《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第47話 「にじ」①
暖斗(はると)くんは、わたしの手を引っぱる。力強く。わたしはたたらを踏む。
「右手」
「え?」
「いいよ」
彼は、持ち直した左手でわたしの右腕を摑んで引き寄せると、右の手てのひらを、わたしの左ほほに押しあてた。
わたしと暖斗くんは、立って向きあう形になる。
「村に行って、依(えい)はどうするの?」
彼は聞く。まっすぐな目だった。
「どうなるかはわからないけど、もうこの艦には乗っていられないよ。裏切ってしまったもの」
「みんなそんなの気にしない」
「‥‥それにね‥‥、記憶がない時間帯があるって、さっき言ったよね? 思い出せない。これってね。心的外傷後ストレス障害由來の乖離健忘なの。自分でわかっちゃうの辛いけど、わたしが思い出したくもない事が、わたしのに起きたのよ。それに悪夢も見る。寢つこうとすると夢でフラッシュバックするの。眠れないし、この艦にいるのが、もう辛いの」
「‥‥‥‥辛い、んだ」
「そう、わかってくれる? わたしは、もう、みんなと一緒にいる価値の無い人間」
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ぐん。
暖斗くんの『右手』が、一層熱を帯びた気がした。その熱に、わたしはうわずる。
「‥‥‥‥決めんなよ。依が勝手に決めんな。価値が無い? 何言ってんだ」
暖斗くんの聲は、怒気を孕んでいた。
「でももう居場所が無いよ。この艦にもあの家にも。村で醫者のまね事をすれ‥‥」
「違う!」
彼は、わたしを凝視した。
ああ、山奧の靜かな湖面にハシリュー村の星空を映したような、この雙眸。
その深淵に、わたしは吸い込まれる。
「依は、そうじゃない。なんにも穢れてない。醫務室で、初めて逢った時のままだよ」
「え? だからそれは」
「俺が決める。依が自分で決めんな。俺は知ってる。依のにれたこの『右手』が知ってる。依は、そのままでいい。何も失っていない。大丈夫だよ。だから、艦を下りちゃダメ。僕の前からいなくなってもダメ。僕の言葉をけれて」
「ぜんぜん定量的じゃない」
「いいから。それに僕も、依に言わなきゃならない事がある」
なんだろう。急にあらたまって。「さよなら」とか? でも村に行くなって言ったばかりだし。
暖斗くんは、一歩下がって居ずまいを正した。當然、『右手』も一旦はなれる。
「あの‥‥‥‥」
暖斗くんのは、ぎこちなかった。まだMK後癥が抜けてないんだ。
「ごめんなさい」
彼は深々と頭を下げた。
「え? 何がどうして?」
意外すぎる謝罪に、わたしは混する。
「村で、助けるのが遅くなって」
「ああ、それなら、間に合ってくれたでしょ? それはむしろわたしがお禮をいうべきことだよ‥‥‥‥ね」
「ごめんなさい」
「‥‥‥‥!?」
「英雄さんとの事。言い方がひどかったから、依にちゃんと謝ってほしかったけど、僕もカッとなってて。暴力はもちろんダメだけど、僕も相手を怒らせようとイキってしまった。もっと別の言葉があったかも。ごめんなさい」
「う、うん。あの時は、わたしも自分の事で一杯だった」
「ごめんなさい」
「‥‥‥‥まだ、‥‥あるの?」
「うん」
「なんだろう。わたしには、もう思いつかないよ」
「敵兵の事。依のレポートあらためて読んだよ。銃で脅したり、ちょっとフレンドリーに接してまた銃を出したり。ひどいよね」
「そのゼノス君やBotから救ってくれたのが暖斗くんでしょ? え、もしかして違うの?」
「違わないよ。でも、ごめんなさい」
暖斗くんは、あらためて大きく腰を折った。
「だから、なんで暖斗くんがあやまるの? 訳わかんないよ」
「‥‥‥‥だって、この事に関して、誰も依にちゃんと謝らないじゃないか! 敵兵はたぶんもう逃げたよね。じゃあ、傷つけられた依には誰がちゃんと謝るの?」
がつん。 頭をハンマーで毆られたような衝撃。
「‥‥‥‥だからって、暖斗くんが?」
「依は、の子だよね。の子は、男とは違うから、もっと、こう、大事に、大切にれなければいけないと思うんだ。なのに、こんなに君は傷ついているのに、誰一人として君にちゃんと謝ってない。このままじゃ、依が可哀想じゃんか‥‥」
彼は続ける。
「こじつけかもだけど、違うんだ。僕は敵兵と同じ男だから。男だから。世界中の男を代表して、僕が! 君に! 謝る! ごめんなさい。そうしないといけないと思ったんだ。銃で脅したりして、ごめんね。君の、の子の心をわざと傷つけたりして、ごめんなさい‥‥」
‥‥‥‥‥‥聲が震えていた。泣いていたのかもしれない。‥‥或いは。‥‥彼は。
‥‥そうして、暖斗くんは、わたしの前で、何度も、深々と頭を下げた。
「‥‥え‥‥え‥‥え? ‥‥‥‥訳わかんない」
俯く彼の肩が小刻みに震えていた。まだ、MK後癥が治りきってないはずなのに、ね。
「男代表って何? バカみたい」
わたしは、両手を広げて、90度に腰を曲げている暖斗くんを抱き起した。ちょうど、まっすぐ見つめ合うじになった。
そしてわたしは。
「‥‥‥‥バカ」
「‥‥‥‥でも、ありがとう」
ただ、涙だった。涕泣した。かれは、聲もなくしゃくりあげるわたしを、震える腕で、そおっと包んでくれた。
につかえていた悲しみの種が、すうっと消えていくのがわかった。
あのアピちゃんの家で、駅に向かう電車の中で、この世界で。
わたしはただ若い、という屬だけで扱われていた。
誰も、逢初(あいぞめ)依(えい)を知ろうともしていない。
わたしから盜れるだけを搾取して、その屬をどうにかしてやろう、という悪意だけがあって、そして――――わたしを傷つけた。
そう。わたしは、ちゃんと、あやまってほしかったの。
どれだけ時間が流れたかは知らない。永遠にも一瞬にも思えた。やがて、靜かな湖面に水面が立つように、彼がをはなした。
立っているのがもう、限界だったから。
そのまま彼を介助して、ベッドにたどり著くと、わたしも糸が切れた人形みたいに、の力が抜けた。そうだ。まともに寢れてなかったんだっけ。
「大丈夫?」
「うん。もういいの」
自然と、口からその言葉がこぼれた。
それから、どちらともなく、ベッドの上でを寄せ合った。彼は、わたしに右腕を差しだしてくれた。肩にのる彼の『右手』が暖かい。まぶたの重みをじた。
目を閉じる瞬間、またあの悪夢が脳裏をよぎったけれど、不思議ともう、怖くは無かった。
わたしは、永遠をじる誠意とぬくもりのの中に、もういたから。
今まで、神経質な母のいる家で、良い子、良い姉を演じてきた。その家から出てを立てるべく、取れる資格はすべて漁(あさ)った。
でも、もういいの。
誰かのぬくもりに、こうしてを委ねることが、こんなにも安らぐのだと、この時わたしは生まれて初めて知った。
「白いケムリも、銀の銃もいらなかったね」
もし、また、夢の中で逢ったら、アイツにそう言ってやろう。
※ヒロインの、再生と復活の語。ベイビーアサルトの主題です。
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