《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第45話 左目Ⅱ②

「うたこ! うたこ!!」

私は、暖斗くんの部屋を飛び出すと、隣りの部屋へ駆けこむ。

「暖斗くんが‥‥‥‥」

うたこが驚いている。

「どしたの? 急変?」

「泣いてる‥‥」

「え?」

「泣き出した‥‥泣き出したんだよぅ‥‥急に。暖斗くんが」

「わかった」

うたこはバネの様に立ち上がって廊下へ跳び足した! ――んだけど、廊下へ出るなりゆっくり大で歩き出した。深呼吸をしながら。

私はうたこの背中にぶつかりそうになる。

「‥‥‥‥桃山です。ります」

暖斗くんは、さっきと同じ場所、同じポーズのままだった。

その彼をじっと見つめるうたこ。

と、急にわたしに振りかえった。今度は私をじっと見つめる。

(私を呼んだ、って事は、私に『やれ』って事よね? それでいいのね? いちこ)

親友の目はそう言っていた。私にはもう選択肢がない。目を合わせてゆっくり頷いた。

「どうしたの? 暖斗くん‥‥‥‥」

「あ!」

うたこは、聞き取れないくらいのやさしい聲で、暖斗くんの隣に座った。

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そこはさっきまで私が座ってた場所のさらに奧、ベッドだった。

聲を上げてしまったけれど、もう遅かった。

「どおしたの? 暖斗くん。私と一華がいるよ」

うつむく暖斗くんに、そっと顔を近づける。

「僕が、ふがいないせいで、依(えい)が‥‥‥‥」

暖斗くんは、何度もむせびながら、やっとそれだけ言った。

依さん――暖斗くんの口からその単語が出ただけで、私は死にそうになる。

でも、私は自分がした事を思い出した。本の兵隊に組み伏せられてトラウマだったと。

それならば、敵兵に捕まって拳銃を突きつけられた逢初(あいぞめ)さんはどうなのか。子の間では、もっと々ヒドイ事をされたとも聞こえている。

そもそも、そんな傷ついた逢初さんに、傷口に塩をぬり込む様な事を言うあのチ○カス野郎に、私は激怒したのではなかったか?

私の不用意な言葉が、暖斗くんの一番大切な人を想う心を、えぐってしまった事を、

愚かな私はやっと理解した。

でも、――――愚かな私は、この後、さらに自分の愚かさを思い知る事になる――。

「そんなことない。そんなことないよ。暖斗くんが駆けつけて、逢初さんを助けたんでしょ? 暖斗くん、ありえない速さで機したんだよ。私なんて戦場に著けなかったもん。暖斗くんが! 助けたのよ!」

うたこは、暖斗くんの話にうなずきながら、やさしくめる。

まるで母親と児(ベイビイ)の様だ。

思えば、男子が取りすこんな場面に、私は居合わせた経験がない。ウチの中學に男子がいないから?

そうかもだけど。

暖斗くんは、本當に逢初さんの事を心配しているんだ。今日になって、検査結果も公表されて、彼が書いた『敵兵と遭遇したレポート』も読んだ。でもさっき、チラっと「まだあれから會ってない、顔をみてない」、って言ってた。

私は自分の事ばかり考えていた。

暖斗くんは深く傷ついていた。

村を離れた事を悔いていた。

逢初さんのに起こった事を、自分の無力が責任だとじていた。

いや、なくとも、私の前ではそれを見せない様に努めていたのに、私がスイッチをれてしまった。

私の目の前でうたこが、時に母の様に、時に姉の様に、妹の様に人の様に、暖斗くんをれながらめていく。何回か目があった。

(ほら、こうやってやるんだよ。本當はいちこがやるんだよ。暖斗くんの となりにいたいんでしょ?)

の目はそう言っていたけど。

できなかった。私には。

そうか。人を好きになるって、その人のいい所を見つけて好きになるって事だけじゃなくて、悪い所、弱い所もれるって事?

