《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第38話 天風呂Ⅰ①
ふたりの軍人にあった帰り道、僕は滝知山さんの言葉を思い出していた。
「オイ、待て小僧」
僕は滝知山さんに呼び止められていた。滝知山さん達の食事が終わり、村の人が片付けをしようとしている時だった。
依(えい)達3人も、それを手伝っていた。日金さんは、用足しに出ていっている。
「で、お前か、DMT(デアメーテル)乗ってんのは。ホントにと小僧ひとりでやってんのか?」
「はい」
「DMTは何持ってきてんだ」
「モニタ製の中型(ケントロン)です」
「中型だあ!? 中型って、あ~~」
滝知山さんは大仰に仰け反った。
「それじゃあ頭數にらねえな。楽できるかと思ったのによ。ま、中學生をアテにしちゃあいかんか。オイ、小僧。大型DMT見たらすぐ逃げるんだぞ。敵も相手にはしねえとは思うがな。敵うワケがねえからな」
「はい、一応大型Botとは遭遇したんで、わかるつもりです」
「そおいうのが良くねえんだよ。大型Botと大型DMTを一緒にすんな。大型DMTが1機あれば、大型Botなんて何機でも狩れるんだかんな」
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「すみません」
滝知山さんは、がっはっは! と豪快に笑って、でっかいジョッキにった酒をあおった。
そして。
「人を殺す時は、躊躇すんなよ。今のに、後ろの共とでも子作りしとけや」
この臺詞を言った。
僕は慌てて後ろを振り返る。依達に聞こえていないかと思ったからだ。
さいわい依達は片付けの真っ最中で、大丈夫なようだった。
「絋國男子たるもの。軍人となり國防に努める事。で、戦死しちまう前に子種をくれてやる事。上手くいけば男が生まれてくるかもだからな。がっはっはっは!!」
滝知山さんは、そう言ってまた笑った。依達に聞こえなくて良かったよ。
艦に戻ってから気まずくなったらイヤだからね。
*****
それから、僕はDMTに乗って帰艦した。
渚さんが、滝知山さん達がラポルトに向かうので、僕が日金さんの言う通り先行して、子さんに來訪を伝えてくれって。それで滝知山さん達とポイントで落ち合う役も頼まれた。
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國の通信網が回復してくれないと、こういう時本當に不便だ。
渚さんは、資材調達でまだ村長さんと渉しなきゃいけなかったし、依は、アピちゃんがまだ心配だから、と、村に泊まる決斷をした。折越さんは、そのふたりの警護だ。
子達は村長さんの家に泊めてもらうそうだ。來客用の空き家は、あの軍人ふたりが占領してしまっていたからね。
依と渚さんがお風呂にりた~い! と言っているのを、折越さんが笑って見てた。明日になればいい事あるよ、みたいな事を言いながら。
「暖斗(はると)くん、またね。MK(マジカルカレント)癥候群はないと思うけど、醫務室で一応データ取ってね」
依はそう言ってにっこりと微笑んでいた。
依の屈託の無い笑顔――、これがこの別れの後、しばらく見れなくなってしまうとは、この時は思いもしなかった。
*****
翌日、わたし達は村長さんの家で目が覚めた。
昨日の夜にクルーザーから著替えを持って來てたから、それに著替えようとすると。
「依ちゃあん。待って。著替えるのは後にしよ」
折越さんに止められた。そのまま最低限の支度をして、村のヘルシーな朝食をいただいた。
すると。
「じゃあ、著替え持って行こ」
折越さんが、わたしと渚さん、ふたりの手を持って引っぱる。
どこへ――? と聞こうとしたら、その行き先を村の人がこっそり教えてくれた。
*****
「けっこう山道だね」
「だからぁ、夜はれないんだって。危ないから」
「そういえば、艦のPCにもこの報はあったのに、すっかり忘れてたわ」
子3人で村の最奧部、切り立った小高い山の、割と傾斜のついた山道を、登る。
村の「お年頃組」のの子たちが案してくれて。彼たちとは年が近いから、友達になれそうなじかな。
山道は、左巻きに緩やかにカーブしていって、村の反対側に出る。坂はキツイけれど、道はわりと平坦だった。
村のも毎日行くんだから、踏みならされてるよね。
「わあああ!」
わたしは、歓聲を上げていた。
木々が生い茂る山道を登りきると、急に視界が開けた。
目の前には、滝と、それをけ止める大きな湯舟。
天然の天風呂だ。
そして眼下の絶景。
村の裏山は、荒野を上から見渡す天然溫泉だった。
湯舟は、階段狀に4つある。滝のお湯が順番に流れ込むしくみになっていて、湯舟は朝日を反して、水面がキラキラ輝いていた。
手前に平らな場所がしあって、そこが荷置き場と場になっている。見れば、他のの人が何人かもう來ていたんだよね。
折越さんが、得意げに解説する。
「この村のの人は、お風呂は朝るんだって。夜は危ないし、それが習慣だからあ」
わたしは、いくつもできた湯舟に興味がわいた。
「これは、鍾石みたいなものかな? それとも湯ノ花? 上から流れて來る溫泉が、長い年月で作ったのかな? 大自然の造形だね」
