「異常なし……襲撃もなし、と」

「本當に人が住んでないんですね。獣と、時折のミュータントらしき相手ぐらいですよ」

町を出てしばらく。

森を迂回するように平地を進むが、平和だ。

もちろん、問題のないようにと回避してるせいもある。

そんな中でも、厄介そうな相手はいないわけじゃあない。

「あんなんがいたんじゃ、そうそうは住めないわね」

「確かに……あれも石、星の力でを支えてるんでしょうか」

もう距離が離れてるけど、森との境目にいた相手を思い出す。

それは、大蛇……文字通りの、大蛇だ。

作りのように大きな、丸太より太く、JAMに匹敵する長さの相手だった。

普通に考えると、自重が支えられないだろうし、食料の問題もある。

一番の問題は、生きているということは同じようなのが何もいるという可能。

「それはわからないけど、野営で外で寢るのはやめましょうね」

「はい……丸飲みは、し」

ぞっとしないことを想像しつつ、先へ進む。

巖が転がってるということはないけれど、時折殘骸のようなものが。

年月が経ち、風化してしまった……文明の跡。

「あれは、建かしら？」

「おそらくは？　全部植で覆われてますね」

見えてくるのは、周りの森より一際突き出た緑の塊たち。

近づくとよくわかるその姿は、崩壊前に植に覆われたビル群のようだ。

今も、かつての文明は形を殘している。

そのことが、なんだかうれしくもあり、悲しくもある。

「何も回収できるものはなさそうね……行きましょ」

「記録によれば、あの山のふもとあたりのはずです」

今、目指しているのは私とカタリナの出會った場所。

わけのわからないままJAMを起させ、トラックも見つけて……。

この世界がどんな場所か、実がわいてきたころに出會った。

「懐かしの我が家……でいいのかしら？」

「家ってじはしなかったですね……どちらかというと……」

棺桶、そうカタリナは小さくつぶやいた。

聞こえてしまった私も、わずかにきを止めつつ、苦笑する。

自分自、似たようなものだったなと思いだしたのだ。

私も、よくわからないカプセルめいたものの中で目が覚めたのだ。

「無事なら、何か使えるものはあると思うわ」

「それは確かに。資もしぐらいあるといいんですが」

あの時は、正直慌てていたからろくに探索もしていない。

カタリナを目覚めさせ、連れ出すだけで一杯だったのだ。

「仮にも、文明崩壊前後の技でしょうし……そこの茂みに車止めて」

「何かいました……空？」

機銃を作するサンルーフ側へとを乗り出し、空を眺める。

ちょうど、こちらは木々に隠れている狀態だ。

耳を澄ませ、集中……來る。

「あれは……ドラゴン？」

「空飛ぶ奴、あちこちにいるのかしらね」

空想の産そのもののような生き、ドラゴン。

この間戦った相手は、なかなかに頭がよかった。

大蛇の時も思ったが、生きとして絶滅していないのなら、繁しているということ。

（案外、生兵として作り出したのが野生化したままとか？）

人をいじりまくるような倫理観の時代がかつてはあったのだ。

なら、をあれこれするのに躊躇するはずもない。

例えばそう、たくさん子供を産む家畜、とかね。

絶滅した生きを、余分なものを加えてよみがえらせるぐらいするだろう。

「変に見つかっても面倒だし、警戒はしておきましょう」

全力疾走、はやめて進むことさらに數日。

ようやく、目的の山が近づいてきた。

「なんだか、懐かしい気がします」

「人の手がってないから、結構変わってるとは思うんだけどね」

言いながらも、自分も実はそうじていた。

興したまま旅立っていたから、どこか記憶にこびりついているのかもしれない。

木々が薄くなり、地面の雑草も減ってくる。

森や平地から、山に変化してきたのだ。

「レーテ！」

「ああ、それっぽいわね……」

山のふもと、し進んだところにこぶがあった。

山に、大きな大きなボールがめり込んだような巖。

こうしてみるとよくわかる。

あれが、カタリナの眠っていた昔の施設、その建だと。