《視えるのに祓えない、九條尚久の心霊調査事務所》本當に好きだった
全員で機材を車に運んでいた。
外はもうすっかり暗い。満月が顔を出して私たちを見下ろしていた。寒さに震えながら歩く。
重いモニターなどは男たちが、私と聡はコード類や荷などを持っていた。
なんとなく聡と並びながらゆっくり歩く。目を真っ赤にさせながら無言で進む聡に、聲をかけることもなく沈黙を流していた。
それを破ったのは、聡の方だった。
「あの、お姉ちゃん。もし、もしよかったらなんだけど。今度……お母さんのお墓參り、一緒に行かない?」
ポツンと、おそるおそる言われた。隣を見ると、眉を垂らして私を見ている彼がいた。泣いたせいで化粧は禿げ、目の下も黒くなっている。
ふっと微笑む。
「うん、行こう」
「それで、帰りに、ついでにご飯でも……」
「うん、行こう!」
私が返事をすると、聡はほっとしたように笑った。そして気まずそうに言う。
「もう噓はつかないから。絶対」
「うん、ちゃんと話そうね」
そう言った時、あっと思いだす。私は慌てて聡に告げた。
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「そうだ! そういえば、私も一個噓ついてた」
「え?」
「九條さん、付き合ってなんかないから。私の立場を考えて、九條さんが気を遣ってそういう設定にしてくれてただけ」
「そうなの?」
いけない、その設定を解くのを忘れそうだった。聡はふうんと頷いた後、考えるようにして言う。
「じゃあ私九條さん狙おうかなー」
「えっ!!!」
つい大きな聲で反応すると、聡はすぐに聲を上げて笑った。悪戯っぽく笑って見せる。
「ウソウソ。私には手に負えません、お姉ちゃんのがお似合いだよー」
「ちょ、ちょ」
「私伊藤さんの方がタイプなんだけどなあ。全然脈ないことはよくわかった。まあ、私がお姉ちゃんにした仕打ち知ってたらそりゃそうだよね」
伊藤さんにやたら懐いてると思っていたが、どうやら本當にタイプだったらしい。まあ、彼は確かにモテるタイプであることは間違いない。でも伊藤さん塩対応だったしなあ。
聡はふふっと笑って言う。
「あんなイケメンに囲まれて仕事できるのが羨ましいっていうのは変わらない本音だよー」
「ま、まあ、いい人たちだよ」
「よく分かったよ。二人ともお姉ちゃんの味方っていうことがね」
歩きながら、見慣れた車に近づいていく。九條さんと信也がモニターを乗せているところだった。私と聡は持っている荷を押し込む。手が空いたところで、聡が言った。
「あ、お姉ちゃん連絡先!」
「そうだった」
私は慌ててカバンからスマホを取り出す。そんな私をよそに、九條さんは『では先に乗ってます』なんて言ってすぐに運転席に乗り込む。
急いで聡と連絡先を換し、お互い確認した。數ない私の連絡先、まさか聡がる日がくるなんて、想像していなかった。
「よし、じゃあ今度送るからね!」
そう言い終えた時、そばに立っていた信也が私に聲をかけた。
「」
振り返る。信也が真っ直ぐ私を見て立っていた。
「ちょっといいか?」
「う、うん」
信也の言葉を聞いた聡は、何も言わずにすーっとどこかへいなくなった。突然二人になり気まずさが増す。九條さんがエンジンをかけたのか、車のランプがった。
いざ正面から向かい合うと、信也は私から目を逸らすことなく言った。
「ほんと、々ごめん。が仕事を辭めた理由も知らず、無神経なことばかりしてた」
「それはもう謝ってもらったから、いいよ」
「俺たちやり直せないかな?」
突然の提案に全を固まらせた。思っても見ないセリフが飛び出してきたけど、聞き間違いだろうか、今なんて言ったの?
信也の真剣な顔を見るに、聞き間違いじゃない。彼の視線は恥ずかしいぐらい真っ直ぐ私を見ていた。
「え……」
「今度は絶対、を信じるから。悲しませない。だから、もう一回やり直せないかな。俺にチャンスを與えてほしい」
噓偽りない信也の言葉は、自分の心を震えさせた。ドキドキという高鳴りは、懐かしさを覚える。彼が私がいなくなった後、もう一度話そうと探してくれていたことはさっき聞いた。もしかして、一年前にもこう言ってくれるつもりだったんだろうか。
ぶわっと今までの思い出が蘇る。
最後が悲しかったから、思いだすことがなくなっていた。でも、彼と過ごした二年は確かに寶だった。
初めて私に好きだと言ってくれた人。
人付き合いが苦手な私を、みんなのにれてくれた。お腹が痛くなるほど面白い話で笑った。
初めてのデート、初めての旅行。手を繋いで歩いた街並み、祝いあったイベント。あの時はきっとこれから先も、隣にいるのは信也だけなんだと思っていた。
私は本當に、全力で彼のことが好きだった。
「ありがとう……気持ちは嬉しいよ」
「じゃあ」
「でも、私にとってはもう過去のこと。過去のことなんだよ。他に好きな人がいる。気持ちは戻らない」
人間は進むものだ。どんな狀況でも、しずつ長し変わっていく。
私の心はこの一年で彼から離れてしまった。
信也との別れは辛くて辛くて、でもそんな時支えてくれたのは新しいだった。報われそうにない無謀なものだけど、大事にしたいと思っている。
信也は驚かなかった。私をじっと見つめている。
その表があの頃と変わってなくて、懐かしくて。ついぽろりと涙が溢れた。が苦しくてたまらない、不思議な痛み。
過去にした人と決別するというのは、なぜこんなにも辛いのか。
「でも私、信也が本當に好きだったよ。二年、楽しかった。素敵な思い出をたくさんありがとう」
私の言葉に、信也は俯いて目を閉じた。私と彼しか知らない時間、それを噛み締めているようにみえた。
「……うん、分かった。俺こそありがとう、そしてごめん。には幸せになってほしい」
「信也こそ。いつかまた會うことがあったら、笑って話せるといいね」
それだけ言うと、私は彼に背を向けた。助手席に走り、車に乗り込む。待っていた九條さんは、泣いている私をちらりとだけ見たけど、特に何も言わなかった。
シートベルトを締めながらミラーを見ると、信也と聡が並んでこちらを見ていた。二人が同時に頭を下げる。
「いいですか」
「はい、出してください」
返事を聞いて、九條さんは車を出発させた。私たちの姿が見えなくなるまで、信也たちは頭を下げていた。
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