《視えるのに祓えない、九條尚久の心霊調査事務所》ひと時の休息
「あ、おかえりなさーい!」
事務所にると、ニコニコした伊藤さんの顔が見えた。相変わらず人懐こくて可らしい人だ。その顔を見るとこちらの頬も緩んでしまう。
「ただ今戻りました……」
私が言う隣を、九條さんはするりと通り抜けて無言で中にる。そして靴もがないままソファにどしんと橫になり、すぐに寢息を立て始めてしまった。
私がここに初めて足を踏みれた時のようだった。
あの時は何だこの人、と不審に思ったけれど、今はその景を微笑んで見れる。夜もほとんど寢ずに働いていたわけだし、こうなるのは仕方がない事だ。
伊藤さんは慣れた手つきで近くにある布を掛けると、私に笑顔で言った。
「ごめんね、調査中は泊まり込みが多いよって教えてあげるの忘れてて……々無くて困ったでしょ? 屆けようかとも思ったけど勝手に荷さわれないしさ」
「あ、いえ。ありがとうございます」
九條さんと比べてなんて気遣いが出來る人なんだろう……いやこれが普通か? 九條さんと一緒にいるから覚が麻痺してきたかもしれない。
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伊藤さんは笑いながら言う。
「今回は早かったね、時には1週間とかかかる時もあるから」
「1週間……!? 九條さんそんな時も著替えないんですか!?」
「いや、そこまでなれば流石に途中帰ってくるけど」
びっくりした、イケメンでもそんなにだしなみに無頓著だったら本気で引いてた。
ほっと安心した私は、とりあえず空腹とお風呂にりたい衝に駆られる。
そんな私の様子に気づいているのか、気遣いの塊の伊藤さんは言った。
「あ、お風呂にでも行ってくる? ここにシャワールームでもあればいいんだけどね。近くに銭湯あるから、帰ってきたらご飯食べれるようになんか用意しとくよ」
「か、神……!」
「あはは、はじめての調査で疲れてるでしょ? ゆっくりして〜」
もはや拝みたくなるお人。九條さんと二人で仕事を続けていられる理由が分かる。多分伊藤さんじゃなきゃ無理だよね。
「ではお言葉に甘えて、お風呂行かせてもらいます……」
「うんうんいってらっしゃーい」
ひらひらと手を振る伊藤さんに軽く頭を下げて、著替えを取るため一旦部屋の奧へとった。
質素なベッドの上には、まだ封を開けていない自分の荷が置かれている。
必要最低限の生活用品だった。伊藤さんと買い出しに行ってすぐに調査へ向かったので出番がまだだった。
紙袋を一つ手に持った時、ふと當然のようにここにいる自分にし戸った。
私には帰る家もない。死ぬつもりだったから、全て処分したのだ。
ここを仮住まいに、と九條さんが提案してくれたのをけれたが、一いつまでこうしてるつもりなのか。
調査は一つ経験した。ここで働くと覚悟を決めるなら、家探しだってしなくてはならない。家電とかだってもう一度買い揃えて……多の貯金はあるが、新生活を始めるとなれば全て吹っ飛ぶだろう。
いや、貯金なんかどうでもいい。だって死ぬつもりだった。
大事なのは生きると決意してここで働く決意をするかどうか、だ。
「……とりあえずお風呂らせてもらおう」
どっと疲れた。を清潔にして溫まった後に考えても遅くない。
夜も私は多寢かせて貰ったけど、座ったままだし朝早かったし。の節々が痛い。
私は適當に買ってきた著替えなどを手に持つと、仮眠室から出た。
目の前にはソファから足をはみ出してる九條さんがいる。まさに睡、だ。
「では伊藤さん、し出てきます」
「はーい!」
私は寒い外へ再び足を踏み出した。
実は銭湯なんてほとんど初験の私はその実態に驚かされつつゆっくりお風呂に浸かった。
寒い日に浸かる湯船はまさに極楽。つい居眠りしそうになった自分を何とか起こして湯船から出る。
疲れが抜け落ちたようにスッキリした。
ゆっくり髪も乾かし火照る顔をあおぎつつ晴れた気持ちで外へ出ると、を寒さが突き刺す。でもそれが大変心地よかった。
うん、本當、スッキリした。
それはお風呂のせいと言うより、この人生自分を苦しめるだけだったこの力がしでも何かの役に立てたという達がようやく湧いてきだからだ。
もう亡き者を救って何になると言われれば言い返せないけど。それでも、あのまま苦しみを持ったまま存在し続けるのは辛いはずだもの。
そう、それに。
九條さんは変な人だけどいい人だ。同じ能力を持ってるから私の気持ちもわかってくれる。伊藤さんは能力は無いものの私を疑うようなことしない。
今まで生きてきてみ続けた仲間が、ここにはいる。
し冷えてきてしまったら手を握りしめた。そこそこ多い人混みの中をくぐり抜け、あのビルへと足を進める。それはかつてないほど軽くじた。
単純かな。でも、もう一度前を向いてみようか。
そう思った時脳裏にある人々の顔が浮かんだ。フワフワした足取りだったのに、一気にそれが重くなる。
忘れられるだろうか。全て過去のこととして、生きていけるだろうか。
中途半端な気持ちだ。今死のうとは思わなくなった。でもだからといって生きていこうと決意したわけではない。
自分でも呆れて笑っちゃうくらい、宙ぶらりんな気持ちなのだ。
「……九條さんに返事しなきゃいけないのに」
彼が起きたらきっと聞いてくる。これからどうしますかって。
ビルのり口にり、エレベーターのボタンを押した。1階に待機していたそれはすぐに扉が開く。
一人で乗り込んで目的の數字を押す。銀の扉はゆっくりと閉まり、小さな箱は私を乗せて上昇していく。
モヤモヤした気持ちのまま5階に辿り著き、ついになんのプレートも飾られていないあの事務所に著いてしまう。
とりあえず、きっとまだ九條さんはしばらく起きないはず。もうし考えようか。
私はそう決意して、事務所の扉を開ける。
暖房の効いた暖かな部屋の真ん中で、九條さんはソファに寢そべ……っているかと思いきや、彼はそこに腰かけていた。予想外の景に驚く。
「あ、いいタイミング黒島さん! 依頼の人なんだ、一緒にお話聞いてあげて!」
帰ってきた私に気づき、伊藤さんがキッチンから顔を出して言う。驚いて九條さんを見れば、確かに彼の正面には若いの人が一人腰掛けていた。
年は20代前半くらいだろうか。キリッとした目元に一つ結びした黒髪。いかにも仕事できます、と言った人だった。
黒いジャケットに黒いパンツを履いているその人は、私を振り返って軽く會釈する。
……え、もう次の仕事ってこと!?
九條さんを見れば、意外にも彼はしゃんと起きて座っていた。ただし起きたばかりだからか白い服の裾がめくり上がっていた。
「……あ、黒島といいます、おまたせしました!」
まさかこんな短スパンで次の依頼が來るとは思っていなかった私は、これからここで働くかどうかなんて悩みも忘れ、慌てて九條さんの隣に駆け寄って行った。
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