《モフモフの魔導師》3 切り札
暇なら読んでみて下さい。
( ^-^)_旦~
痛みを堪えて立ち上がったアニカが聲を上げる。
「オーレン…!魔から離れて!」
「アニカ!?」
アニカは両手を突き出し掌を前に向けると、その親指と人差し指同士を合わせて菱形を作る。
すると、髪がフワリと浮き上がり赤いオーラのようなものをに纏う。
アニカが何をしようとしているか気付いてぶ。
「ダメだ!やめろ!」
『火炎(フラム)』
唱えた瞬間、魔に向けられた掌から炎が放たれた。直撃した炎は瞬く間に魔を包み込み、皮の焼ける匂いが辺りに充満する。
「グオォォォォ!!」
魔は吠えながら苦しんで転げ回っている。
その隙にアニカに駆け寄った。その場に座り込んで、肩で息をしている。
「大丈夫か?無茶しやがって…」
「ハァ…ハァ…。私達はパーティーでしょ。助けられてばかりじゃ… ダメだから…。 ハァ…ハァ」
「あぁ…。助かったよ」
★
アニカは、小さな頃から力や筋力などの能力が人並み以下だった。
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走るのだけは速かったが、鍛えても他の能力はなかなかびず、稽古しても剣の扱いも上手くならず、とお世辭にも冒険者に向いてるとは言えなかった。だから余計に冒険者に憧れたのかもしれない。
いつだったか、村長から『魔法が使えれば、力がなくとも冒険者としてやっていける』と言われた。
アニカは「いいことを聞いた!」とばかりに、村で唯一魔法が使えるホーマに弟子りをせがんだ。
ホーマは、戦闘ではなく生活に役立つ魔法しか使えない魔法使いだったが、魔法の基礎について優しく丁寧に教えてくれた。
幸いアニカには素質があったようで、教わった魔法は全て習得するに至る。
魔法を習得できるかどうかは、ほぼ才能で決まる。それが世界の常識。天の覚と生まれ持った魔力がなければ、どれだけ訓練しても覚えることができない。
特に人間やエルフ、ドワーフなどの種族が魔法の扱いに長けていると云われているが、逆に獣人は魔法を一切扱えないと云われている。
その代わりに、獣人は信じられないくらい頑強なを持つ。
その後、冒険者になるつもりならと、ホーマがまだ己が若かった頃、憧れたもののついぞ習得できなかった魔法を教えてくれた。
それが『火炎』である。
ホーマが実際に詠唱できないため、目にしたこともない魔法を、ホーマの記憶と説明を頼りにひたすら修練して、ついに習得した。
しかし、我流だからなのか何が問題なのか不明だが、『火炎』を詠唱するとたった1回で魔力が枯渇してしまうようになった。
修練により魔力量を増やしても、それに伴って魔法の威力が増すだけで、やはり1回しか詠唱できなかった。
威力が増したアニカの『火炎』ではあったが、詠唱したあとは糸が切れた人形のようにしばらくけなくなってしまうため、戦闘中に使うのは諸刃の剣であり、まさに最終手段と言える。
ホーマ曰く、名の知れた魔導師であれば原因が分かるとのことだったので、冒険者になったアニカは近いうちに有名な魔導師を訪ねて、このことについて聞くつもりだった。
★
力してペタリと座り込むアニカのを起こして肩を貸して歩き出す。息も荒いし、足からの出も激しい。
不格好でも止だけはしておかないと命に関わる。応急処置で包帯だけ巻いておいたけど痛みは和らぐわけじゃない。泣き言を言わないアニカの我慢強さに救われている。
チラッと魔に視線を向けると、まだ皮が燃えているものの、喚きながら転がり回ってしずつ火が小さくなっている。このままでは、再度戦闘に突するのは時間の問題。
そんな余裕はない。此処を離れるのが最優先事項だ。
「アニカ、歩けるか?」
「ちょっとずつなら、なんとか…」
「よし。來た道を探して、今度こそ逃げるぞ」
「…うん」
本當は背負ってやりたいけど、魔との戦闘で自分の力も限界に近いのが解ってる。共倒れにならないためにも、もうしだけアニカに頑張ってもらうしかない。
周りを見渡して、來た道を探してみるが、何処も同じように見える。初めて來た森で土地勘があるわけもない。
「來た方角は…?くそっ!き回ったから、解らなくなってる」
こんなことになるのなら、印でも付けながら來るべきだったと冒険者としての経験の無さを悔やむ。
けど、後悔してる暇はない。なんとか生き延びて、次の冒険に活かせばいい。こんなところで…死んでたまるか。
方角を確かめることより、一刻も早く離することに決めて、いまだ転げ回っている魔を一瞥した2人は歩き始めた。
読んで頂きありがとうございます。
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