《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》04 薬師ギルドの

冒険者のエピクです。

いや元冒険者エピクか。

そしてもう冒険者でもないのに薬草採取のフィールドに無斷で足を踏みれている。

そして出會ったのが目の前のだった。

モンスターに襲われていて危ないところだった。『軽はずみなことをしてはいけませんよ』と注意したら逆にメチャクチャ怒られた。

どういうこと?

詳しい事を聞いていくうちに、彼の怒りが正當なものであるとわかった。

の名はスェルという。

若輩ながらも薬師協會に所屬し、日々病気や怪我に効くお薬を作製しているとのこと。

そんな薬師の彼が何故、街から出て危険な森の中にいるのか?

「ギルドが薬草採取クエストをけなくなった? 何で?」

「そんなのこっちが聞きたいわよッ!」

問うたらキレ返された。

ちょっぴり理不盡に思う。

「……ある日突然一方的に『薬草採取クエストはもうけない』って言われて。それどころか発注済みのクエストすら履行されないんです。薬草が屆かないと薬が作れない!!」

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薬なんて、必要な人は毎日飲まなければいけない。

一日でも欠ければ命に係わるシロモノだ。

それがなくなるとなれば……、慌てもするだろう。

「……スェルさんでしたよね?」

「はい……!」

「スェルさんは、自分で薬草を摘むために森にったんですね?」

報を総合したら、そうとしか思いつかなかった。

冒険者ギルドが納めなくなった薬草を自分の手で。そうしなければ健康を崩し、命を失う人がいるかもしれない。

だから自分の安全も顧みず。

「あの……、すみませんでした」

落ち著きを取り戻したのか、薬師の誠実なは言う。

「見ず知らずの人にいうことじゃありませんよね? 命を助けてもらったんだから最初に言うのはお禮なのに……本當に……」

「まことに申し訳ありませんでした」

「ええぇえッ!?」

土下座する僕を目の當たりにして、驚く。

「なんで!? なんでそこで土下座!?」

「そのトラブルの原因は恐らく僕です。僕はエピク、元冒険者です」

冒険者ギルド在籍時、僕以外に薬草採取クエをける人がいないのはわかっていた。

皆地味だからって嫌がるんだ。

在籍中はクエストを取られる心配はないのでむしろ喜んでいたのだが、大局的には悪いことだと今さらながらに気づいた。

「薬師協會さんが発注していた薬草採取クエは、ほとんど僕一人でけていました」

いや『ほとんど』ではない。

『完全に』だ。

「ですが昨日、冒険者ギルドをクビになってしまいまして」

「クビ!?」

「それで他に薬草を取りに行く人がいないんだと思います。だからクエスト自けないことに……!?」

『なんでそんなことになるの?』という疑問が心の底から湧いてくるが。

人材が欠如しているにしても々やりようはあると思う。

それを無視してクエスト自をなくし、街への様々な薬の供給をストップさせたらその責任はすべて冒険者ギルドに雪崩れ込む。

下手をしたら街全を敵に回しかねない。

いや、それだけに飽き足らず薬が供給されるか否かは冒険者ギルドにとっても大問題じゃないのか?

