《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第39話 邂逅Ⅰ①
一瞬、つないでいた折越さんの手を離しただけだった。砂塵で視界が無くなる中で、しよろけただけだった。
なのに、その場所にはもう折越さんの手は無かった。
それを探して、2歩、3歩と歩いたら、もう方向覚もなくなっていた。火事で煙が充満すると自分の家でも道に迷う、という知識だけはあったけれど、本當にそうなんだと今初めて思い知った。
そして、その代償は――、見知らぬ男との、まない邂逅だった。
わたしは、焦りと恐怖で直した。も、思考も。
「聞こえなかったのか? 両手を、ゆっくりそこの機へ」
若い男の、低い聲だった。わたしは理を振り絞って、言われたとおりにする。
「そう、その両手を機から離したら反撃の意図と見做す。こちらから攻撃するからな」
思わず聲のする方へ振り返ってしまった。
男の姿を確認したい、という當たり前の生存本能だけれど、姿を見たからには消す、という相手の行もありうるから、慎重にすべきだった。
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「ふうん。白の人だな。俺らの國にはないからな」
男はわたしと目をあわせてそう言った。
面長に整った目鼻、栗の髪はの加減で金に反する。短髪、耳のピアス。彫刻を思わせるような均整のとれた軀に、鍛え上げられた筋をカーキのタンクトップが包んでいる。
下は迷彩柄のパンツに、黒に近い焦げ茶の重そうな軍靴。
間違いなく軍人、絋國兵ではない。
敵外國兵だ。
わたしは視線を自分の両手に戻した。目があってしまったのだから、もう見なかったことにはならないが、一応そうした。
機に置いた両手が汗ばんでいる。
し前かがみで、彼に向っておしりをつき出したような恰好になった。その時に、くたくたキャミの左の肩ひもがずり落ちたが、放置するしかなかった。
彼の言うとおり、テーブルから手を離したら、何をされるか? ――想像するだに怖い。
彼が、不意にわたしに近づいてきた。ゴツン! と軍靴が床を叩く。彼の手がびてきた。甲にいくつもの管の浮き出た、鍛え抜かれた手。
でも、わたしの肩にれたのは、冷たくていだった。
何か銀の棒の先で、わたしのキャミの肩ひもを引っかけると、そのまま肩にかけてくれた。
「あ、‥‥ありがとう」
思わずお禮を言ってしまった。
「サイズが合って無いんじゃないのか?」
「あ、はい。‥‥い、いえ」
聲は低く、拒みがたい威厳があるけれど、若い聲だ。まだ、20歳前後くらいかもしれない。
し心臓が落ち著いてきた。と、同時に、頭も回り始める。
渚さんと折越さんの現在は?
ふたりがかりで、この軍人に勝てるだろうか? とにかくわたしは、時間をかせいで隙をうかがうしかなさそうだ。
わたしは、集中する。
こんなに集中するのは、「わチャ験」以來だ。
「君に幾つか質問がある。一つ目、この家に住む、10歳のの子だ。何処にいる?」
そう言って彼は青い目でわたしの顔を覗き込んだ。ああ、顔は見られても平気なんだ。
そして、今「10歳」と言い切った。ラポルトでもアピちゃんの年齢を正確に知ってるのは診察をしたわたしくらい。
つまり、この軍人は、アピちゃんの事をキチンと調べている、ということは。
「知らないわ。わたしも彼を探してこの家に來た」
「‥‥‥‥」
彼がわたしの顔をじっと見る。わたしも目を逸らさない。
「本當に知らないんだな。やけに堂々と答えるのが逆に違和だが」
たぶん最適解だ。これは噓を言ったりはぐらかしたりしたら、追及されてたと思う。
「じゃ、質問二つ目、君らの戦艦は一何なんだ」
「え?」
しまった。を出して反応してしまった。
「こちらの靜止衛星群(コンステレーション)から上手く隠れたと思えば、わざわざ位置を知らせる様なノイズを出す。小Botを次々倒したかと思えば、大型Botにはフリーズする。しかもその対処がオーバートリートメントだ」
わたしには彼の話す容が軍事的で、よく解らない。でも、彼の言葉。ずっと見られていた?
わたしたちの旅を?
冷たい汗がしたたり落ちる。
「君があの戦艦から來たのは分かってるんだ。DMT(デアメーテル)もね。でも変だ。どう見ても民間人の學生とかだし、軍隊格闘技を修めた気配も無い」
彼はまた、銀の金屬棒をわたしの背中に這わせた。背中がぞくそくっとして。
「いやっ‥‥やめて‥‥‥‥ください」
わたしは思わず背中をのけぞらせる。
「一緒に風呂に來た娘は、ふたりとも武をやってる。あの筋の付き方はね。でもどうだ? 君の服の下は、らしい皮下脂肪だけだね」
「な!?」
思わず彼の顔を見た。
「のぞいたんですか!? 変態!!」
彼は悪びれない。
「いやいや。仕事で止む無くだよ。あそこで定點観測すると、村人の向が分かるんだ。みんなちゃんと朝、風呂にりに來るからね。もっとも、俺の探し人が居なくなったと思ったら、4人も新顔を連れてきて驚いたよ」
4人‥‥暖斗(はると)くんもってる。DMTが、とも言っていた。やはり、下手な噓はつけない。
でも。
彼は、軽く笑っていた。
逆にわたしは、浴をのぞかれた恥と怒りで、耳まで赤くなった。
悪い意味で、「誰かに見られてるかも」というの勘が當たっていた。
「新顔3人の、君だけ、を厳重にタオルで隠したんだ。のぞきがバレたのかと思ったよ。でもそうでもなさそうで。で、どんな隠し事があるのかと思えば、まさかの素人だ。なんだそれ」
わたしは、恥心を押えて必死に思索する。
あの軍人が笑っているに。
わたしがこの人から無事逃げ出すのが100點だけど、このまま々と聞き出されるのはまずい。
ラポルトが中學生16名でかしていること。
暖斗くんがMK(マジカルカレント)後癥候群で、DMT戦闘後けなくなること。
このふたつは敵に知られると一気にラポルトを危険に曬すことになる。
それは軍事の素人のわたしでも容易にわかるよ。
最悪、わたしが今から「どんな目」にあっても、ラポルトと暖斗くんの報だけは守らなくては。
そう、最悪「どんな目」にあっても。
「じゃ、質問三つ目」
彼はそう言いながら、初めてわたしの真正面に立った。
背が高い。長は190cmくらいあるだろうか。
逆三角形の上半と厚い板が、タンクトップの下ではち切れんばかりだ。
わたしも、會話を重ねることで、この場に慣れてきた、かも。
彼の容姿や表に気が向くようになってきた。
だけど。彼の次の言葉は。
「君は、俺の敵か」
鋭い、猛禽類の視線だった。死をじた。
※ここから依さん難です。はたして!?
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