《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》23話 避難所大騒のこと

避難所大騒のこと

「たっ田中野さああああん!」

半泣きで走る雄鹿原さんの後ろには、セーラー服姿のゾンビ。

噓だろなんで避難所にゾンビが!?

あれだけ外壁を囲っておいてってくるのかよ!?

とりあえず、今はそんなこといってる場合じゃないか。

「まかせろ!」

「はあああああいっ!」

雄鹿原さんにんで前に出る。

は半泣きのまま俺の後ろへ走り抜ける。

木刀は車に置いてきてしまった。

は腰の日本刀しかない。

ゾンビ相手にこれを使うのか・・・。

兜割りなんかできないからどうしよう。

ゾンビって脈斬っても効くのかな?

おや、あれは・・・

よし、あれのほうがいいな。

俺はまずゾンビに重を乗せた前蹴りを叩き込んだ。

後ろに倒れるゾンビを見ながら、廊下の壁にダッシュ。

立てかけてある消火を手に取ると、よろよろと立ち上がりかけたゾンビに遠心力を乗せて橫から叩きつける。

ゾンビは顔をひしゃげさせながら吹き飛んでかなくなった。

よっし!質量兵萬歳!!

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やはりゾンビにはこれだな!

「雄鹿原さん!ゾンビは他にもいる!?」

「う、ウチが見たのはその人だけですぅ!」

俺の後ろに隠れながら雄鹿原さんが言う。

・・・他には悲鳴や怒聲は聞こえてこない。

とりあえず安心かな。

おや、そういえばこのゾンビ、この學校の制服著てるな。

「雄鹿原さん、あのゾンビ知り合い?」

「同じ部活・・・吹奏楽部の2年生です。前に噛まれてから隔離されてるって聞いてたんですけど・・・」

隔離ね、そういえば前に宮田さんが言ってたな。

安心したあ、外部からってきたわけじゃないのか。

・・・しかしそういうとこって管理が厳重なんじゃないの?

まあ、とりあえずトドメを刺してから考えよう。

俺は雄鹿原さんその場に殘し、消火を擔いで痙攣するゾンビへ歩き出した。

「ああああああああああああああああああああああああああ!!!」

急に廊下の端からまみれの男子生徒が飛び出してきた。

うおっ新手か!?

俺目掛けて突っ込んでくるそいつに、思わず消火を放り投げた。

「ぎぐっ!?」

狙いは適當だったが、床にはねた消火がいいじにそいつの間にヒット。

そいつは泡を吹いて失神した。

・・・失神?

あれっこれひょっとして・・・ゾンビじゃない?

やっべえどうしようこれ・・・

いやでも、まみれで喚いてるからゾンビにしか見えないじゃん・・・

無実・・・拙者は無実でござる・・・

「そこの人、大丈夫ですか!?・・・田中野さんでしたか。」

不幸な男子生徒と同じ方向から、宮田さんと神崎さんが走ってきた。

「俺もこの子も大丈夫ですよ。・・・宮田さん、このゾンビはどこからってきたんです?」

「・・・隔離していたものです。」

やはりそうか。

さっき雄鹿原さんも言ってたもんな。

「逃げたんですか?」

「いえ、そこに倒れている男子生徒がその、逃がしてしまって・・・」

「は?」

「どうやら人だったようで、監視の目が緩んだすきに鍵を破壊して・・・」

「はあ?」

「二人で逃げるつもりだったようですが、既に彼がゾンビになっていた・・・ということらしいです。」

「はああああああああ?」

「お気持ちは大変よくわかりますよ、田中野さん。」

「私もまったく同じ気持ちです、田中野さん。」

理解できない。

いや、理解はできるけど理解したくない。

普通に考えたら無理筋すぎだろう!?

ゾンビに噛まれたら治るわけないし、逃げたところで人に味しく頂かれるのがオチだろう!?

そんな考えで避難所全を危険に曬したのか!?

えっなにこいつ宇宙人か何か!?

は盲目・・・と言いますが、いっそ一生盲目のままでいてしいところですね。楽ですから。」

なんか神崎さんがすごいこと言ってる!?

だが俺も同です!!

