』って法律変えたんだよね。急事態だから、と。バタバタする中、1年置きに『3人目』、『4人目もOK』って言いはじめて。でもそれまでこの國では長いこと『一夫一妻制』だったから、抵抗が大きかったみたいだよ」
依も付け加える。
「うん、わたしの曾祖父もそう。『オレはそんなことできん』って、熱く語ったんだって。それは當時は徳だったんだけど、ひいおばあちゃんひとりでは男子に恵まれなくて。もう単純に確率の問題なのよ。結局曽祖父の男系はそこで途切れて、『逢初(あいぞめ)』の名字は子が引き継ぐことになって」
「難しいよね。一夫一妻制で行こうとした人も、男子が生まれない狀況を見て、やむなく鞍替えしたみたい。僕のひいおじいちゃんは、上手く重婚に馴染んだから男子を殘せた、みたいなこといってた」
「へえ~。あ、そのひいおじいちゃんて、山(やま)當目(とうめ)のご隠居?」
「そうだよ」
「やっぱそうか」
「わたしの曽祖父は逆ね。馴染めずに我が道を行った。どちらが正しいとかは言えないわ。
でも、せっかく佳字名字を賜った人なのに殘念」
「な~る。ウチはあんまりそういうジジババが周りにいないからな。初耳だよ」
「子化対策省が、ひたすら重婚アゲのPRして半世紀。もしかしてわたしたち、重婚に1ミリも違和を持たない最初の世代かもだよ」
そんな話をしながら、無事退院検査はクリアした。
僕は、依に訊く。
「で、今日は?」
「わたしは、今からアピちゃんの診察&移送許可出し。出したら、午後にはアピちゃんを村へ送る部隊を編するって。たぶん暖斗くんと麻妃ちゃんは必須でると思う」
「へいへ~い。ってもウチは艦の縦席でドローンるだけなんだけど」
麻妃がそう言う橫で、依はし考え込んでいた。
「‥‥‥‥どうしよう。わたしも行こうかな。アピちゃんの怪我の狀況と予後の事を保護者さんに伝えなきゃなのと、‥‥‥‥う~ん。なんだか騒ぎがするのよね」
*****
「あ、アピちゃんが手振ってる」
僕はDMT(デアメーテル)のモニター越しに足もとのエアクルーザーを見た。窓にうつる人影が、しきりにこちらに手を振っている。
この前僕の中型DMTを「小っちゃい」と言っていたけれど、村に帰れるし、ハイテンションのようだ。僕は耳元のインカムに手を添える。
「ねえ麻妃。聞こえる?」
「聞こえるよ。でもウチとの通信はそろそろ途切れるかもだから、承知しといてね」
僕らは今、ラポルトから離れて、アピの住むハシリュー村へと向かっている。
母艦と距離が離れると會話アプリ(アノ・テリア)が使えなくなる。
艦とその周辺くらいなら、中央AIがホストになってローカルエリアネットワークを形してるから、そのエリアなら普通にスマホが使える覚だけど、ここから先はそうはいかない。
麻妃のKRM(ケラモス)は中継ドローンをいくつか挾んで、何とか遠隔で縦する形にしている。
「麻妃、練習もかねて青いパネル使うよ」
僕は縦桿の外側にあるパネルに手を乗せた。
パネルは青くると、一発で認証した。
「プロテシスパネルな。いい加減名前憶えなよ」
僕はその‥‥プロテシスパネルで思考をDMTとつなぎ、クルーザーに手を振るきをDMTにさせた。
「でも接敵中にはやっぱり、青パネルって言っちゃいそうだよ」
「いやいや。そもそも接敵中に使うモンじゃないから。スマホの指紋認証みたいなモンだよ? 敵の眼前で認証ミスって、一発キツイの喰らいました、って、命がけのギャグだから」
「ああ、この前設定変更でミスってたもんね。アレは失敗だった」
「そうだよ。DMTでの子に手を振る用、くらいにしといてよ。そのパネルの活用は」
「そだね」
僕がもう一度クルーザーの窓を見た時には、アピちゃんの姿は窓から消えていた。
僕らの部隊は、ハシリュー村の手前500mまで來た。紅葉ヶ丘さんが調べておいた窪地があるので、一旦僕のDMTはそこに隠れる。
クルーザーはそのまま村の口まで行き、艦長代理で隊長の渚さん、ボディーガード役の折越さん、アピちゃんが降りた。ちなみにみんないつもの制服姿だ。
アピの主治醫として志願した依もクルーザーに乗ってる。
こんなじで慎重に進めていく。村の人がどんな反応するか分からないからね。極力DMTも戦艦も見せない算段だ。
「うあ。4日? 5日ぶり? 村だあ。ねえ。何でらないの?」
「ごめんね。アピちゃん。わたしたち村の人にごあいさつしなきゃだから、いきなりるのはお行儀が悪いの。もうちょっと待ってね」
クルーザーから遅れて降りて來た依が、そう言ってなだめた。僕と麻妃は遠で映像を見ながら、インカムでその様子を聞いている。通信は良好のようだ。
「ああもう。あたしが帰って來たのに」
アピちゃんと思われる小さな人影が素早くいて、クルーザーでけん引してきたエアバイクに飛び乗った。と同時に、インカムからエンジンの空ぶかしの音が響いてきた。
「みんな來てよおー。あたしだよおー」
ガンジス島の森林地帯は荒野も多く、夏ながら乾燥もしている。彼のバイクの音はハシリュー村の高い空に響き渡ったようだ。
村の奧からちらほらと人が出てきた。
※村の人の対応や如何に!?
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