《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第37話 英雄①

依(えい)は、村の子達をかき分け、渦の中心へ向かうと、ニコニコの暖斗(はると)を見つけた。

「その様子じゃ、『例の現象』は大丈夫みたいね?」

「ああ、うん。外部バッテリーで十分來れたよ。MK(マジカルカレント)後癥――」

「し~っ!」

依が口の前で指を立て、暖斗をたしなめた。DMT(デアメーテル)を駆ったらけなくなる――そんな報はにするに決まっている。

「あ。そっか」

「村長さんへのごあいさつがまだでしょ? しっかりして。暖斗くん」

そう言って村のを引きはがした。

今回、暖斗はDMT(ディアメーテル)を外部に増設した全個電池(バタリエス)で駆させていた。大盾(アスピダ)の側に配置され、左手のひらの通電ポイントから電力供給されている。重力子エンジンを起していないから、MK癥候群も発癥しない。

やっと暖斗は依の橫に座る。が、まだニヤけている。依は橫目で暖斗を見つめたが、暖斗は気がつかない。

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「‥‥‥‥いつもなら、名前で呼んでくれるのに」

*****

「ごめんなさいね。若いむすめ達が。この村はごらんの通りばかりで。男が來るとはしゃいでしまって」

村長と暖斗が挨拶をわす。

「男が居ないのに、どうしているのか気になるでしょう? 通い婚なのよ。この村は」

「通い婚!」

暖斗が驚きの聲を上げた。村長が靜かに語る。

「ええ。あなた達とは習俗が違うから驚くかしら? よその村や絋國の町からおムコさんを貰って何ヶ月か居てもらうの。その間に合コンみたいなをやったりして、カップルができるのね」

「合コン!」

こんどは折越だ。暖斗が質問する。

「え? でも、今男の人が居ないってことは、今までカップル立しなかったんですか?」

「いいえ。たくさんしたわよ。ウチの村には明るくて闊達な子が多いから」

「なるほど~」

そう言って腕を組む暖斗に、再び依が視線を送るが。

「でも、おムコさんは時期をみて元の村や町に戻るの。最初からそういう約束だから。でも永住者は大歓迎よ。暖斗さんはいかがかしら?」

「ええっ!! ぼ、僕ですか?」

「申し訳ございません。暖斗くんは軍のパイロットですので」

依が割ってった。村長は和やかに微笑む。

「あら、ハッキリ斷られちゃった。暖斗さんは依さんのボーイフレンドなのかしら」

「いえ、違います。絋國も男子が足りないんです」

そんなセリフは想定だ、と言わんばかりに依が答えると、暖斗が、依の袖を引っ張る。

「どしたの? 依。ちょっとハッキリ言い過ぎだよ」

「それならこういうのはどうかしら? 依さん。アピを手當してくれたのはあなたでしょう? この村は無醫村で、何かあったら町まで走らなければいけないの。あなたがいてくれたら心強いわ。暖斗くんと一緒に、この村に住んではどう?」

さすがにこれには依も面食らった。

耳まで赤くなりながら、必死に反論する。

「い、いえ。わたしなんてまだ。醫者の卵以下ですから。え、永住なんて。‥‥え? えええ?」

「やるわね。この村長さん。そして私が助け船をだすか」

ふたりの後ろで渚がニヤリとし、村長に質問する。

「村長様。合コンでカップルは出來たんですよね? それで、そのカップルには子供はできたんですよね。男の子とか。でも村にはひとりもいないようですが」

「ああ、それはね。寂しいけれど、今は男親の方に母親と住んでるのよ。これからの村長は、町の事も知らなければならないし。暖斗くんくらいの子もいるのよ。もうすぐ帰省してくる。あの子達が戻って來てくれたら、村は存続できるわ」

「なるほど、男系通い婚で外のれつつ、十分な數の男を確保していければいいんですね」

渚は頷いた。

*****

「渚さん。暖斗くんが見えないけれど」

依が大広間を見まわしている。

「ああ、村娘ちゃん達にせがまれて、DMTを見せに行ったわ」

「え!? いいんですか。そんな事ばっかり」

「逢初さんも見にいけばいいじゃない。実はあんまり見てないでしょう? DMTを駆る暖斗くんの雄姿」

「わたしはミルクを飲む暖斗くんで十分です。‥‥‥‥それに、アピちゃんの容態の報告と、手當の申し送りをしないといけないので」

「暖斗くん。あんなにモテモテとは、私も予想外だったわ。この村に永住するとか言い出したりして」

「え!? ええ!! そんな。‥‥いえ。それは個人の自由ですから」

依ちゃんかわいい」

渚は依を、ぎゅうっとハグした。

「なな、何ですか! わたしはもうアピちゃん家に行かなくては」

依は渚の拘束をほどくと、村の口方面へ小走りに去っていく。

「渚さんが連れ戻してくださいよぉ~~」

遠くから依の聲が聞こえた。

*****

「‥‥‥‥なので、骨折などの所見は無いのですが、アピちゃんの手は、時間がかかると思います。定期的に機能の確認をしたほうが良いです。手首をかした時に、違和じたりしたら‥‥‥‥」

「ありがとうございます」

定期的に機能の確認をした方が良い

「Botから救っていただき、手當までしていただいて。謝してもしきれません。このような恰好のままで、お許しくださいね」

アピの母親はベッドに臥したまま、そう言った。聞けば、もともと病気がちだった所で、娘が何日も帰って來なくなり、臥せってしまったそうだ。アピも母親のために、川菜を採りに行っていたのだとか。

お互いを思いやる母と娘。

依は目を細めた。

「いえ。わたしで良ければ、お母様の合も診てさしあげたいのですが」

「それは是非」

まわりの達が依に駆け寄る。

「お醫者様を呼ぶにも、隣村まで行かなきゃなんです。そうだ。あなた、ここに住んだらどうです。いえいえ。悪いようにはしません」

「え? また? わたし、さっきも言いましたが‥‥‥‥」

「そうだ。あのパイロットさんとおふたりならどうです? それなら‥‥」

「待って。それはさっき言って‥‥‥‥もう。どうしよう」

*****

日が落ち始めていた。

村長の家の前に集まる4人。暖斗と依は、ぐったりしている。

折越が、ふたりに聲をかける。

「僕はなんか、んなお姉さんに話しかけられて、年下のの子にもむっちゃ質問されて、脳がスポンジみたいになって‥‥‥‥はああ、疲れた」

「わたしも‥‥‥‥、人生に関わる重要は選択を、何度も何度も何度も迫られて。‥‥‥‥はあ、疲れました」

「まあ、ふたりがへろへろになってる間に、ラポルトと連絡とっておいたよ。今夜はここに泊まっていいってさ。あ、暖斗くんはどうするかまだ保留ね」

渚がそう言ったが、ふたりは上の空だ。

「ちょっと。今から例の軍人さんに挨拶するんだから、しっかりしてよね? あれ、折越さんは逆に、やけにがいいわね」

言われた折越は、長い髪をかき上げた。

「うふん。そのは、明日になったら教えてあげるわよう」

村人に案され、4人は夕闇に暮れていく村を歩いていく。

村に滯在する、という、ふたりの軍人に會うために。

※「そう言えばこの小説、登場人ないな。特に男」と思った そこのアナタ!!

ここまで、この作品を読んでいただき、本當にありがとうございます!!

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