「道がないから、揺れますね」

「まあね……かといって、まっすぐなぎ倒しながらってわけにも、ね」

メテオブレイカーから旅立ってしばらく。

人の気配がない自然の中を、ひた走る。

幸いにも、この辺りはあまり木々が濃くないようで、どうにか進めている。

どうにもとなれば、ブリリヤントハートでなぎ倒すことも考える必要はある。

（騒がしいし、々引き寄せるから回避したいところではあるけれど）

「衛星からの報によれば、もうすぐ集落らしきものがあるはずですけど……」

「開けていて、人工があるらしい、というものよね。カメラの能劣化で、詳細にはわからないらしいけど」

記憶にあるような、外でノートに書いた文字を読める、なんて度はもう殘っていないのだ。

それでも、まだ生き殘っているだけ、上等だ。

通信としても、かろうじて人類が連絡を取り合うことを可能としているのだから。

「それにしても、どうしてメテオブレイカーは地上にいるんでしょう。宇宙のほうがいいのでは？」

「當時のことはわからないけど、一つ言えるのは……人間は、見えないものはいつまでも怖くて、疑うということね」

「怖くて、疑うですか？」

「ええ、幽霊って考え方は知ってるわよね？　いるかもしれない、いないかもしれない、そんな存在に人間は際限なく恐怖を抱いてしまうのよ。宇宙という、データ上はわかるけど実際には目に見えない、手が屆かない場所に、あんな兵が浮いている……果たしてあれは、本當に大丈夫な存在なんだろうか？」

事を分かっているほど、もし誰かに悪用されたらという事態を考える。

事が分からないほど、本當にそのためのものなのか、疑い始める。

だから、目に見える、手が屆く場所に降ろしてしまった。

「地上なら、何かあった時に誰かがどうにかできる、そう考えたんじゃないかしら。案外、隕石砕きは完全に建前だったのかもね。本當は、どさくさに紛れて戦爭でも仕掛ける気だったのかも」

「ところが、実際に隕石を砕く実績ができてしまった……と？」

「わざわざ、星の自転や公転周期を衛星報とリンクして狙撃をするなんて、ひたすらめんどくさい機能がついてるのも、後付けなんじゃないかしら？　本當なら、星の周囲に何機か浮かせるだけでいいのだから」

メテオブレイカー曰く、同型機は後々、ぎりぎり二桁範囲で生産され、星中に配備されたのだという。

殘っているのは、數えるだけらしいけど……まだ殘っているのかという驚きもある。

「よくわかりません。どうして人はそうまでして互いに……」

「それが人間ってものかもね。悲しいけど……っと、もうすぐかしら」

なんとなく、周囲の景も変わってきた。

手つかずから、何かが通ることがあるじ、といえばわかるだろうか？

速度を落とし、トラックをややゆっくり目に進める。

林を抜け、小高い丘を登る。

「町、ですかね？」

「そうね。人間って、本當にしぶといわ」

急ごしらえにしかみえない壁、あちこちに見える見張り臺。

それらがすべて、この場所で危険が多いこと、最前線だとうかがわせる。

「無線を飛ばすわ。フリーのジュエリストが、偶然やってきたことを」

「了解です。っと、向こうからコンタクト。つなぎます」

『あーあー、聞こえるか？　敵意がないなら、一度止まってほしい』

聞こえてきたのは、渋い聲。

嫌なじということではなく、年を取った聲という意味だ。

「わかったわ。一応、JAMを積んでるわ。橫にしてるけど」

『だろうな。ジュエリストを騙る奴は時々いるが、車だけでくにはきつい場所だ。よし、いいぞ。そのまま導通りに來てくれ』

「あのってる方ですかね？」

うなずき、トラックの向きを変えて進む。

１つ１つのきに、無線の向こうから視線が突き刺さっているような気がした。

この警戒は、覚えがある。

ゲームの世界で、だが。

記憶にあるゲームでも、こうしたイベントはいくつもあった。

プレイヤーが介しないと、壊滅する開拓団。

逆に、介することで新たな補給拠點として栄えていくのだ。

「さて……何が出るのかしらね」

張した空気をじつつ、久しぶりの會話にを躍らせるのだった。