《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第43話 左目Ⅰ①

「どう? そのメニューだったら、かなり自化できると思うよ。せっかくAI自運航の戦艦なんだから、整備もオートで行けるよ」

戦艦ラポルトの整備デッキ、2階のタラップで、日(ひ)金(がね)はそう話した。

その話に真剣に耳を傾けるのは、メンテ擔當3人組、七道、多賀、網代だ。

七道が願い出る。

「日金さん、パイロット辭めてメンテ戻って下さいよ。ゼッタイその方がいいです」

「あ~。そしたら、あ~しらラクできるな~」

「‥‥‥‥。うんうん」

「お、柚月が珍しく帽子から出してんな。ひょっとしてオマエ、デキる大人男がタイプか?」

と、七道が多賀を問い詰める。それを網代が。

「そっすよ? 師匠。ゆづは昔っからシゴトデキる大人のオトコがツボで~」

「ちーちゃん!」

「ははは。いや~、メンテも楽しそうだな~。だけど、君らみたいな優秀なの子を國が育中だから、整備は中心になってくんじゃないかな? これからの時代は。メンテから転籍させられたお兄さんはしぶしぶケラメウス業に勤しむことにするよ。パイロット目線からメンテを見る、そんな人間がいるのも、組織にはすごく有益なんだ――ん? どした。詩(うため)ちゃん?」

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「‥‥取り消してください。‥‥依に謝ってください」

食堂。

英雄さんと依を取り囲んで、みんなが立っている。

僕は、ベッドからを起こして、そう言った。

激痛が走ったが、怒りの方が大きかった。

「んあ? 誰かなんか言ったか?」

「僕です。さっきの言葉を取り消して、依に謝罪してください」

「‥‥‥‥暖斗(はると)くん」

麻妃が心配そうに橫目でこちらを見る。

「ああ、何だ、パイロット君か。ガールフレンドが殘念だったな」

「僕が現場に行って助けました」

「助けても、 『助けられた』 かどうかは別なんだが。‥‥イチイチ説明しねえと判らねえか?」

依は無事です。助けた僕がそう言ってるんです」

「テメエとじゃハナシが嚙み合わねえ。じゃあ細かくいくぞ。なあ嬢ちゃん。記憶は全部あるか? 気がついたらベッドで寢てた、とかねえか?」

その言葉に、依はビクッと肩を揺らし、左ひじを持つ右手に、より一層力が込められた。

俯いて垂れた髪ので、その表は見えない。

肩が小刻みに震えている。

「な。そうだってよ。あの白いケムリは催剤で、オンナをその気にさせてから、神経毒で意識を飛ばすんだ。敵も『そのつもり』で段取りしてんに決まってんだろ。最初っから敵兵はな。で、飼いならして手駒にすんだよ」

「でもさっき依は『違う』って」

「ああ~、イライラさせんな。オレが言ってんのはそういう水掛け論じゃあ無くってな。取りあえずコイツを牢屋にれて、それから調べをれろって言ってんだ。何してくるかわかんねえからな。もうコイツは敵に骨抜きにされてんだよ」

「ぐすっ‥‥‥‥ひぐっ‥‥‥‥ふっ‥‥」

その臺詞を聞いた依が、また聲を上げて泣き出した。

僕のはらわたが――――煮えかえる。

英雄さんは構わず続ける。

「思い出したくもねえ!!‥‥‥‥ったく。言わせんな。敵兵にほだされて、が移っちまったがな、オレ等パイロットに近づいてくんだよ‥‥。そりゃあ、天使みてえな笑顔でな。――で、一服盛りやがる。俺の戦友(ツレ)はよ。それでひとりおっ死んで、ひとり失明したよ」

英雄さんは、首を振りながら目頭を押さえる。

「‥‥オレぁ親切で言ってんだ。嬢ちゃんをまずは敵の手駒と見做(みな)して、その後ゆっくり疑いを晴らせばいい。嬢ちゃんが本當にシロならそれでいい。ありえねえ確率でもな。小僧だって、嬢ちゃんが出す飲み食いしちまうだろ? 笑顔で『どうぞ』なんて言われりゃあなあ」

「ぐ‥‥‥‥」

言葉に詰まる。それはひと言も反論ができない。

「オレは今この艦にいる。その艦に『敵外國兵との濃厚接者』がいる。これだけで枕を高くしては寢れねぇんだよ。悪で言ってんじゃねぇ。経験則だ!」

ほらみろ、という顔の英雄さんは、両手を放り上げる様にしながら言った。

「人を騙すことにかけちゃあ、男がにかなうワケがねえんだ。殘念ながらな」

僕は、英雄さんと言い爭いながら、しずつ前へ進んでいた。上手く歩けないから、食堂の機に寄っかかったり、椅子を倒したりしながら。

英雄さんと依、ふたりを取りまく円の、最前列までやっと來ていた。依は、誰かが著せたのか、いつものセーラー服姿だった。

僕は、依が泣く姿を間近で見て、本當に怒りが込み上げてきた。

英雄さんの言っている事が、完全に間違いだとは思わない。けれど、ここで言う通りにしてしまったら、依はどうなるのか。もうすでに取り返しがつかないくらいに傷ついて、苦しんでいないか?

