《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》20話 隣町遠征のこと 2

隣町遠征のこと 2

「一朗太くん!一朗太くんなの!?」

病院脇のテントで人の自衛とお話しながら待っていると、り口から看護師さんが飛び込んでくる。

後ろにさっきの花田さんも立っている。

ところどころにが付著した制服を著た看護師さんは、俺のよく知ってる人だった。

「おばさん、無事でよかった!」

「ああよかった!どこも怪我はない?噛まれてない?」

「うわっだ、大丈夫ですよビックリするなあ。」

坂下のおばさんが俺のをペタペタりながら涙目で問いかけてくる。

由紀子ちゃんといいおばさんといい、オッサンの家族はオッサン以外いい人ばかりだなあ。

・・・なんで結婚できたんだろうオッサン。

弱みでも握ったのだろうか。

俺という知り合いの無事を確認できたからか、おばさんはホッとしたように椅子に腰かけた。

目からポロポロと涙をこぼしている。

安心したら一気に張り詰めたものが解かれたのだろう。

おばさんが落ち著くのを待って、現狀を軽く説明する。

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・詩谷市もめちゃくちゃになっていること。

・近所の住民が俺以外帰っていないこと。

・由紀子ちゃんと避難所になっている高校で再會したこと。

・由紀子ちゃんのいる避難所は、警察がしっかりと管理していて安全なこと。

などをだ。

ん?何か抜けてるって??

おばさんも聞かなかったからいいんだよ!!!!

しかしマジでオッサン何やったんだよ・・・聞きたくないし知りたくないけどさあ!

「あの子が無事でよかった・・・」

「おばさんを心配してましたけど、これでやっといい報告ができますよ。」

久しぶりに心から安心して話している気がする。

ここ最近のハーレム野郎や金髪リキなどで荒んだ心が回復していくようなじだ。

おっかしいなあ、なんで外で俺が會うのは人間の放廃棄みたいな連中しかいないんだろう。

フシギダナア。

「それで、どうしますおばさん?由紀子ちゃんの所に行くのなら俺が送っていきますけど・・・」

「それなんだけどね、一朗太くん・・・」

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おばさん曰く、ここを離れるのは難しいとのことだった。

もちろん娘は心配だが、擔當しているかせない患者さんや、こちらで知り合ったお年寄りたちを置いていくことはできないと。

うーん、真面目だ。

まさに白の天使。

無職系屑の俺ではどうひっくり返しても出てこない考えだ。

「こちらとしても行かせてあげたいのが本音なのですが、外の危険や醫療従事者の不足等も考えますと・・・」

後ろで聞いていた花田さんも話にってきた。

そうだよなあ、いきなり刀裝備のヘルメット釣り人もどきに貴重な看護師を連れて帰りたいと言われても困るだろう。

追い返されなかっただけで儲けものだ。

それに、見たところ病院は自衛隊ががっちりガードしているし、危険はないだろう。

警察よりも安心できる。

裝備的な意味で。

うーん、攜帯が使えればすぐに由紀子ちゃんに電話しておばさんと話をさせてあげられるのになあ。

充電はバッチリなのだが、ゾンビ騒からずっとインターネットも電話回線も使えないんだよなあ。

停電で基地局がダメになったのかな。

まあいい、とりあえずおばさんの無事は確認できたんだし、帰って由紀子ちゃんに報告すればミッションコンプリートだ。

これで心置きなく自由を満喫できるぞ!

「わかりましたおばさん。由紀子ちゃんには元気だったと伝えておきます。」

「あ!一朗太くん、おばさん由紀子に手紙を書くからちょっと待っててもらえるかな?」

あーなるほど手紙という手があったか!

文明の利にばかり目が行っていて完全に忘れていた。

おばさんは手紙を書くために病院へ戻っていった。

「田中野さん、あなたに依頼したいことがあります。」

煙草でも吸おうと懐に手をばしかけていた俺に、花田さんが話しかけてきた。

なんだろうか?

「この神崎を、あなたが話していた詩谷の避難所まで同行させていただきたいのです。」

・・・なんですと?

「・・・そりゃあ、手紙を渡すので一度は避難所に行きますが。何故です?」

なんか変な話になってきたぞ。

「ご存じの通り、我々自衛隊や警察は、両方とも上層部と連絡が取れておらず、現場の判斷でいている狀態です。」

「そのようですね。」

「このままでは大規模な行も起こせません。とにかく報も人員も足らないのです。そこで、存続している警察とまずは橫の連絡を取り合おうと思っておりまして。」

「しかし、長距離通信ができるようなでかい無線が私の軽トラに積めますかね・・・?」

「コンパクトな衛星経由の無線機ですので。」

あっそうか!カーナビが普通に使えたってことは、通信衛星は生きているのか!

