《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》28 魔の山へ

そして急いでやって來た。

魔の山。

魔の……森ではなく、山。

魔の森のさらに奧深くへ分けり、絶対に越えてはいけないという境界を越えた先の領域。

僕らの住む街では斷の地とされ、たとえ冒険者であっても踏み込んではダメ。

そんなところに僕は今訪問しております。

僕は許可とったけどね!

「一刻も早くガツィーブを見つけ出さないと……!?」

僕がここへ來た目的は、先んじて魔の山に侵した冒険者ガツィーブに追いついて、捕まえること。

ヤツがこの魔の山に住む『主』というのにケンカ売ったら大変なことになるらしい。

その主の怒りを買って、落とし前に街丸ごと滅ぼされるとか。

恐ろしい連帯責任。

だからそうなる前にガツィーブを止めるか、間に合わなかったら僕が代表して全力謝罪し事なきを得るのがいいと思う。

下っ端人生十年以上。謝ることには自信がある。

「街のためにも頑張りましょうねエピクさん!!」

「なんでスェルまでいるの?」

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今さら聞くのもなんだけど。

いや、街から出発する時スェルから言い出したんだよね『私も行きます!!』って。『何かお役に立てることがあるかも』って。

それ自はスェルのいつもの獻的行為なんで、それでもどうなるかわからない今回は丁重にお斷りしようとしたんだが、そう言う前に薬師協會長さんにOK出されてしまった。

保護者から許可もらえたら行くしかない。

薬師協會長さんも正気を疑うような対応だったが、たしかこんなことも言っていた。

『スェルが同行すれば事態が好転するかもしれない』と。

協會長さんには協會長さんで考えることがあるのだろう。

その証拠にA級冒険者リザベータさんも『一緒に行くわ!』と便乗しようとしたが、そっちは斷固として阻止された。

なので現在、魔の山領域を進むのは僕とスェルの二人のみ。

初めてるエリアなので警戒は充分していたものの、思ったよりサクサク進む。

「まあ実際に進みやすいからなあ」

魔の山って、名前だけにおどろおどろしい険しいところを想像してたんだけど、実際に登ってみたらビックリするぐらい清浄だった。

山だけあって空気は澄んでいるし、生い茂っている草木も瑞々しい。あッ、あんなところに野の花が。

小鳥のさえずりが聞こえてきた。

「なんかのどかですねえ、ピクニックしている気分です」

「本當はただ歩いているだけでも命に係わる魔境なんだけどねえ……」

ついさっきも襲われたらまず全滅間違いなし(スキル不使用で)と思えそうな巨大モンスターとすれ違った。

ソイツはこっちの存在に気づいていたけど、一瞥しただけでを伏せ、自分から遠ざかっていった。

このヘビの抜け殻のおなんだろうかなあ……。

魔の山の主へ拝謁するのに必要な通行証だとか言っていたけど、本當に凄いものだ。

魔の森を通過した時ですら一回もモンスターに襲われなかった。

襲われたとしても『消滅』スキルを使えば切り抜けられたんだろうけれど、それでも手間はかかるし、スキルを使えば消費もする。

急いでいる時には本當助かる。

「問題は……ガツィーブもこれを持っているってことなんだよな」

本當なら、ガツィーブの実力を考えれば魔の山まで到達するのなんて不可能だ。

絶対途中で食われて死ぬ。

だから主の下へ到達するなんてとても無理だろーと安心したいんだが、この抜け殻があればたとえ一般人でも到達できてしまう。

だからこんなに慌てているんだ。

「主の下に行っちゃう前になんとか捕まえられたらいいんだけど……!?」

「エピクさんここじゃないですか、主の住んでいるところって」

到著してしまった……!?

そこに來てまでガツィーブを発見できなかったということはもう既に……!?

いや! そうとは限らない!

主の棲み処というのもスェルからの報告で、もしかしたら彼の勘違いということもあり得るじゃないか!!

「どうしてここが主の棲み処だと思うんだい!?」

「だってお城ですから」

ホントだ……!?