「う、うぅ・・・」

あ、アホが目を覚ました。

よかった、間のミスティックボールは無事だったようだな。

微塵も後悔してないけど。

「・・・!ミサキいいいいいい!!!」

目覚めたアホが突如として、床で痙攣するゾンビに突撃しようとする。

宮田さんがそいつの首っこを摑んで持ち上げ、止める。

・・・ヒエェ、片手で人間持ち上げたぞ。

とんでもない筋量だなあ。

「はなっ離せ!ミサキが!ミサキがあ!?」

「おとなしくしなさい!彼は以前の彼ではありません!」

アホが空中でジタバタ暴れる。

用だなコイツ。

首絞まってるのに。

そのまま失神しちまえばいいのに。

「おまっ!お前ぇ!!!」

うわ、こっち見た。

「よくもミサキをっ!!!」

「だってゾンビじゃんお前の彼。」

「違う!ミサキはそn」

「だってゾンビじゃんお前の彼。」

「おまえn」

「だってゾンビじゃんお前の彼。」

「うるさい!!おm」

「だってゾンビじゃんお前の彼。」

「だっだまr」

「黙るのはてめえだ馬鹿野郎!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

もういい加減めんどくさくなってきたので、宮田さんに吊り下げられたアホの鳩尾に思いっきりパンチを叩き込んだ。

めでたく白目をむいてアホはもう一度失神する。

正拳効果!ヨシ!!

「警察としては褒めるわけにはいかない行為ですが、あの、助かりました。」

苦笑いしながら、宮田さんがアホを肩に擔ぐ。

猿轡を噛ませているので、こいつも噛まれたんだろうな。

「私個人としては拍手を送りたいと思います。腰のったいい正拳でした。」

なんか神崎さんがどんどん面白くなってないか!?

意外とノリがいいなこの人!

「ちなみにその人間によく似たアホはどうするんです?適當な所に捨ててきましょうか?」

川とか下水とか溜めとか。

「いえ、噛まれていますのでこちらで隔離します。今度は助け出すものもいないでしょうし。」

そいつはめでたしめでたしだ!。

今回の件で噛まれたのはアホ1人だけみたいだと聞いた。

それじゃあ実質ゼロ被害ですわ。

「あれ?そういえば森山さんは?」

いないので気になって聞いてみた。

「いや、実は・・・」

曰く、さっきのアホに突き飛ばされて頭を打って失神したので休んでいるとのことだった。

「鍛え方が足りませんね。」

辛辣な神崎さんのコメント。

おおう・・・哀れな男がまた1人・・・

なお、ゾンビは神崎さんがそれはもう見事な足刀蹴りで首を叩き折ることで処理した。

ほえー、脳天以外にも弱點あるのか・・・すごいなあ。

「私より、むしろ毎回頭を叩き潰している田中野さんのメンタルが凄いというか・・・」

心に蓋をしてるし楽だもん!

とりあえず、宮田さんに由紀子ちゃんとおばさんがたまに無事を確認しあうことを許してもらった。

自衛隊サイドの神崎さんにも快く了承をしていただけた。

「あの方にはみんないろいろとお世話になりましたので。その娘さんのことなら問題ありません。」

おばさんは向こうでも大層な人気者らしかった。

まあ

・仕事ができる。

・優しい。

・思いやりもある。

という完璧超人だもんな。

からマイナスイオンでも放出してるのかもしれない。

・・・なるほどこれが人徳というやつか。

俺からは逆立ちしても出てない貴重な質ですぞ。

しっかしなんでオッサンと結婚したんだろうか・・・

いわゆるだめんず好きというやつだろうか?

伝的に由紀子ちゃんも変な男に引っかかりそうで怖い。

さっきのアレとか。

「あの・・・田中野さん!今回もありがとうございました!!」

あ、悪い男に引っかかりそうな子2號の雄鹿原さんだ。

この子も何かとゾンビに縁があるなあ。

「いえいえ、その後変わりはないかい?元気にしてる?」

「はい!あの後坂下さんと仲良くなって、々田中野さんのことを教えてもらいました!」

うそん。

ちょっとやめてくれないか俺の個人報で盛り上がるのは。

そんなに愉快な人生は送ってないんだけどなあ・・・

「そ、そっかあ、まあとにかく無事でよかったよ。あっそうだこれよかったら食べて。・・・コッソリね。」

「わぁ、ありがとうございますっ!」

なんか最近俺の子にチョコ配りまくってるな。

「田中野さん。」

「うおぅ!?」

気が付いたら後ろに神崎さんがいた。

ニンジャ!ニンジャだ!

「私はしばらくこの避難所に殘って病院との連絡を取り、連攜作戦の準備をします。」

「アッハイ。お気をつけて。」

「お1人なんですから田中野さんこそお気をつけて。それで、定期的に來ていただけると助かります。一等陸尉からなにか用事があるかもしれませんから。」

だろうなあ、自分で言うのもなんだけど俺結構便利だもんな。

まあいい、警察に自衛隊なんていうでかい後ろ盾があったほうがこの先何かと便利だし。

「あっ、もしよかったらチョコバーをどうz」

「ありがとうございます、いただきます。」

冗談のつもりで言ったら凄い食いついてきたよこの人!

こんなキリっとした人なのに、甘味の魔力は偉大である。

雄鹿原さんと神崎さんに別れを告げ、俺は避難所を後にした。

・・・探索に行くときはチョコ的なものをこまめに回収しておこうと心に決めながら、俺は煙草に火を點けた。

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