「手ごろなサイズにカットしたい、と」

「ええ、そういうことになる」

翌日、役場の人間は怒ることなく面會に通してくれた。

一方的に就寢を宣言したのは私だけど、それでもよかったみたい。

世界が、星の文明が一度駄目になってしまったこの世界。

政府と呼べるようなものが各地に點在、ある意味有力者が好き勝手しているこの世界で、だ。

面會相手の男は、地域を治めるという點ではなかなか珍しい人のようだ。

「黙って私には、こういうものがって適當に言っておけばよかったんじゃないですか？」

「君は優秀なジュエリストだと認識しているのでね。何が出たかを知るか知らないかで悩むよりは……」

知らせて、引き込んだ方が話が早い、つまりはそういうことだ。

自の信用と実力が全てのJAM者、ジュエリスト。

名前を売るのは、生きるためであり、分証明でもある。

「よくわかりました。確かに、これはばれたらまずい。世界征服をたくらむのでなければ」

周囲には何人もの護衛、そしてその人らを含めた視線を集めるのが……テーブルの上にある。

念のために臺車で運ぶ、巨大なサファイアの原石、しかも適ありあり、だ。

離れていても、それがよくわかる。

なにせ、研磨する前からかなりの明度だ。

「しっかり研磨できるかどうかも怪しい上に、どこに狙われるかわかったものではない。だったら、使いやすい大きさ、數にして戦力増強としたいのだよ」

「適ありの石を加工できるのが、ジュエリストになれるっていうのは悩ましいですね。ではさっそく」

用意された工を使い、カット場所を見定めていく。

寶石側の、力に使えるかどうかの適は、専用の人と機材があれば簡単にわかる。

人が、機材と石を介して力を引き出せるかどうか、なのだ。

つまりは、それが出來る人は大なり小なりその重機を縦でき、高じればJAMも扱える。

その素質がある人は、案外なくない。

例えばそう、野盜のようにアウトローになるぐらいの數は、いるのだ。

「まずはこのぐらいに……」

記憶にある寶石の研磨、加工で考えるととんでもないことをしている自覚がある。

まるで、いフランスパンを切るかのように、原石を削っているのだ。

何度も刃をれ、結果として投石に使えそうなぐらいの石がたくさん出來上がる。

中を、JAMで寶石の力を引き出した時のような力が襲う。

目の前のお偉いさんが、私に加工を頼んだ理由がこれだ。

並のジュエリストでは、數回カットが限界じゃないだろうか？

「殘りはどのぐらいに？」

しは疲れたけど、まだまだいける。

そのことに、相手のお偉いさん……町長と護衛の人たちの驚きが見えた。

「お見事。では次にこのぐらいで……報酬分として1つ、優先で研磨とカットをさせよう」

「まいどあり」

結果、お手頃な大きさになるように切り分け、自分には小さくする前のを貰えることになった。

本當は早めに街を出る予定だったけど、カインの帰りもあるし、そんなものかな。

結局、それからは目立った出來事はなく、平和に過ごせた。

明日にはカインがタンセに帰る予定というところで、町長からは屆けだ。

深い青の、大きなサファイア。

「結果的には、大儲け、かしらね」

「予想外の鉱山でした。海も変していますから、地域報が當てになりませんけど……」

カタリナが言っているのは、別の星でもある地球の報だ。

大、こういう場所には寶石が眠っているのではないかという探索の當てになる。

もっとも、かつての大戦で環境が大きく変わったこの世界では、何とも言えない。

「なんにせよ、機の調整とトラックの整備、ね。いい仕事があるといいのだけど」

「レーテなら何でもできますよ。篭絡以外」

「ちょっと、そういう言い方はさあ！」

確かに、私はそういった経験はないから、篭絡は出來ない。

単純に仲良くなる以外で、男と手がれるのも出來れば遠慮したいのだ。

大丈夫なのは、それこそカタリナの義だとか、本當の相手で……。

「……稼ぎがあれば、義も買えるものね。買い換えたら、覚悟しなさいよ」

「私なんかでいいんですか？」

からかいの聲から一転、しおらしい聲になるカタリナ。

そんな彼に、アナタだからいいのよ、なんて私は言うのだ。

ししんみりしてしまい、どう切り替えたものかというところで、何かをじた。

「探査開始」

「え？　あ、はい！　広域探査開始……し先に、獣の集団が？」

脅威かというと難しいけれど、し先で狼型の集団が走っているようだ。

このままだとかち合う……まあ、散らすか。

「こちらラストピース。前方に獣の集団を確認、先行して散らす」

『了解。よろしく頼む』

JAMにとってはなんでもない獣でも、生やトラック程度だと萬一がある。

速度を上げ、トラック集団から距離を取ったところでカメラでも狼たちを確認した。

「せっかくだし、サファイアの実戦ね。貴石変換開始」

「変換開始……出力安定、どうぞ」

ストックのサファイアより、かなり増した出力に微笑みつつ、銃口を狼たちのすぐ橫に向ける。

當たればカッチン、氷像の出來上がりな線銃だ。

「威嚇で逃げてよね……シュート！」

青いが、の元でり輝く。

それは狙い通りに狼たちのそばに著弾、驚いた狼たちが山の方に去っていく。

「やっぱり実弾より、コストがないのがいいわよね」

「それが出來るのはレーテぐらいですよ。普通は、すぐ疲れてしまうんですから」

そんなものかな？と思いつつ、カインに合流、無事にタンセにたどり著くのだった。