山の頂上と思しき最高に見晴らしのいい地點に、いかにも豪華なお城が建っている。

「こんな辺鄙なところに城……!?」

生まれ育った街以外を知らない僕には比較対象がないが、これ王様が住んでそうな立派なお城だよ。

これ絶対住んでいる。

ボス的な存在が絶対住んでいる……!?

ここまで大仰な佇まいで中にいるのが普通の人とか考えられない!?

「とりあえずってみようか……?」

「ですねー」

ここまで來といて挨拶なしに済ませるわけにもいかない。

僕は意を決し、大聲を上げてみた。

「ごめんくださーい! どなたかいらっしゃいませんかー!!」

挨拶、大事。

黙ってれば侵者確定だが、とりあえず訪問の意志を示しておけばあとでいくらでもいいわけがつく。

……。

……で。

「返事がありませんね」

「では仕方ない、中にって探索してみるか」

応えてくれなかったんならしゃーない。

様子は窺ったんだから無斷でったことにはならないよね、ね?

『待つがよい』

「うわぁッ!? 時間差で來た!?」

ろうとしたところで出てくるとは卑怯な!?

お城の上の方から舞い降りてくる純白の翼。両翼の中心にあるのは四本足の逞しい馬

……あれ?

「ペガサスじゃないか?」

『思ってもみぬところで會うな。いずれは恩返しのために出向くつもりだったのにそちらから來たか』

この見覚えのある有翼白馬はペガサス。

いつぞや森で出會い、怪我しているところを助けてやった。

「わーペガサスさん、また會えた!!」

『これはスェルよ! 今日も変わらずしいな! また會えて私も嬉しい!!』

そして恐らく変態。

ここでペガサスと會えたってことは……!?

「ひょっとしてペガサスが魔の山の主なの!?」

そうだったら話は早い!

ペガサスとは初対面でないだけに気安さもあるし、何より恩があるから話も運びやすい!!

『いや違うが』

そんな僕の甘い考えが砕された。

『私は、この霊山の支配者にお仕えしている。お前たちが山の主を訪ねてきたのなら、主はこの城の奧で待っておられる。って拝謁を賜るがいい』

ペガサスって聖獣って言われてなかったっけ?

聖獣を従えているって、魔の山の主って益々とんでもない存在なのでは?

「あの……、山の主が“待ってる”というのは……!?」

『用件は予想できているからな。どうせ先にやって來た狼藉者に関してだろう?』

ペガサス、城でもかまわずパッカパッカと蹄を鳴らす。

それを気にする余裕もなく、僕はペガサスの告げた事実に直した。

「狼藉者……!?」

『主が預けたの一部を使い、ここまで侵を果たし主のお命まで狙ってきた慮外者。お前たちはその申し開きに來たのではないか? 我が主は慈悲深いからな。滅ぼすにしても言い訳を聞いてからだと仰られている』

ガツィーブ、既に到達していた……!?

何でこういう時だけ迅速なんだ?

もう僕たちの街は終わった……! いや、何とか平謝りして、それでもダメなら命に代えても止めてみせる。

「あの……主さん怒ってるんですか?」

不安げに尋ねるのは一緒に城を進むスェル。

「もしそうなら私も一緒に謝りますんで、せめて街の人たちは無事なようにしてくれませんか? ペガサスさんならとりなしてもらえます?」

『うむ……お前たちには命を救われた恩があるからな、出來る限り協力しよう』

やっぱり変態だった。

『しかしあまり期待してくれるなよ。私ごときが主の意思を変えるなど至難の業。主は私より遙かに高位の存在。あの方が滅ぼすと決めれば、それを覆すのは竜を打ち倒すより難しいことよ』

聖獣であるペガサスですらそんなに投げやりになる相手って……。

どんな怪

『そろそろ謁見の間だ。慈悲を乞うならゆめゆめ失禮のないように』

回廊の突き當りにある、大きな扉がギギギと開く。

そしてペガサスが恭しく言う。

『偉大なる我が主メドゥーサ様、客人を連れてまいりました』

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