《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第40話 絶対に大丈夫②

その後、會議室には、子と渚の姿があった。

依のレポートを読んでいる。

インカムに紅葉ヶ丘の聲がった。

「村の方はどうするんだ。英雄さんがアピちゃんを引き渡してそれっきりじゃあないの?」

「「あ!」」

と渚が顔を見合わせた。

そうだ。依と英雄さん、自艦のことで頭がいっぱいだったが、村の被害狀況などは完全に失念していた。

アピちゃんだって、家の床下収納に隠れていて敵兵には會っていないそうだが、詳しい話は英雄さんに聞いただけで、無事を確認したわけではなかった。

「どうしよう。逢初さんもケアしなきゃだし」

莉(ひかり)と葵(ひなた)、ふたりで行くべきだよ。村からしたらこっちは紛れもない絋國軍艦なんだから。村長と面識のある葵、艦のトップである莉、ふたりで行くべきだ」

「そうよね。ありがとう澪。逢初さんが終わったら、夜にでも村に行きましょう」

と答える子に、さらに紅葉ヶ丘が続けた。

「その逢初さんだけどね。検査データが出てきたよ。でもAIがやるのはココまで。本當はドクターがこれを見て診斷しなければならないんだけど、醫師役の逢初さんが當事者じゃあね」

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データをけ取った子は。

「検査結果見るのが怖いわ。‥‥‥‥でも今回の作戦は、搭乗員ひとりひとりの素や行をかなり厳粛に調べ上げた上で運営が選考してる。軍艦に乗せるんだから當然なんだけど。逢初さんが裏切るとかはありえないこと。でも、敵兵と濃厚接して、薬、洗脳、教唆をされたとすると、難しくなっちゃうわね」

渚が、がっくりと肩を落とす。

「ごめん。莉(ひかり)。英雄さんと暖斗くんを艦に向かわせなければ。わたしの判斷ミスだわ」

「それ言うなら、村への派遣部隊の編制はわたしの責任よ。こういう事ね。私達が將來幕僚になれば、私達の命令、判斷ひとつで部下の人の運命が変わる。――こんなにも簡単に」

「もし、逢初さんに何かあったのなら、私‥‥‥‥」

渚は涙聲だった。

「だめよ。葵(ひなた)。泣いちゃだめ。もう起こってしまった事なのよ。見て。逢初さんのレポート。村のお風呂覗かれてたって。暖斗くん達が村を離れたのを把握しての敵の仕掛け。私達の完敗だわ。でも、國防に終わりはない。泣くのならあなたには帰ってもらうわよ」

「わかったわ。莉」

うつむいた前髪の下で、渚葵はくちびるを噛みしめた。

「まだ、希はある。彼の、人間力頼りなのだけれども」

莉は、そう言った。

のくちびるも、固く閉じられていて。

そして、その聲は、涙聲だった。

*****

眠った僕は、夢を見ていた。

きれいな夕焼けだった。空一面、オレンジの雲が輝いている。僕は、この夕焼けに見覚えがある。ほら、父さんがとなりで僕の手を引いてる。あの、鳴沢さんの一件の帰り道だ。

父さんは、よく夕焼けの見える、公園のしだけ開けた所を選んで腰かけた。促されて僕も座る。僕が、まゆほちゃんをキズつけてそれを謝った、その帰り道だ。

あれからもう何年も経つけれど、この夕焼けよりきれいな夕焼けを、僕はまだ見た事がない。

これって、原風景、っていうのか。

そうだ。この後父さんは僕に話かける。當時の僕には、まるで意味がわからなかったけれど、今ならし、父さんの問いに答えられる気がする。

そう、この旅をしている今の僕なら。

ほら、父さんが足もとの小石を除けた。この後だ。父さんが僕にあの事を問いかけてくるのは。

「なあ、暖斗」

ほら。やっぱり。

*****

眠ったわたしは、夢を見ていた。

自分で夢を見ていると自覚がある、いわゆる明晰夢だ。

白いもやの中を歩いていくと、やがて家が見えてきた。わたしはこの家に見覚えがある。しぶしぶ家の中にると、「彼」がソファに座っている。あの時と同じだ。

この後、「彼」がわたしに話しかけてくる。

あの時のわたしは、気が転してたかもしれない。確かに、白いケムリの効果があったのかもしれない。上手くけ答えができなかったのだけど、今ならもうし上手くやれる気がする。

ほら、「彼」がソファから立ち上がった。この後だ。「彼」が、わたしにあの事を問いかけてくるのは。

「ねえ、お姫様」

ほら。やっぱり。

*****

「確かに、3F って子だけじゃ來にくいけど」

そう言って、うたこ――桃山(ももやま)詩(うため)はため息をついた。

今、私――浜一(はまいち)華(か)は、彼とふたりで、3Fに行くべく、2Fの中央エレベータのドアの前にいる。

昨日オペの後、醫務室で一晩過ごしたが、暖斗くんは醫務室に私がいるので、臨時に3Fの自室に移されて就寢したという。今朝、アノ・テリアで退院する事を彼にメールしたら、あらためてお話したい、と返事があった。

私は、うれしかったけど、同時に困ってしまった。果たして暖斗くんの部屋で、會話が持つのだろうか?

そこで、我が親友に助けを求めた。

「でも、私がいっしょに部屋にるのはどうかなあ。呼ばれたのはいちこなんだし。暖斗くんの隣の部屋って、アルファルファの野菜工場にしてるんだよね? じゃ、私はそこにいるから、それでどう?」

うたこはそう言ってくれた。十分ありがたい。

「暖斗くんは、あ、逢初さんのこと、下の名前で呼ぶようになったんだから、わ、私も、下の名前で呼んでもらおう‥‥かな」

「そんな、肩に力れないほうがいいよ。暖斗くんだって、本來醫務室で寢てるじなんだから。それに、たぶん元気ないよ?」

「うたこ‥‥! アンタ、私の事応援してくれるんじゃなかったの? ま、まさか、裏切る気じゃあ?」

「そんなことするわけないじゃん。ただ、暖斗くんの、相手の顔はよく見て、相手の気持ちはよく考えないと。いちこはすぐ暴走するから」

「『毆られそうな所を、してかばってくれて、ありがとう。あらためてお禮を言いたい』って、メール見たでしょ? だ、暖斗くんからの」

「いちこも、『タンコブはだいぶ腫れが引きました』ってちゃんと報告すれば?」

「なによ。もう」

うたこにからかわれながら、3Fの暖斗くんの部屋の前まで來てしまった。

「じゃ、私はココにいるから。いちこ、がんばんなよ!」

といって、うたこは暖斗くんの右となりの部屋のドアを開けた。中にはアルファルファの育裝置が並べられており、植にはLEDのが當てられていた。

うたこは、そのケースの一つに腰かけると、スマホを取りだした。

私は深呼吸をする。もうすでに心臓がバクバクしてる。あの私を毆ったチ‥‥おっと、言葉使いが良くない。あの、英雄さんと対峙した時よりもドキドキしてる。

「浜です」

とインターフォンを押して言った。

この、名字で名乗りが、この部屋を出る時には、下の名前に替わってるかと思うと、さらに私の心臓は高鳴った。

※さあ、次回から、これぞ本作! とうエピソードになります。ラブコメというタグをつけてはいますが、あれはまあ、噓ですね(失禮!)

ここまで、この作品を読んでいただき、本當にありがとうございます!!

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Twitterやってます。いぬうと @babyassault

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