「これはすごいわね。シャワーの水をケチってるラポルトのみんなと、いつか是非に來たいわね」
渚さんも上機嫌だった。
ここへ案してくれた子たちが、スルスルと服をいで、を洗ったり湯舟にったりしだした。わたしは、その様子にちょっと違和をじた。
「ちょ、ちょっと待って。この天風呂、前立てとか目隠しが無いよ。こんなに遠くまで見渡せる絶景がある、って事は、向こうの山々からもこっちが丸見え、ってことだよ? いいの?」
「依ちゃん。それがいいんじゃないの。暖斗くんも帰ったし、滝知山さん達はもう艦に向かったし、今ここにいるのは子だけよお」
そう言うと、彼は著をばあっ、藤編みのカゴに投げれて、文字通りの素っになった。渚さんも同様だ。
「うう‥‥」
わたしは心後ずさりする。
だって。
折越さんは、艦の憲兵をやるだけあって、何か格闘技を修めているって聞いたよ。そのとおり、ムキムキ、ではないけれど、ものすごく引き締まったウエストをしている。なのに、暖斗くんをわすくらいに、適切な部位に適切なおが乗っている。なんかズルイ。
あれ? 渚さんもそうだ。折越さんほどのボリュームはないけれど、引き締まったおんなじ系統のボディだ。
製造デッキの3Dプリンターの三次元スキャナーではないけれど、わたしの視認するところでは、折越さんがHカップ、渚さんがDカップ。
しまった。あの15人の子の中でスタイルがいいツートップと同行してしまった。
しかも天風呂イベントとは。
「どうしたのお。依ちゃん。タオルなんか巻いて」
「そうよ? 耳村(じょじそん)ならでは。気にする事無いのに」
ふたりはのまま洗い場へ歩き出した。前も隠さずに。
わたしはここで、男子諸君に強く訴求したい。
一部の子は、男子の目が無いと、ものすごく開けっぴろげだということを。
「わたしはいいです。なにか、遠くの山々から見られてるみたいな気がするので」
そう言って、厳重にタオルを巻いて浴した。村の人のOKもいただいた。
思春期の子で、恥ずかしがってそうする子もいるから。源泉かけ流しで、滝ができるほどの湯量なのでまったく気にしないよ、と。
「なんか、TVの撮影みたいねえ」
と、折越さんは笑ったけれど、わたしのぷよぷよボディは封印よ。
湯舟に浸かって、あらためて風景を見た。荒野と所々の木々、登る朝日と地平線。心地いい湯気と肺に染み渡る清涼な空気。みなと市では見れない絶景だよ。
あ、でも確かに、これだけ野趣あふれると、暗くなってからの帰り道が心配ね。ちょっとこわいかも。
景も見れるし、この村の人たちが朝風呂の習慣になったのも、確かに納得だわ。
「滝知山陸曹長の下のお名前って、確か『英雄(ひでお)』よね」
「はあ~。名前の通り戦爭で活躍して、『英雄(えいゆう)』になったんだあ。じゃ、『英雄(えいゆう)さん』で、いいんじゃなあい?」
「でもうっかり本人の前でそう呼んじゃったら、すごい怒りそう」
お風呂にりながら、なぜかわたしたち3人は、滝知山さんの呼び方を検討していた。まるでカンファレンスみたいに。まあ、「たきちやまさん」、って、ちょっと呼びにくいからなんだけど。
で、結局、滝知山さんは「えいゆうさん」、日金さんは「付き人さん」、と命名が決まったよ。なんかちょっと日金さんはとばっちりだね。
そのまま、お風呂から出て、3人で元の山道を降りていく。
行きで道案をしてくれた子たちは、もうとっくに上がっていたから、ちょうど同時に出た村のの人についていった。まあ、迷うような道ではないのだけれど。
わたしの前を歩くふたりは、Tシャツ姿。わたしは‥‥‥。
「逢初さん。ちょっとそのカッコ」
「へへ~。わたし、お風呂上がりはこのカッコじゃないとダメなんです。真冬でも」
「依ちゃんセクシー。でもサービスショットはほどほどによお」
折越さんにそう言われたら、「おまゆう?」と返したいところだけど、確かにそう。わたしは、下は制服のプリーツスカート、上半は水に白いフリルのキャミソール1枚なのだ。
昔から、お風呂上がりは必ずこう! 下著とかを著けるのがイヤ。
‥‥でも、ふたりが言いたいことは自分でもわかってる。
このキャミは防力が低い。とんでもなく。
「しもむら」で買ったキャミを著古しているから、もうくたくたなんだよね。験乗艦をするにあたり、お気にりでなおかつ著古してないものをチョイスしたつもりだけど、それでもこれだから。
たぶん、橫からか、上から覗きこまれるとアウト! 見えてしまうと思う。
「ったく。天風呂であれだけ貞淑なそぶりだったのに、意外だわ。くれぐれも英雄(えいゆう)さん達とそのカッコで鉢合わせしちゃだめよ?」
「は~い」
わたしは、著替えや制服をれたトートバッグをふりまわしながら、そう返事をした。
山道を軽い足取りで下りていくから、前を行くふたりには敵わないわたしのも、くたくたキャミソールの側で、それなりに踴った。
見えそうなキャミソール、軽率な行。運命。
このあと、わたしの行すべてが裏目にでる。そして、その先には。
まない邂逅と、辱めがわたしを待っていた。
※「なんか雲行きあやしいな」と思った そこのアナタ!!
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