《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第40話 裏切り②

「そ、その法律って! ‥‥‥‥あの!」

わたしはを乗り出す。

「やっぱり知ってるか。簡単な名前だよね。『スパイ防止法』。ただ、容が簡単じゃない。絋國のお姫様にとってはね」

慄然とするわたしの前で、彼はその説明を始めた。

「その水口聖子さんとやらのせいで、敵外國兵と接したは、徹底的に國家からの嫌疑をける。疑いを晴らすのは至難だ。やって無い事を証明しなきゃならない。――いわゆる『悪魔の証明』ってやつだ。道半ばで心が折れて、ウチに亡命してくる子も多數。確か、就職とかも制限されるんだっけ?」

わたしは、その言葉に、ビクリと肩を揺らした。

そう、ダメだ。そんなスパイかもしれないは、エッセンシャルワーカー、社會の基盤となる職業には就けない。

當然、醫者も、だ。

「ホント、気を使ったんだ。俺はまだ君のに一切れていない。君のに俺のDNAが付著して、それが國に調べられたら、君は『敵外國兵との濃厚接疑い』となり、『監視対象者』になるからね。だが、まだ間に合う。まだ引き返せる。俺が銃越しにしか君をいじらないのはそういうワケさ。‥‥で、こっから俺の言い分なんだけど」

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彼は、スカートの裾を引っかけた銃の先を、立ちすくむわたしの太ももの間で得意げに揺らせていた。安全裝置がちゃんと掛かってるらしいし、銃口はわたしのには向いてはいない。

だから、命の危険はぎりぎりじなかったけれど、わたしのプリーツスカートは、銃のきに合わせて全く抗うことなく揺れた。

「それでさ、この家の子の居場所か、あの謎の戦艦のことなんだけど、君の知ってる事全部話してくれないかな。そうしたら、俺とお姫様がここで會ってた痕跡を、全部消すんだけど」

彼は、申し訳なさそうな笑顔でそう言った。

わたしは、ことの重大さを噛みしめるにつれ、恥ずかしいくらいに混した。

醫者になれないどころか、スパイのレッテルをられて生きていく。

膝がガクガク震え出して、やがて太ももにも伝わっていく。

彼の銃口が、なんども太ももの側をなぞったけれど、かまう余裕は消えていた。

彼とこの部屋ですごして、どれくらい時間が経ったんだろう。すごく長くじる。

この部屋で逢ってから、彼は。

銃をチラつかせてわたしの背中をででお風呂のぞきを白狀して俺の敵かと威嚇して。

譲歩のそぶりを見せて服をぐかわたしの全を調べさせろと二択を迫り。

一旦世間話で安心させてから優しくしてプロポーズして。

お悩み聞いてくれて相談に乗るフリをしてわたしの心を丸にしてから。

スカートをめくり間に銃を遊ばせて。

絋國の法律を逆手に取ってわたしの口を割らせようとしている。

ああ。も心もぐちゃぐちゃにされた気分だ。

「弄ばれる」って、こんな気持ちなのかな。

だけど、これがこの狀況の必然だったのかも。敵兵に囚われたのだから、殺されるか、教唆されるか、無理やり連れて行かれるか。その3択だとだいたい聞いていたから。

恥辱にまみれて、彼の顔を見た。こんな事をされても、暖斗くんのは絶対に守る。

そう改めて意気込んで、睨んだつもりだったのだけれど。

彼は、こちらを見て驚いた表だった。ぽかんと口を開けていた。

――何よ。さんざん人をオモチャみたいに弄んでおいて。すべて計算通りなんでしょ。

‥‥‥‥‥‥そう、思ったんだけれど。

「‥‥‥‥こっちか。君の心はここにあったのか」

彼が、ゼノス君が、そう呟いた。

わたしは何のことだかわからない。

ただ、じわっと視界が歪んだ。

歪んだように見えたのは、瞳から溢れた何かのせいだっだ。それは――。

わたしは、わたしの目から流れる大量の涙に、この時やっと気付いた。あれ、泣いている? わたし。――――なんで?

「うわあああああん」

聲を上げて泣いていた。

一瞬戸う表層意識のわたしに、深層意識のもうひとりのわたしが、ゆっくりと答えを告げる。

涙の訳は、弄ばれたからじゃあない。ずっと考えないようにしていた、あの事実。

わたしの中の抑圧されていたが、火山のマグマのように一気に噴き出した。

「いや。いやよ! あの家にあのまま居続けるなんて絶対嫌。耐えられない。なんで。なんでなの。あの家から出るためにずっとがんばってきたのに。一生懸命やったせいで、敵に捕まるなんて。スパイ疑いで醫者になれなくなるなんて。どうして? どうして? わたしには何もいいことが起きないの? なんでわたしにはこの世界に居場所が無いの‥‥?」

わんわんと泣き散らして、肩で息をしだした頃、その後に訪れたのは、重たい寂寥だった。

結局、彼がわたしにした恫喝も、優しさも、セクハラも、お悩み相談も、すべて報を引き出すための揺さぶりに過ぎなかったと。

わかってた。頭ではわかってたつもりだった。

だけど、わたしはまんまと彼の手の上で弄ばれただけだったのね。

せめて、「もう報は要らないから、君を國へ連れて行きたい」と言われたかった。その方がいくらかは楽だった。

わたしは、彼の中でも、やはり彼のお仕事以下の優先度だったんだね。

無言で、彼に背中を向けて、むせび泣く。

震える肺のまま、弱弱しく深呼吸をした。

そして。

疲れ果てたわたしは、自分でも信じられないことを口走っていた。

「‥‥ります」

「何? お姫様」

「しゃべります。わたしの知っていること、すべて。戦艦のこと、パイロットのこと」

わたしの中で、何かが壊れていった。

いいえ。

もっと早くから、すでに壊れていたのかもしれないけれども。

わたしは、その場に、崩れるようにひざまずいた。

「‥‥‥‥だから、あなたとここで逢ったことを、消してください。それが葉うなら、わたし、あなたの言うこと何でも聞きます」

「おいで」

瞳の綺麗な年が、やさしい表で、わたしに『右手』をさしのべてくれていた。

ありがとう。――こんなわたしに。

うれしかったよ。

でももう遅い。遅いよ。手遅れだよ。だって。

わたしは今から自分のためだけに、あなたを裏切るのだから。

※「まさかヒロインが墮ちるとは!?」と思った そこのアナタ!!

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