私は、暖斗くんが弱さを、涙を見せた時點で逃げ出した。

うたこを頼った。

これは「失」じゃない。

「失格」

ああ、暖斗くんがし落ち著いてきた。さすがは、うたこ。

「ふたりとも、こんな取りした所を見せてごめん。浜さん。桃山さんを呼んできてくれてありがとう」

はああぁぁ、「浜さん」‥‥‥‥‥‥か。

今ごろ、本當は。本當は。本當は。

私の事、「一華」って呼んでもらってる予定だったのに。

そして、「うたこを呼んできた事」について、お禮を言われてしまった。

もうワケがわからない。

‥‥控えめに言って地獄だ。

そして、そのタイミングで、うたこが號泣しだした。

桃山(ももやま)詩(うため)――うたこは、私の親友だ。これまでもそうだし、きっとこれからもそうだ。なくとも私はそう思っている。

そして、親友の私が斷言するけれど、うたこは決して「そういう子」ではない。

つまり、親友の想い人に、あざとい事をする子ではない、と、いう事。

この時、うたこは。

「そんな事言ったら。私だって逢初さん気の毒で」

としゃくりあげて泣いた。當然、逢初さんのにおこった事はショッキングで、同としてが痛い。

そんな所で、私に呼ばれ、暖斗くんの悲しみにれてしまったうたこは、暖斗くんのに同調してしまったらしい。うたこは昔からコミュ力が高い。

私が悲しい時には、私以上に悲しんでくれる子だ。

だから、もう一度斷言する。うたこは決して「そういう子」じゃあない。

でも結果的に、を分けあうふたりと、その他約1名の私(アホ)、みたいになってしまった。

「あ‥‥」

発見してしまった。しゃくりあげるたびに、うたこのが暖斗くんの肘に當たってる。でもこの狀況で、「うたこ、が」と耳打ちするのもおかしいし。

あ、暖斗くんの肘が不自然に引っこんだ。気がついたんだ。さすが暖斗くん紳士。

――――っていうか、私は何やってんだ!

暖斗くんは、その引っこめた左腕を背後に回して、うたこの背中をさすり始めた。

さすが暖斗くん優しい。‥‥‥‥ってそこは、私がいたポジションだ。

私がさすってもらえた未來もあったのに。

地獄だ。

暖斗くんには、同母妹(いろも)がいると聞いた。うたこをなだめるその表は、優しいお兄さんのようだ。ああ、こんな表もするんだ、とが痛くなる。

あ、でもそういえば。

絋國男子たるもの、子の前でメソメソ泣くな。

近所のおじいさんが男孫に言っていた。それがこの國の気風だ。暖斗くんは、私達の前で泣いてしまった。相當にバツが悪いはずだった。さっきまでは。

今は、うたこが大泣きして、それを暖斗くんがめてる。暖斗くんの面を考えたら、これって最適解、満點回答なのでは?

うたこは、「こういうもの」を持っていて、それを嫌味なく発できるから、皆に好かれる。

「これでいいんだ。暖斗くんが元気になってくれるなら、結果オーライでしょ?」

私は自分に、そう言いきかせる事にした。

そして。

うたこには、いつかこう言ってやろう。

「うたこって、そういうお仕事に向いてるんじゃない? ご指名いっぱいもらえるよ」

と。

あの時、英雄さんに毆られた後、暖斗くんが両手を握ってくれて、心配してくれた。その時、左目から涙が出た。どうして左目だけ? とは思ったけれど。

今日、暖斗くんが泣いて、さらにうたこが大泣きして。

でも、私の左目からは、もう――――涙も出なかった。

※恐るべき詩さんの狀況処理能力。そして一華さんの想い人との相が、親友詩さんの方が良いという現実。でも一華さんは誰をも恨みません。どうか彼に幸あれと願うばかりです。

このお話の続きはあります。書ければ、ですが第5部です。‥‥無理か(終わり)

ここまで、この作品を読んでいただき、本當にありがとうございます!!

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