さすがに宇宙まではゾンビは進出していないわなあ。

ははあなるほど、それを使って警察と自衛隊の共同戦線ってわけか。

そのための連絡要員として神崎さんを派遣する、と。

納得した。

「もちろん、タダでとは言いません。手伝っていただければ我々の備蓄食料をいくらか提供いたします。」

おっ、それはありがたい。

ミリメシって食ったことないしなあ。

正直備蓄はまだあるが、保存できるなら余分にあっても困らないし。

俺は了承し、契約が立した。

「お手數をおかけしますがよろしくお願いします、田中野さん。」

神崎さんが頭を下げてくる。

「ああ、いえ。こちらこそボロ車で申し訳ない。」

ならいい人そうだし乗せても問題はないだろう。

狹い車で俺みたいなのと一緒なのはこの際我慢していただこう。

・・・乗る前にデオドラントスプレー吹いておこう。

どの道斷れるような話でもないし。

警察とか自衛隊とかは仲良くしておいて損はないよなあ。

ちなみに、俺に依頼することになった決め手は坂下のおばさんらしい。

お年寄りの話にも嫌がらず付き合い、人當たりもよく、嫌な仕事も率先してやるとてもいい青年だ、と説明してくれたとのこと。

・・・誰だその完璧超人は!?

俺なのに俺じゃない誰だその俺は!?

オッサン以外の坂下家からの評判が良すぎる不合・・・

坂下のおばさんから手紙を預かり、病院を出発する。

「いーい?くれぐれもケガには気を付けるのよ!元気でね一朗太くん!」

おばさんはこっそり飴玉をいくつか握らせてくれた上に、見えなくなるまで何度も何度も手を振ってくれた。

甘味も貴重だろうに・・・ほんとにいい人だわもう。

あそこまでよく接してくれると、多の面倒ごとはいくらでも引きけてやろうという気持ちになってしまう。

は世界を救うってやつだな。

背中のリュックには自衛隊由來の保存食がぎっしりだ。

うーんいい重み!

今から食うのが楽しみだ!

そして俺の後ろから、背嚢を背負った神崎さんがついてくる。

裝備やら弾薬やら無線機やらでかなりの重量のはずなのに、その足取りはよどみない。

自衛隊すげえ。

軽トラまであとし、という所で、路地の暗がりから2のゾンビが飛び出してきた。

先頭の1は即座に脳天を砕いて処理したが、2目は俺をすり抜けて神崎さんの方へ。

あっこいつもスケベゾンビだ!

慌てて振り向いて追いかけようとするが、神崎さんの方が早かった。

は摑みかかってくるゾンビの膝を下段の前蹴りでへし折り、地面に倒れたそいつの後頭部をライフルの銃床で叩き潰した。

急所のみを狙う、流れるようなきだっだ。

・・・自衛隊すっげえ!!

やっとこさ車に到著。

神崎さんがいるのでリュックを荷臺に積み、こっそりデオドラントスプレーを使う。

「田中野さん、あの・・・もしよかったら私にも貸してくださいますか?」

若干顔を赤らめ恥ずかしそうに聞いてくる神崎さんに、新品の1缶を進呈した。

凜々しい人のテレ顔ってすっごい破壊力あるのな・・・

いかんいかん平常心平常心。

エンジンを始させ、出発する。

し走ってから、俺は気付いてしまった。

病院に向かって歩き出してから一本も煙草が吸えていないことに。

あっ駄目だ自覚したらすっごい吸いたくなった!

しかしここで吸うわけにはいかん。

ゾンビ以外の非喫煙者への喫煙ダメ!絶対!!

我慢しろぉ・・・我慢しろ俺ぇ・・・

「あの、吸っていただいても大丈夫ですよ?煙草。」

「えっなっ何のことですかな???」

「一等陸尉と話されていた時に、何度かポケットから出そうとされていたのを見ていますから。」

神崎さんはおかしそうにクスリとほほ笑んだ。

・・・いや駄目だ・・・喫煙は駄目だ・・・

「私もし吸いますから、その気持ちはよくわかります。」

「アっそうですか!じゃあ遠慮なく!!吸われるのでしたらこちらに新品がありますので是非是非どうぞ!!」

聞くやいなや、ポケットから煙草を取り出し火を點ける。

同時に神崎さんへダッシュボードから取り出したライターと新品の1箱を渡した。

「あっありがとうございます・・・変わった銘柄ですね・・・」

目を丸くした神崎さんがけ取る。

で吸う人久しぶりに見たな。

まあ別に悪いことじゃないし何とも思わんが。

こんな狀況だもの、吸わなきゃやってられないわなあ。

あああ~おいしい煙おいしい~世界一おいしいよこれぇ~

1本吸いきると、ようやく落ち著いた。

「隨分とおいしそうに吸いますね・・・」

「おいしいですもん!ハハハ!」

俺は上機嫌になって、詩谷市に向かって車を走らせた。

なお、俺の大好きなマンドレイクは彼のお口には合わなかったようだ、ちくしょう。

かわいそうなので、以前コンビニで拝借したお気にり第2位のポピュラーな銘柄を渡しておいた。

はえ~人の喫煙姿すっごい絵になる・・・

事故らないように注意しながら運転した。

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