《視えるのに祓えない、九條尚久の心霊調査事務所》その人の笑った顔を
その瞬間、頬に鋭い痛みが走った。
痛みまみれのこのだけれど、頬の覚だけはどこか特に鮮明にじた。
ふいに真正面に、人の顔が映る。涙でボヤけてしまっているが、それは紛れもなくあの綺麗な顔の人だった。
「……九條、さん……?」
眉を潛めた九條さんだった。彼ははあーと大きなため息をつき、一度目を閉じた。
あれ、九條さん、ってこれは夢なんだっけ、妄想?
混して目をまん丸にした私を、彼は困ったように見下げた。
「気をつけてと言ったでしょう。ガッツリられましたね?」
「……え」
九條さんの言葉を聞いて、一気に冷靜になった。
られた、の?
でも今まで見た中でも圧倒的に怖くて現実味があった。こっちのことを夢だと思い込ませるほどに。
「九條さんは……ちゃんと存在してますか?」
「はい?」
「わた、私の夢とか妄想……?」
震える手を自分の頬に置いた。ちゃんとかせる私の手だ。頬には涙の痕がベッタリとついていた。
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「これはまた相當な力でられましたね……現実と見せられた映像の區別がつかなくなるくらいに」
彼はそう言うと、白い服の袖で私の顔をし暴に拭いた。目元の水分が取られて九條さんの顔がしっかりと見える。
「いいですか。私はちゃんと存在した人間です。あなたは死んでもないし生きてます」
「………」
「落ち著いて。冷靜になれば分かります」
抑揚のない聲が私に安堵をもたらした。すうっと頭が冷えてくる。
そう、そうか、またられたんだ。
ここから810に連れ出した九條さんすらニセモノだった。
そしてあの験は……
せっかく九條さんが拭き取ってくれたというのに、私の目からはまたしても滝のように涙が溢れた。やや困ったように、彼はしだけ目を細める。
「凄く……怖かったんです、こんなの初めてってくらい……」
「はい」
「でも何より……私に『った』人は、生前こんな辛い思いをしていたんだと思うと悲しい……可哀想でならない。孤獨で痛くて、あんなのが続いたら狂います……」
拷問だと思った。
ほんのしの時間でもあれほど辛かったのに、毎日経験していたなんて可哀想すぎる。
なんて哀れなんだろう。悲しい人なんだろう。私はその人に、何かしてあげられるのだろうか。
しゃくりあげて泣く私を九條さんは何も言わずじっと眺めていた。める事も、勵ます事もしなかった。その見守る優しさがまた、私の涙をう。
だがしばらく経って口元からふ、と息をらした。
驚いてそちらを見る。彼がほんのしだけ笑ったのだと、そのらかい表を見て理解した。
「すみません。黒島さんは大変な思いをしたとは分かってるのですが。
あなたがられやすい質である理由が分かりました。痛みに敏なのですね、自分にも、人にも」
見上げる彼の顔は優しかった。散々流れていた涙もピタリと止まる。
思わず息するのも忘れるほどに、彼はしかった。
「霊もあなたなら分かってくれると信じてり込んだのでしょうね。がかで優しいので」
「………」
「どうしました?」
「……やっぱり今って夢でしたか……?」
「なぜですか」
「九條さんがらしくない事を言ってるので……」
「そうですか? 私はいつでも正直なだけですよ」
つい心臓が跳ね上がってしまう。さっきまでの恐怖がイケメンパワーにて吹き飛ばされた。赤面しそうになるのを必死に堪える。
落ち著け、この人は天然だ。ど天然なのだからときめくのは無駄だ。思い出せ、ポッキーばかり食べてる姿を!
私はそんな事を頭の中でぐるぐると考えている時、またしても九條さんに抱き抱えられていることにようやく気づきはっとする。慌てて上を起こしてその腕から離れた。
「な、何度もすみません……!」
「いえ、ここに戻ってきたらあなたが床に倒れ込んでいたので」
「全然知らなかった……いつ倒れたんだろう」
「それと謝るのはこちらです。相手なのにし本気で叩きました」
言われて、そういえば右頬がジンと熱いな、とる。目覚めた時の痛みは彼が與えてくれた刺激だったのか。
「いえ、本當にめちゃくちゃ謝しています……あのままられた狀態が続いてたら多分神やられてました……」
「しかしもうちょっと手加減すべきでしたね」
「顔歪んでます?」
「ええ殘念なことに」
「ちょっと!」
「冗談です」
また無表でそう言うと、九條さんは立ち上がった。やっとあたりを見渡せば、座っていたはずの椅子が橫に倒れている。どうやら椅子ごと床に倒れ込んだらしい。
私もゆっくり立ち上がる。の自由を奪われていた夢を見た後だからか、なんだか違和すらじる。
なんとなく全を観察した。なんともない、いつもの私の。縛られてもない、痛みもない。
……健康であるというありがたみを痛した。
「コーヒーでも飲んで落ち著いては。新しいの貰って來ましょうか」
「いえ! 今は一人にしないでください……」
「それもそうですね」
倒れた椅子を元に戻した九條さんはそこに座る。私もまた隣の椅子に腰掛け、飲みかけのコーヒーを口に含んだ。それはまだ十分に溫かくて、あれほど長くじた験はほんの僅かの時間経過しかしていないんだと驚く。
苦い風味で心を落ち著かせた私は、彼に向き直って言った。
「聞いてもらえますか、私がみたこと」
「はい、もちろんです」
私は全てを話した。
九條さんに言われるまま810に向かって寢ている自分を見たこと。
目が覚めたら拘束され、般若の看護師がいたこと。
痛くて痛み止めもぜんぜん効かなかったこと。
苦しくて苦しくてたまらなかったこと。
九條さんは真剣な顔で私の話を聞き、考えるように腕を組んでいた。
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