本人の前であんな言い方をする人間を、僕は、どうしても許せなかった。

「‥‥『殘念』。‥‥‥‥殘念なのはあなたの方じゃないんですか?」

僕は、地面を睨みつけながら言った。

「んだと!!」

當然、英雄さんは怒った。

一瞬で食堂の空気が凍りついた。ざわっ! と子が揺れた。

「ぬっくん!」

麻妃に抱きつかれた。

「ぬっくん! やめよう。やばいよ。これはやばい。ね。ぬっくん!」

麻妃の両腕に力がこもる。が、負けずに英雄さんを睨んだ。

「ぐ‥‥‥‥アピちゃんだって、最初この艦が助けた。あなたは何やってたんですか? 酒盛りですか?」

「オマエ!! このオレにゴタ付けんのか!! いい度だ!!!」

さすがに、獅子が吠えたような怒號だった。子全員が構えた。短い悲鳴も。

「小僧!! 村がそれを言ってきたのは後からなんだよ」

「ぬっくん! わかった、わかったから。ウチのお願い聞いて? やめてよう。ね、もうやめよ。お願いだから。お願いだからあ!」

麻妃が抱きかかえた僕を後ろへ引っ張るが、僕も本気で踏みとどまった。

「ケッ!! ママゴトで戦艦かしてる鬼が。いっぱしの口をきくじゃあねえか。戦場に出てから言いやがれ」

「‥‥‥‥さっきから、滝知山さん、『戦場では』とか、々言ってますけど『オレは戦場知ってるぞ』、って何アピールですか? ‥‥‥‥そういうの僕らは『痛いヤツ』カテにれますけど? そんなに偉いんですか。戦場に出る事が」

「暖斗くん!!」

(こごい)さんが絶する。

「てめええええ!!!」

滝知山の怒號! 椅子から立ち上がった。

「‥‥‥‥オメエは今! 命をかけて戦った人間に言ってはならねえ事を言った!! わかってんのか? 特脳だからって、容赦はしねえ。たかが一匹に、ムキになりやがって!」

滝知山は、僕に近づいてきた。

「‥‥たかが、じゃあ無いです。依は傷ついてるんです。苦しんでるんです。かける言葉が違う。‥‥‥‥この世界はおかしい。昔は、子にも男子と同じだけの権利と尊厳があったって。‥‥なのに今、泣くのはの子ばかりで‥‥‥‥」

鬼が!! 男の員數(かず)が足りねえんだよ。絶的にだ! そのない男共で、國防も戦爭もやらなきゃなんねえ。敬われて當然だ!!」

僕の前で、拳を振り上げた。巖の様な軍人の拳。殺し合い経験者の拳。

生まれて初めて「殺意」というものをじた。

ゴギッ!! ‥‥グチッ!!

振り下ろされた拳が命中し、人影が壁に吹っ飛んで叩きつけられた。イヤな音がした。

僕は目を開けた。

毆られたのは‥‥‥‥僕じゃ無かった。

生々しい音で壁まで吹っ飛んだのは――。

浜(はま)一(いち)華(か)さんだった。

「いちこ!!」

食堂に、桃山さんやメンテ3人組もってきていた。日金さんもいる。

「いちこ!」

桃山さんがもう一度んだ。

「うぐぐぐ‥‥‥‥」

浜さんは壁に寄りかかりながら、ゆっくりと起きあがり、英雄さんを睨みつける。

笑うみたいに開いたその口から、べっとりと赤いが流れだした。

その場の全員が、唖然とする中、浜さんの口がく。

そこで彼が発した言葉は。

「あはっ!」

※本來毆られるのは、依さんでした。しかも軽く。暖斗くんがキレるきっかけのはずでした。しかし、セカオワの「アンブレラ」という楽曲を聴いた瞬間、一華さんが壁へ吹っ飛ぶ話が頭の中から溢れ出してしましました(続く)

ここまで、この作品を読んでいただき、本當にありがとうございます!!

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