《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第41話 屆け! ①
その前の日の夜、ハシリュー村を出発した暖斗(はると)は、ラポルトに帰艦して事を説明すると、滝知山(たきちやま)達との待ちあわせポイントへ向かい、無事合流、彼らを連れてそのまま帰艦した。
暖斗はDMT(デアメーテル)デッキにいたが、滝知山達はどんどん艦へって行った様だ。
「おお~。最新艦か。しばらく村暮らしだったからな」
中央エレベータの前で、子(こごい)達が一列に並んで待っていた。メンテ3人組と紅葉ヶ丘、仲谷を除いて全員いる。
「艦長役を任されております。子と申します。大戦の英雄、滝知山陸曹長をお迎えでき、栄に存じます」
子とは敬禮した。
「おう、ネエちゃん共ご苦労さん。じゃ、取りあえず、全員服げや」
「「!!!」」
慌てて後ろから、日金(ひがね)が滝知山の袖を引く。
「上長! ここはそういう店じゃありませんから」
「がっはっは! いやいや、全員オンナだって聞いてたから『本當か? どんな反応すんのかな』ってな。がっはっは! 悪い悪い」
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滝知山は酒焼けの頬を歪め、頭を掻いて豪快に笑っている。
が、子のインカムには「最っっ低!」「普通に聞けないの?」という誰かの聲がっていた。
當然、艦の子全員、ドン引きだ。
暖斗から渚の伝言を聞いていた子は、スマホの會話アプリ(アノ・テリア)を全員モードにしていた。
「この最新鋭戦艦を中學生がなあ。當然『封印』はしてあんだろ?」
「はい。機に関する所は封印してあります。が、そもそも私共はどこに封印があるかすら教示されておりません」
「そりゃそうだ。萬が一見つけちまって、萬が一封印解いちまったら一大事だ。ま、一応その辺も確認するんで、案してくれや。‥‥いや、待てよ。もうこんな時間じゃねえか。明日でいいよな。日金」
「ああ、そうですね。そもそも上長飲酒してますし。もう休みましょう。上長」
「では、こちらでお休みください。4Fの士室です」
子はそう言って滝知山達を案すると、インカムに手を當てて小聲でささやいた。
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「‥‥ええ。お酒は全部廃棄して。仲谷さん。‥‥うん、はい。そう、料理酒も。‥‥それは後で何とかしましょう」
*****
次の日の朝、滝知山さん達は子さんの案で艦を見て回った。その後、先日の戦闘でアピちゃんを襲ったBotを見に行く予定みたいだ。
僕はひとり醫務室で、に異常が無いのを確認する。
依(えい)のいない醫務室は、もの靜かだった。今頃村で羽をばしているんだろう。
いいよね。依はずっと艦の醫療提供者として頑張ってきたから。
ちょっとくらいいい思いをしたっていいじゃないか。
その後、桃山さんと模擬訓練をしていると。
「暖斗くん」
麻妃(マッキ)が訓練室にってきた。
「Botが出たってさ。村に」
僕は驚く。
「え? 通信使えるの?」
「ああ、艦周辺警備用のドローンを、中継用に使ってたじゃんか。それをそのまま置いてあるんだよ。萬が一用にね。で、そのドローンに、渚さんからコンタクトがあった。Botが出て、撃退出來ないんだって。で、しかも、依の姿が見えないって」
「え、‥‥なにそれ。大丈夫なの?」
ものすごい騒ぎがした。急いで訓練室を出て、自室で著替える。スーツのファスナーを閉める手が震えた。
麻妃とは、インカムで會話を続けながら。
「なんか煙幕張るタイプのBotで、アピちゃんの家に近づこうとすると、村の外からでも煙幕張って來るんだって。たぶん依は、アピちゃんの家にって、けなくなってるんじゃないかって」
「なんだそれ。大ピンチじゃないか。どうなってんだよ。それ!」
DMTデッキへ続く廊下を走る。
なんだか腹が立ってきた!
「暖斗くん、慌てず急ごう。もうMK(マジカルカレント)発現しちゃってる。平常心だよ」
そう麻妃に諭されながら、DMTに乗り込んでいた。深く息を吸った――つもりだったけど、上手くいかない。
平常心? 無理だよ。依が心配すぎる。
「002番機、出ます。接地後フルブーストします」
「え? 待ってよ。ウチのKRM(ケラモス)が間に合わない。桃山さんも出撃だよ。陣形組もうよ」
麻妃がそう言って慌てたが、待ってられない。
間に合わなかったら、依に何かあったら。
早く現場について、依のを見なければ。
ドンッ!!
