勝気系主人公のの子？が旅するお話です。

青空の下、どこまでも続く荒野。

アクセントに時折の緑があるが、その多くがわずかなだ。

生きが暮らすには、々厳しい世界。

そんな中を、私は相棒と共にトラックで駆け抜ける。

「センサー範囲拡大。右前方、何かある気がする」

「広域スキャン開始……遠方に砂嵐の兆候を確認。レーテ、人の方が早いとか、どうなってるんですか？」

閉め切った車に響くのは、私の聲と、やや不満そうな別のの聲。

運転席には私、助手席には相棒。

席の役目から言えば、知を早くするのは…まあ、助手席の役目ではある。

「もう何年も一緒なんだもの、慣れて」

「はいはい。そういうことにしておきますよ」

呆れた様子の相棒の聲に、苦笑しながらもハンドルは握ったまま。

私にとって、たまたま過去の記憶と一致しただけに過ぎないのだから。

自分たち以外にくが見えない荒野、そこを走るトラック。

そんな場所を、二人でひた走る。

まるで、いつかみた映畫の景のようと思うけれども、名前が思い出せない。

車の揺れに、視界にかかる髪を払いつつ、前を見る。

今はまだ天気もいいけど、このじは……マズイ。

「それより、近くに巖場とかない？」

「えっと……ありますよ、10キロ先。ちょうどよさそうですね」

普段は何もじない障害、でも今は重要。

場合によって、集落を飲み込むような砂嵐からを隠すには。

アクセルを踏み込むと、ぐんと加速するトラック。

にじるGに、自然と笑みが浮かんだ気がした。

宣言通りに見えて來た巖場にトラックを寄せ、ドアをし開く。

途端、荒野獨特の空気が飛び込んでくる。

「うん。匂いが違うわね。カタリナはどう？」

「私は生じゃありませんからー。フィールド展開しますよー、中にってくださーい」

棒読みな臺詞に肩をあげ、ドアを閉めてロック。

そのまま、荷臺とを區切っている背板も倒す。

どうせ、しばらくは中に閉じ込められるのだ。

「前の砂嵐は、ひどかったですねえ…」

「ええ、清掃だけでも結構時間がかかったものね」

語り合う相手、カタリナはと言っていい。

肘ぐらいまである銀の髪を左右に三つ編みで流し、ゆらゆらと。

作業服の中には、私から見ても綺麗でグラマーだと思うが隠れているのだ。

どちらかというと、スレンダーな形の私からは、し羨ましいぐらいだ。

優しげな顔も相まって、優しいお姉さんといった印象だ。

そういう自分も、服裝はそう変わらない。

「ああ、ほら。窓を開けるから砂が混じってるじゃないですか。せっかくの金髪なのに」

「このぐらい、あとでなんとかなるわよ」

言いながら、カタリナにされるがまま。

髪を整えて男裝すると、別を迷わせることができるぐらいの容姿、それが私。

今のところ、そういう武を使う相手がいない現場なのだから、別にいいのだけど。

「狀況は？」

「防スクリーンに問題は無し。砂嵐はこの規模だと……1時間といったところでしょうか？　砂取りもせずに済みそうです」

（よかった……砂が噛むと面倒なのよね。デジカメだって……ああ、ったのいつかな）

こうして荒野を走るだけでも、いろんな場所に砂がり込む。

砂嵐の直撃をければ、下手にけばそれだけで終わりだ。

その対処をしなくてもいい、それが如何に特別なことかは、本人達がよくわかっている。

視界が茶く染まり、細かな風や砂の音が響き始めた車。

「じゃあしばらくは待機ね……なんだか、思い出しちゃうな」

「私たちが出會った時の事ですか？　七のダイヤを探す旅に出たいっていう」

無言でうなずき、もう何年も前のことに思いを飛ばす。

それは私、ライフレーテ・ロマブナンがこの世界に生まれ落ちた日のことだ。

私は……この世界に來るまでは別の世界の人間だった……はずだ。

直前までやっていたのは、ネットを介したゲーム。

確か、キャラメイクをするタイプのロボあり、歩兵戦ありのFPSもどき。

私がやっていたのは2作目で、1作目は文明が発展しきったSF世界での、ロボアクション。

そして、2作目はそんな世界が何かで崩壊した、終末世界を舞臺にしただ。