冒険者の必需品と言っていいポーションは薬師さんたちが作っているんだ。

このトラブルで薬師さんがポーションを売らなくなったら、冒険できなくなってしまう。

「……あ、アナタが薬草を集めてくれてたんですか? それで今日もこの森に?」

「いや……!? それは一概に肯定も否定もできず……!?」

クエストもけられないのに習慣で採取していましたなんて言っても混させるだけだろうな。

「そ、そうだ! これ、今日集めた薬草です!!」

採取袋を腹八分程度に満たした薬草を手渡す。

「差し上げますので、どうかお納めください!!」

「ええッ!? そんなッ!?」

薬師のの子、數秒間の逡巡はあったが恐る恐る手をばし……そしてけ取る。

を確認する。

「ほ、本當に薬草だぁ……!? しかもこんなに狀態のいい……、摘み取り方も完璧だし……! いつも組合に屆けられていた薬草そのもの……!?」

「あの……、これでなんとかなりますでしょうか……!?」

「アナタは神です! 救いの神です!! ありがとうぅうううッッ!?」

「うごほぉおおおおッッ!?」

から奇襲気味に飛びかかられたのでビビった。

しかし真意は飛びかかったのではなく、抱き著いてきたのだ。

謝の表れだろうが、という割にはつきは完の域に達していて、らかいところが押し付けられて辛い。

「いえ……ッ!? いえ……むしろ冒険者ギルドの罪滅ぼしのようなものですから、お禮を言われるのは心苦しいというか……!?」

「でも冒険者ギルドはクビになったんですよね?」

「ハイ……!?」

改めて言われると事実が突き刺さって泣きたくなってきた。

そう、今の僕はギルドとは何の関わりもありません。

「エピクさん……! エピクさん、エピクさんですよね! 名前覚えました!!」

「そんなにしつこく刻み込まなくても……!?」

逆に覚えられてヤベェって気がしてきた。

「いいえ、人からの恩は決して忘れるな、恨みも忘れるなと母から教わりましたので! 恩人の名前も忘れてはいけません!!」

前半はともかく、教えの後半部分が怖い。

「……あッ、でも……!?」

輝いていたの表は何故か一瞬で曇る。

採取袋の中を覗いて。

どうした?

「足りない種類があります」

そうか。

薬草と一口に言っても様々な種類があるもんな。

僕もクエスト中は○○の薬草、××の薬草と複數の種類を指定されたのを思い出した。

「足りないのはもしかして……紫霧草?」

「そ、そうです、よくわかりましたね!?」

そういやあの草だけ摘んでないなあ、というのを思い出した。

紫霧草は、クエストには『確保最優先』とか但し書きされていたからよく覚えている。

しかも紫霧草は、採取場となる森の一番奧深くに自生しているから取りに行くのも一苦労なんだよな。

森の奧に行くほど強力なモンスターもうろついてるし。

「ダメです、紫霧草がないと街に戻れません。あの草は、心臓の薬の材料になるんです」

「なんと」

クエスト目標の素材としては知っているが、どんな効能があるのかまでは知らなかった。

「なら、ソイツを採らずに帰ることはできないな。僕が一っ走りいってこよう」

「えッ!? そこまでしてもらうのは……ッ!?」

僕がギルドを追放されなければ普通に納められていたものなのだから、その埋め合わせはさせていただきたい。

それでなくても、この子今にも『自分で採りに行きます!!』と言わんばかりだからな。

それだけはやめてほしい。

「紫霧草は、本當に魔の森の奧深くに生えてるんだ……! あまりに奧すぎて魔の山の山裾にるかって微妙なところ……!」

「あの兇悪な魔獣が住むという、魔の山……!?」

「そうそう」

基本的に森の奧へと行き、魔の山に近づくほど生息する魔は強力となる。

今さっき彼を襲ったディスイグァナなど、あの界隈では食連鎖の最下層。誰にとっても味しいごはんに過ぎない。

「そんな魔境に生えているからこそ紫霧草は貴重なんですね……! 高値になるのも頷けます……!?」

「うぬ?」

「はい?」

値段? まあいいや?

今問題にしているのは目的地の危険度なので、カタギのお嬢さんを一人行かせられるわけがない。

ここは僕がパッと行ってパッと摘んでくるので、お嬢さんは街で待っていてくれまいか?

「あの……、よければ私も連れて行ってくれませんか?」

ともいかなかった。

「ただでさえ薬草の納が遅れて、薬師の皆は困ってるんです。しでも早く持ち帰りたい」

たしかに一旦分かれるにしても、いたいけなを森の中一人にしてはまたモンスターに襲われかねない。

一度彼を護衛して街に戻り、そこから紫霧草求めて森にり直して……となるとけっこうな時間をロスするだろう。

遅めに活する冒険者たちと鉢合わせるかも。

追放されたでそれも嫌だなあ。

「それに私も薬師の端くれとして、幻と言われた紫霧草がどんなふうに生えているか見てみたいんです!」

「それが本音?」

ともかくも迷っている時間も惜しい。

こうなったら彼を守りつつ森の奧まで突き進み、目標を速やかに採取、からのとんぼ返り。

やってやろうじゃないか!

「よろしくお願いします! でもエピクさんって魔の森を自由にき回れて、よっぽど強い冒険者さんなんですね!? もしかしてA級とか、S級なんですか!?」

「いいえ、ただのF級ですよ」

「えッ!?」

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