《崩壊世界で目覚めたら馴染みのあるロボを見つけたので、強気に生き抜こうと思います》JAD-006「生きるための力」
タンセの街は、降ってわいたような好景気にざわついていた。
その原因は、私たちにある。
「他にもあるかもって……実際にあったんじゃこうもなるわね」
「規模は、だいぶ小さかったみたいですけど」
お茶のおかわりを出してくれるカタリナに頷きつつ、目の前の男、カインを見る。
「壁パネル1枚でも、今じゃ再現に凄いお金がかかるばかり。複數チームで頭割りしても黒字さ」
「そんなものを、まだ隠し持ってる悪い商人さんは、何か用ですか?」
ここは彼の運営する會社のオフィスだ。
大量の殘骸と、倉庫跡から掘り出したちょっとしたブツの保管場所でもある。
表向きには、そうなっているということだけど。
「まさか、あれだけの完品が一度に手にるとはね。周囲の相場が崩れきってしまうよ」
「ええ、そうでしょうね」
し心配していたのは、捌ききってからでないと報酬が出せないと言われることだった。
けれど、彼は売りさばく予定の単価を示し、それでよければと先に支払ってくれたのだ。
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もちろん、ラストエイトのコアである寶石類は私が貰った。
拳ほどはありそうな、ペリドットのカット品だ。
大きさ的に天然石ではないだろうけど、十分な力がある。
「専屬契約を、と言いたいところだけど、君たちにはそれは通じないだろうなと思ってね。連絡を貰えれば、優先して買い取りに行くことと、補給の都合をつけるぐらいではどうかなと」
「お得意さまってことね。ええ、それでいいわ。場合によっては、すぐに別の土地に行くかもしれないし」
ビジネスライク、それでいい。
私はどこかにやとわれる気は今のところ、まったくないのだ。
しされ、なんていう男の関係も、今はどうかな。
カタリナと二人、荒野を駆けている方が気楽である。
カインと別れ、町中を歩きながらそんなことを考えていた。
「レーテ、甘味のお店がありますよ。そこそこしそうですけど」
「砂糖が近くで作られてるのかしらね? いいわ、食べて見ましょ」
まるで姉妹のように一緒にいるカタリナが……一緒にいて居心地がいい。
もし、もしも彼が人間になりたいと願うのなら、私は……。
「レーテ?」
「ううん。ちょっと町を見てただけ」
微笑みながら、合流。
お店で出していたのは、クレープのようなものだった。
文化が失われていないことに、妙なを覚えつつ、食べ歩き。
こんなことすら、出來ない人が確実にいることに、心のどこかが悲鳴を上げる。
「しばらくゆっくりしますか?」
「それもいいわね。貧乏暇なし、とは昔から言うけれど……」
今ぐらいなら、いいかな?とも思うのだった。
宿に帰る気分にもならず、2人で町を散策する。
見かけるのは今から出かけるだろうジュエリストや、ジュエルアーマードを持たない人々。
あるいは、畑に行くだろう人や、町中で仕事をする人等。
「平和って、大事よね」
「私が産まれたのは、大戦末期ですから……。あこがれです」
そっとカタリナの視線が伏せられる。
そういえば、ゲームでもそんな設定だ。
各地のライブラリで、大戦までの報は得ることができた。
この前の機も、その時に見たことがあるし、模擬戦相手にもいたのだ。
運用は間に合わなかったカタリナが、知らないことがあるのも無理はない。
「まあ、ほんのし、平和というには騒々しいけど、ね」
一歩間違えれば、どこの世紀末語だって狀況だけど、今は大丈夫。
人間は、確実に今を生きている。
「っと、マーケット?」
「みたいですね。お野菜も売ってますよ。雑貨もたくさん」
角を曲がると、騒がしさと共にたくさんの店が現れた。
薄れた記憶の、スーパーなんてない土地の市場の様だった。
元男と言っても、買いは嫌いじゃない。
むしろ、こういう場所は寶さがしみたいでワクワクすると思う。
「良いものあるかしら」
「見て回りましょう!」
同じく、テンションの上がったカタリナを引き連れて市場へ。
時折視線をじるけど、仕方のないことだ。
自分で言うのもなんだけど、小柄な2人なのだ。
ナンパの1つは寄ってくるし、嫌な視線もやっぱり、ある。
と言っても私はジュエリスト、腰には見てすぐわかるように銃も添えてある。
一通り見て回る頃には、周囲にもただの小娘じゃないことは、認識してもらったみたいだった。
と、そんなとき。店と店の隙間に、小さなござだけの場所を見つける。
店番も、小學生ぐらいの小さな男の子だ。
「レーテ、あれ」
「ええ。珍しい事じゃないのかもしれないけど……」
自分で磨いたのだろうか? 石英の塊や、ちょっと裝飾品にと思えるような石たち。
とはいえ、この世界ではまともなお金になることはないだろうと思えた。
石英は消耗品だし、裝飾品にお金を使うような余裕はあまりないだろう。
「見せてもらってもいい?」
「え? う、うん!」
そんなお店に、私は駆け寄っていた。
カタリナの呆れたような視線が背中に刺さった気がするけど、スルー。
私はこういうのを、放っておけないのだ。
「アナタ1人で?」
「そうだよ。父ちゃんはなかなか帰ってこないし、母ちゃんはちょっと……寢てるんだ」
店の前にしゃがみこみ、様子を窺えば暴力の跡はない。
となると、病気とかそういうのかな?
施しにならない程度に、何か買って……んん?
「ねえ、これ拾ったのはどこ?」
「。飯の種だよ」
それもそうである。
れっきとした寶石、まだ磨く前の原石だけど……十分使える。
こんなというと失禮だけど、小さな子が売るにはし心配なクラスだ。
「おいチビ。まだ店やってんのかよ」
渉のような話をしていた私たちを、邪魔する聲。
どこかの世紀末、とは言わないでも結構な格好だ。
「俺の勝手だろ!」
「そうもいかねえ。金は出來たか?」
男の言葉に、口ごもる年。
なるほど、そういう関係か。
(となれば、私は私の道を行く)
「それは……その」
「返す當てがあるのか?」
そうして男が告げた金額は、確かに普通には大金だ。
あくまでも、普通なら、だけどね。
「お兄さん、いいかしら」
「なんか用……おい」
差し出されたカード、支払いによく使う電子マネーがったカードだ。
紙幣の信用価値がなくなったこの世界じゃ、貨かこれがメイン。
発掘された舊文明の産を使っているらしく、各地で使われている。
あちこちの臨時政府やらも、同じ規格を使っているのが救いだ。
そして、そこに表示されている金額は……。
「気まぐれよ、構わないかしら?」
「俺は金がってくりゃなんでもいいよ。おい坊主、姉ちゃんに謝するんだな」
「え? ええ!?」
ヒラヒラと、マネーカードを見せながら去っていく男。
案外、そんなに悪い人じゃなかったかもしれない。
年に振り返れば、ようやく事態を飲み込んだみたいだった。
「お、俺」
「別に何かをしろっていうつもりは無いわ。気まぐれよ」
言いながら、気にしていた寶石の原石を摑み、にかざす。
うん、やっぱり天然だ。
「ねえ、アナタ。仕事する気はない?」
「またレーテの悪い癖が始まった……もう」
失禮なカタリナの聲をけ流しながら、年に話を持ち掛ける私。
カインも巻き込んで、一稼ぎしないかという……ちょっと悪いお話を。
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