暇なら読んでみて下さい。

( ^-^)_旦~

薬草採取を終えて住み家に戻った２人は、ちょっと一休みといきたいところだったが、まずは大人しく留守番してくれたオーレンの様子を見に行くことにした。

アニカにはちょっと心配なことがあった。

『オーレン…。大人しくしてるといいけど…』

ウォルトさんに続いて部屋に向かう。近づくにつれて、「フッ！フッ！」と荒い息使いがハッキリ聞こえる。

もしかして…苦しんでる！？と心配になって部屋を覗き込むと、意外な景が目に飛び込んできた。

オーレンは…部屋の床で腹筋していた。

あまりに熱中していて、帰ってきた私達に気付いていない。包帯まみれで筋を鍛えるようなアホが何処にいるんだろう？

ここにいた。

『こんの…バカ兄貴分…』

震えながら大きく息を吸い込んで、聲を張り上げる。

「…安靜にしてろって言われたでしょ！この…馬鹿オーレン！！」

突然の大聲に驚いたウォルトとオーレンは耳を押さえてこまる。

オーレンに歩み寄って、ゴンッ！と頭に拳骨を落としてやった。人の気も知らないで！

「痛ってぇ～！なにすんだよ！」

「うるさい！バカ！」

を翻して部屋を出ると、ズンズンと居間に歩を進める。ジッとしてろと言ったのに…。心配して損した。

ポカンとしているオーレンにウォルトが話し掛ける。

「アニカは、森で採ってきた薬草で回復薬を作ってオーレンを治療してやりたいって言ってたんだ。『人の気も知らないで』と思ったんじゃないかな？」

それを聞いたオーレンは、頭をさすりながら口を開く。

「アニカがそんなことを…。もう何処も痛くないから大丈夫だと思って…。暇もあったし、やってしまいました。反省します…」

「言いたいことを言って、もう落ち著いてるさ。２人は長い付き合いなんだろう？」

「はい。兄妹みたいなものです」

「なら大丈夫。それより、そんなに暇ならオーレンも回復薬について勉強するかい。今から調合するんだけど」

「いいんですか？！やりたいです！」

「じゃあ、アニカに謝るところから始めるとしようか」

「そうですね」と苦笑した。

その後、オーレンが平低頭謝罪してきたのでとりあえず溜飲を下げた。

ただ、食いしん坊呼ばわりされた一件については思うところがあるので「また改めて話をするから」と伝える。

「意外にに持つな…」

「なんか言った…？」

「２人とも、そろそろ始めようか」

し険悪な雰囲気にも構わず、ウォルトさんは薬の調合を行う部屋に案してくれた。中にって驚いた。

「すごい部屋…。これ、全部素材ですか？」

「そうだよ。作った薬も保管してるけどね」

調合室には大小様々な硝子の瓶や秤などが置かれていて、し薬品のような匂いがするけど嫌な匂いじゃない。

壁一面に大きな棚が據え付けられていて、素材が所狹しと綺麗に陳列されている。何処に何があるのか一目で解るようにしてあるのだと、素人目にも理解できた。

「あんまり見られると恥ずかしいな。じゃあ、今から説明していくよ」

ウォルトさんは採ってきた薬草類を袋から取り出すと、作業臺に置いて解説を始める。オーレンと２人で椅子に座って、真剣な表で耳を傾ける。

「回復薬を作る工程は、さほど難しくないんだ。難しいのは調合だね。油斷して配合を間違えたりすると、薬を作ってたのに何故か毒ができてたりするから注意が必要なんだ」

「薬が毒に？そんなことがあるんですか！？」

オーレンが驚いて聞き返す。ウォルトさんは頷いて続けた。

「実際に見てもらったほうが早いかな」

目の前で緑と青の薬草を組み合わせて調合している。２つの薬が出來上がって、片方は緑を多めに配合、もう片方は逆に青を多めにしている。

「この２つの薬を飲み比べてみて。飲むのはしだけでいい」

コクリと頷いて、まずは緑が多い方の薬をしだけ飲む。するとが楽になったようにじた。

「これは、なんだか疲れが癒やされるような…」

どうやらオーレンも同じ意見らしい。

「が喜んでるような気がします」

「今、２人が飲んだのは簡単な回復薬。それじゃ、こっちをしだけ飲んでみて」

差し出されたもう１つの薬を飲む。

「ゲホッ！なんだコレ！？」

「ゴホッ！ヒドい味。なんだか…舌が痺れる」

「同じ素材でも配合によってこうも違う。だから正しい知識が必要だし、毒も使いようによっては有効なんだ。魔に飲ませたり、浴びせて弱らせるとかね」

「「なるほど」」

ウォルトさんは回復薬のみならず、冒険に使えそうな解毒薬、麻痺薬などの狀態異常を治癒する薬まで作り方を教えてくれた。

調合は簡単ではなかったけど、真剣に取り組んで、ほんのしだが効果ありといえる薬を作ることができるようになった。

…と、ここでオーレンが口を開いた。

「ウォルトさん、ちょっと聞きたいんですけど」

「なんだい？」

「変なを食ったときの、腹痛に効く薬って作れますか？」

ちょっとふざけたじでオーレンが尋ねた。チラッとこっちを見てきたので、何が言いたいか直ぐに解った…。

自分を置いて薬草を採りに行ったのが気に食わないのか、ただ揶揄いたいのか知らないけど、「に持つな…」と言われたのも腹が立ってきた。どっちが…！

「オーレン…。ぶっ飛ばされたいの？」

低い聲で呟くと、ギクッ！と反応した。慌ててフォローしてくる。

「違う違う！お前のことじゃないって！冒険してたら、間違って毒キノコとか食べるときもあるかもだろ？別に他意はないから！」

「確かにそれはあるかもね…。それならそう言いなよ…」

取って付けたような言い訳だと解ってるけど、今は追求するのはやめておこう。ウォルトさんに申し訳ない。

「そういうことなら…」

笑顔のウォルトさんは、オーレンの要どおりに腹痛に効く薬を教えてくれた。あくまでも、軽度の腹痛限定だと付け加えて。

「これで、ちょっとした腹痛なら安心だな」

「そうだね。何でも食べたりはしないけど、安心できるよ」

「噓つけ！今までお前の悪食でどれだけ苦労したか…。変な木の実とか食って、お腹を壊した數も數え切れないだろ！ハハッ！ハッ…」

口に出したあとに「しまった！」って顔をしてる。さっき回避したばかりなのに…直ぐに尾を出すなんて…。

ホントに、アホのオーレン…。

ウォルトさんは苦笑して、先に部屋から出て行く。「くれぐれもは壊さないように」とだけ告げて。

ご心配なく。そんなことは絶対しません。今から行うのは…ただの世直しです。

その後、ウォルトが去った部屋からボグッ！と鈍い音が聞こえたかと思うと、部屋から出てきたオーレンの頭には、大きなたんこぶが２つ並んでいた。

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