《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第36話 耳村(じょじそん)②

耳村(じょじそん)――、耳(のみ)、の村――との言葉通り、全員だった。

渚さんがしばらく口でやり取りをしていたが、奧に案されるようだ。

村は、周囲を2~3mくらいの高さの壁で囲っており、火山巖や礫巖を積んだのようだ。その壁が途切れる15m程の空間が、村の口だ。

村の奧行はかなりあるようで、口からは見通せない。壁は、奧手に見える山まで続いているようだった。

村人の先頭にいたに、アピちゃんが駆け寄る。

「おばちゃん」

「アピ。無事だったんだね。早くイカセにも知らせなきゃ」

傍らのが、こちらに會釈をしてアピの手を取って、奧へ連れて行った。「おばちゃん」と言われたが前へ進み出る。40代半ばくらいだろうか。アピと同じような意匠の服にを包み、日に焼けたをしている。

「アピを助けてくれた方々ですね。失禮致しました。あまりにお若い方々、お嬢さんばかりでしたので、返って警戒してしまいまして」

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は深々と頭を下げた。

「この村の村長の、ガレエと申します。宜しければ、心ばかりですが、お禮をさせて下さい。絋國の方々」

*****

それから渚、折越、依の3人は、村長の家と思われる村一番の大きな木の家に招かれ、大広間で食事を振舞われた。

「なんか、自然食のレストランみたいねー」

折越の想は的を得ている。村の周囲のかな自然から採れた産の、素樸な料理だった。

村はある程度機械化はされており、食事も、みなと市で流通してるとそんなには変わらない。

「あの、村の外にDMTを置いてあるようですが、良いのですか?」

村長が渚に尋ねたが、即座に依が反応した。

「いえ。いいんです。大丈夫です」

渚は困った表依に耳打ちする。

「いいの? 待たせっぱなしだと暖斗くんに悪いよ? 危険は無いみたいだから、呼ぶわよ。‥‥それにパイロットが搭乗したままのDMTが殘ってると、村の人に誤ったメッセージを伝えちゃうから」

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「ええ~。でも」

依は珍しく反駁しようとして、頬をふくらませた。そこで折越が。

「じゃ、ちなみが暖斗くん呼んでくる~。DMTは村の人が指定した場所に移するかも」

「助かるわ」

「‥‥‥‥」

依は不満顔のままだ。そこへ、アピが飛び込む様にってきた。ハシリュー村の民族裝だが、しドレスみたいな意匠のに著替えて來ていた。

「あのね。あたしを助けてくれたパイロットはねえ! 14歳の男の子なんだよ」

ざわっ

大広間の空気が変わった。特に、料理を運んでいた13~20歳くらいの達は、明らかに目を輝かしている。お互い顔を見合わせて、一斉にめき立つ。依は、手にした食を置いてため息をひとつ。

「ほら、こうなっちゃた。この環境は暖斗くんにとって甘い毒。わたしが守らなくちゃ」

*****

ズゴゴゴ‥‥‥‥ゴォォォォン‥‥!

やや遠目で、DMTの駆音が響いてきた。そしてしばらく経つと、折越と暖斗が大広間に現れた。

「すっごい暖斗くん。ちなみをDMTの手に乗せてホバリングしたんだよ。ウデを上げたねえ」

「いやあ、青パネルの作にだんだん慣れてきてね」

「じゃ、こっちよぉ。暖斗くん」

折越に連れられ、暖斗が口から奧の主賓席まで、大広間を橫斷する。

途中、「お年頃」の村の子達の前を通り過ぎたが、そこだけ明らかに空気と暖斗に向ける視線の熱量が違った。

いつの間にやったのだろうか? 服を著替えて髪を整えた者がほとんどだ。

「ほら。やっぱり」

依が口を尖らせる。そして渚は。

子校の文化祭にイケメンが來た時のリアクションね~」

と苦笑した。

「あの方がパイロット。ずい分お若い。やはり皆さんは、絋國軍の方、という事ですか?」

村長が、渚に話しかけてくる。渚は、この部隊(チーム)の隊長、そして艦長の名代(みょうだい)だ。

「いえ。そういう部分もあるのですが、私達は非正規の臨時年兵でして‥‥‥‥」

そう答える渚の脳裏に、子(こごい)との打ち合わせが蘇る。

○今回アピを追いかけたBotは、明らかに戦闘、エリア警備よりも、人間探索のプログラムだった。それについて村から報を引きだす。

○村に滯在する「軍人」が、どういう屬か未知數な事。報収集と安全の確認。

○こちらの報、艦メンバーの年齢、能力、保有戦力は可能な限り匿する事。

○その上で、村での資材調達を渉し、約する事。

渚は思考する。

「この村も今現在ネットはつながらない筈。私達の『験乗艦』のニュースを知らなければ、まさか中學生16人で戦艦をかしてるなんて思う訳が無い。私達の背後に當然正規軍人が居ると思わせといた方がいい」

し口角をあげ、ほほえみを作ってから村長に返事をする。

「アピさんを襲っていたBotは我々が排除致しました。ついでにこの一帯を掃空したいと思うのですが。Botはよく出るのですか?」

「いえ。今まではほとんど出た事はありませんでした。絋國の軍人様がこの村にいらした頃から、ちょっと増えたじです」

「‥‥! その軍人は、ふたりと聞いているのですが、どうしてこの村に?」

「なんでも、國境周辺の監視、だそうです。ですが、もう半月も滯在されて、いえ、わたくし達はいいのですが」

「そうですか。その方々には私達もごあいさつ致します。お手數ですが後ほどお取次ぎをお願い致します」

渚がそう言った所で歓聲が上がった。

「きゃああああ!」

渚がを上げると、暖斗が例の若い村の達に囲まれていた。そのにアピもちゃっかり加わっている。達は、暖斗の背中を手でれてから歓聲を上げて逃げる、を7~8人で繰り返している。本當に男が珍しい様だ。暖斗はその狂騒の中心でひたすら照れていた。渚は、依の不満げな橫顔を見ながら。

「オトコが珍しいんだね。あ~、あんなに騒いで。アピちゃんといい、この村の娘はハキハキしてて尚且つ純樸、なのかしら?」

依は答えない。じっと暖斗と子のを見つめている。

「でもよく考えたら私も暖斗くんのボディをった事ないわ。逢初さんは無い、よね?」

依はそれについてはキッパリ答えた。

「手、二の腕、首と肩ならあります。あくまで醫療行為として。わたしはあんな風にきゃあきゃあ騒ぎませんけど」

「あら、あなた達進展してるのね。意外。でもそろそろ場が落ち著いてくれないと、仕事がしにくいわ」

その言葉を聞いて依が立ちあがる。

「じゃあわたし、引っぺがしてきます」

「がんばって~」

渚は逢初の後ろ姿を、クスリと笑いながら見送った。そして、折越の不在に気付く。

「呆れた。もう。あの子ったら」

渚の視線の先には、暖斗を囲んで騒ぐ村の子の集団があったが、よく見るとその中に折越もっていた。

「‥‥アンタ、何しに來てんのよ」

渚の聲は依に聞こえていた。くすっ、と笑みがこぼれる。

本當にばかりの村、耳村だ。

依はまだ知らなかった。そのばかりの村に、男が潛んでいることを。

そして、明日、その男と出逢って、あんな事になってしまうことを。

この時の依はまだ、知る由もなかった。

※「なんか先行きがあやしいなあ。大丈夫か?」と思った そこのアナタ!!

ここまで、この作品を読んでいただき、本當にありがとうございます!!

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