今のラポルトは、地面に著陸している。僕はデッキから発進すると、著地の瞬間に大地を思いきり蹴った。
DMTの機が上空へ跳ね上がる。一瞬Gがかかったけど、すぐ縦席周辺の重力子回路で相殺した。
フローターで自重を軽くしながら、跳躍の距離をできる限りばした。鳥が飛ぶくらいの高さまで跳躍できたけれど、まだ遅い。まだ低い。
著地と同時にまた跳躍! 眼下の荒野が高速で後ろへ流れていく。
「屆け‥‥!」
僕はそう呟いていた。
*****
「‥‥まさか、こんな事態になるとは」
アピの家では、ゼノスが全に脂汗をかいて、意識の無い依の姿を眺めていた。
依は、ぐったりとソファに橫たわったまま、紅いくちびるをゆるめて目を閉じている。
一向に起きる気配が無さそうだ。
湯上りの黒髪はみだれ、倒れ込んだ拍子に浮き上がったスカートからは、太ももが大膽にあらわになっている。
そして件のキャミソールは、子の純潔を守る、という服の使命を放棄する寸前だった。まさに逢初依のそれが、こぼれ落ちんばかりだった。
ゼノスはその無防備をまとう無垢な白に、手をばす衝に駆られる。
が、そのリビドーは不思議なチカラでかき消された。
「う、‥‥うう、言われた通りにしなくては‥‥‥‥」
ゼノスは、両手に手袋をはめると、服の部分を選んで依を抱きかかえる。そのまま外へ歩き出した。
*****
「ぬっくん! 先行しすぎ。待って!」
「麻妃(マッキ)。なんで通信るの?」
「艦と村の中継點にドローン置いといたから」
僕のDMTはもう艦から隨分離れていた。高速でジャンプを繰り返して、ひたすら先を急いでいたから。
通信がらない距離だけど、麻妃が言ったように警備用ドローンを中継基地局として置いてあるんだろう。
麻妃の聲が聞こえる。
「渚さん! ‥‥は居ないか。じゃ、子さん! 村に近いドローンの支配権(コントロール)ちょうだい!」
「やっといたよ。子學生は今オッサンの相手してる」
「紅葉ヶ丘さん? ありがとう」
「このペースだと、002番機はもうすぐ接敵する! 急いで」
*****
わたしは、目を覚ました。
「あれ? ここどこ?」
吹く風が汗ばんだをひんやりとさせる。髪が、し流れた。
「わたし、何してたんだっけ‥‥‥‥?」
周囲を見渡す。ちょっとだけ見晴らしがいい。丘の上のようだ。荒野と森、だけど、森の比率がし高いかな。
「あ、村だ、村の口。えっと、ハシリュー村、だよね。あれ。え、じゃあ、ここは?」
見覚えのある、赤い屋が見えた。村の口近くにある、アピちゃんの家だ。
「あ‥‥‥‥れ?」
その瞬間、わたしの記憶が呼び起された。
そう、わたし、逢初(あいぞめ)依(えい)は、さっきまであの赤い屋の下にいたはずだ。それが、なんで村の外の丘の上に?
ふと見ると、キャミソールのヒモが片方落ちている。とっさに肩に戻したけれど、あれ、これって誰がが銀の金屬棒でやってくれた‥‥ような。誰だっけ?
そして、さらに記憶が。
「いやあ!」
全部思い出した。
わたしはあの家の中で、敵兵に捕えられ、彼に屈した。膝を折って味方を売ると宣言したはず。
あ、全部思い出した、は違う。彼――ゼノス君の前でひざまずいでからの記憶が――。
「ない」
ギュオォォン!
目の前にBotが現れた。
「きゃあ!」
1機‥‥2機の小型Bot!
わたしに向かって、金屬製の腕ををばしてくる。わたしは咄嗟に逃げようとするけれど、がうまくかない。足がもつれて転んでしまった。
1機のBotが、わたしの左腕と左足をつまんで、空中に引き上げた。これって、アピちゃんを追いかけてたような人さらいBot?
あ、アームの摑みが甘い。たぶん人間を怪我させずに摑むように、設定されてるんだ。
誰かに聞いたのを思い出した。こういう風に捕まった人間は、他國に連れてかれて、奴隷になるんだって。値札をられて、オリにれられて。
「いやああ!」
反的にわたしは、アームを外して地面に落ちていた。ちょっと高かったはずだけど、恐怖の方が勝っていたから。わたしは、地面すれすれの目線で、自分の手が大地を摑んでいるのを確認すると、起き上がって逃げ始める。
逃げおおせる訳がない。
けれど本能のままに恐怖から逃れるしか今は無かった。
ズゴゴゴォ!
後ろから大きな音がする。
もう耳のすぐ後ろだ。
そして視界は1機のBotに塞がれた。
2機に、前後を挾まれたのだ。
「そうだよね。逃げられる訳ない。親からも、ゼノス君からも。全部」
息を切らせて、口走った。
両腕がだらん、と下がった。
「‥‥‥‥もういいよ。好きにして」
「‥‥誰かわたしをしいなら、自由にして。こんな大ごみ、もう持ってっちゃってよ」
わたしが全てを諦めた、その剎那だった。
※「依さん大ピンチ! 間に合え暖斗!」と思った そこのアナタ!!
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8 127ヤメロ【完】
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8 97久遠
§第1章クライマックスの35話から40話はnote(ノート)というサイトにて掲載しています。 あちらでの作者名は『カンジ』ですのでお間違いなく。表紙イラストが目印です。 ぜひぜひ読んでください。 また第2章は9月1日から更新します。第2章の1話からはまたこちらのサイトに掲載しますので、皆様よろしくお願いいたします。失禮しました~§ 「君を守れるなら世界が滅んだって構いやしない」 この直來(なおらい)町には人ならざるものが潛んでる。 人の生き血を糧とする、人類の天敵吸血鬼。 そしてそれを狩る者も存在した。人知れず刀を振るって鬼を葬る『滅鬼師』 高校生の直江有伍は吸血鬼特捜隊に所屬する滅鬼師見習い。 日夜仲間と共に吸血鬼を追っている。 しかし彼にはもうひとつの顔があった。 吸血鬼の仲間として暗躍する裏切り者としての顔が………
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