都市間の輸送を極めるもよし、抗爭にを投じるもよし。

そんなゲームを一通りプレイし、大やり盡くした。

新鮮さを求めアバターを1から作り直し、ロボの設定をしていたぐらいのところまでは覚えている。

引継ぎと初期武裝を決めるため、んな武を試し、ライフルを構えて狙いを定め……。

アップデートの知らせを無意識にタップし、気が付けば、私は見知らぬ場所にいた。

SFじみた救命ポットと呼べそうな中に、で。

寢起きのような頭には、記憶が浮かんできた。

けれど、それが本當の記憶なのか、刷り込まれたものなのかはわからない。

なぜなら、私が眠っていたであろうポットは、ゲームでは人造生命を管理するものだったからだ。

どうにか部屋の外に出た私を待っていたのは、裝備一式、真新しいトラック。

そして、まだカスタマイズ前のロボ1分のコア。

隨分リアルなアップデートだなと、その時は楽観的に考えていた。

でも、數時間もしないうちに何か違うと思い……。

この世界が、獣と人間、そして突然変異を経たミュータントが蠢く星だと知ったのだ。

「それで、乗って外に出たところで砂嵐に遭遇し、あの窟に逃げ込んできたんですね」

「ええ。そこで貴を見つけた。契約していなかった私には、渡りに船ってやつだったわね」

目を覚ました場所と似たような、周囲とは不釣り合いな施設。

その中に眠っていた機械人形、それがカタリナだった。

一見すると人間と変わらないような姿で、わずかに溫もある。

なくとも、金屬的な冷たさはない。

夢のような世界で、夢のような出會いを果たした私は、彼と旅に出た。

そこからは、混とあきらめ、そして新しい覚悟といったところ。

簡単に言えば、の子のであること、元の世界に帰れそうにないこと、この世界で生きること。

元々男だったかだったかも定かではない中、縋り付けそうなものは1つだけ。

願い事が葉うという、七のダイヤを目指すのは……未練なのかもね。

「出會った時は、右も左もわからなそうな様子だったのに」

「慣れた、いえ……長したってことよ」

最初は戸うばかりだった今のにも、もう違和はない。

どこか映像を見ているかのような記憶の私は…どうにも本に思えなかった。

だからこそ、今の私として生き殘ることを決めたあの日、私はライフレーテ・ロマブナンとなったのだ。

（キャラ名だけはしっかり覚えてるとか、謎よね）

「？　昔話はこれぐらいみたいですよ。砂嵐は収まって來ましたけど、救難信號です」

「移してる？　ううん、こっちに逃げて來てるじ？」

このトラックにも、簡易的なレーダーは積んである。

どちらかというと、ソナーみたいなものだけど。

そこには、距離はあるけど何かがじわじわ移してるのが映っている。

「大きさ的に、隊商か何かが砂嵐に遭遇、やり過ごしたけど何かに襲われてる、でしょうか」

「それであってると思う。カタリナ、いける？」

「レーテが行けと命じさえすれば、いつでも」

トラックに、2人きり。

推定人造人間の私と、機械のなカタリナ。

何度も繰り返したやり取り。

カタリナは、無言で告げるのだ。

自分は道で、私が主人だと。

「よしっ！　起準備！」

ただの遭難なら、トラックで乗り付ければいい。

でも、この世界にはそれでは危険な相手が、いる。

荷臺への連結部分をくぐるように通り過ぎ、荷臺にある其れへと向かう。

目指すはロマンと、ある種の伝統の塊。

四肢のある、人型機兵。

人でいうと脇腹付近にある搭乗口から中へ。

素早く、専用の椅子にを収め、作を始める。

「安全チェック、クリア。クリスタルジェネレータ起」

「計類起を確認。メインは……汎用でいきましょ」

計類の燈りだけだった場所が、明るくなる。

おぼろげになってきた記憶にある、ゲームやアニメ作品のコックピット。

そうとしか表現しようのない空間に、私はいた。

「ハッチオープン。いつでもどうぞ」

「了解。ブリリヤントハート、レーテ、出るよっ」

飛翔する視界、確かなＧの中、私は空を飛んでいた。