《モフモフの魔導師》15 用な獣人

暇なら読んでみて下さい。

( ^-^)_旦~

魔法を見せてもらって、更に魔力の矯正までしてもらったあと、アニカの行は早かった。

「弟子にして下さい!」と頭を下げて懇願したのだ。

突然の弟子り志願に驚いたウォルトは、「ボクは人に魔法を教えたりできる獣人じゃないんだ」「ちゃんとした魔導師に教えてもらったほうが良い」と斷ったのだが、アニカも諦めなかった。

「住み込みで、掃除洗濯から食材の調達まで何でもやります!」「皮のブラシも毎日掛けます!」「気にらなければ、いつでも叩き出してもらっていいです!」と本気で訴えた。

最終的にはウォルトが熱意に負けて「師匠と弟子は無理だけど、冒険の合間にボクの魔法でよければ教える」と約束した。

魔法を教えてもらえることになってはしゃぐアニカの様子を遠目に眺めていたオーレンに、ウォルトが話し掛けた。

「オーレンはいいのかい?冒険に行く時間が減るかもしれないよ」

アニカの軽い暴走で蚊帳の外になっていると心配してくれたんだろうな。優しい人だ。

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「大丈夫です。冒険はしたいですけど、アニカの魔法の幅が広がればやれることも増えるし、全然有りだと思ってます」

気にしていないことを伝えて、こっちも謝罪する。

「それより、こっちこそすみません。アニカは昔から言い出したら聞かないところがあって…。魔法を教えるなんて迷じゃないですか?言ってくれれば、俺から言っておきます」

「迷じゃないよ。ただ、ボクは魔法が使えるただの獣人で、人に教えられるようなことは何もないんだ…」

絶対そんなことない。魔法を使えない俺でもさっきの魔法を見て解った。ウォルトさんは凄い魔導師だ。

「アニカは冒険者になったばかりだし、いろんな人の魔法を見たくて頼んだかもしれないけど、すぐにガッカリされるのが目に見えてる。それが心苦しくてね」

「ウォルトさんが教えられることだけでいいです。直ぐに教えることがなくなったら、そこで終わりでいいので気にしないで下さい」

冒険にアニカの魔法は不可欠。修練して魔法を上達してもらいたいけど、魔法の師匠に巡り會えるか解らない。

アニカにとって最初の魔法の師匠であるホーマおじさんが言うには、魔導師は良い師匠に巡り會えるかが重要らしい。

『この人しかいない!』と思っても、師事してみたら指導力や格に問題があることも多いみたいで、巡り會えるかは半分運だって笑ってた。だから、師匠を決めるのは焦らない方がいいとアドバイスしてくれた。

だけど、ウォルトさんは人柄も良くて教えるのも上手い。確かに魔法も凄いんだけど、なにより人として尊敬できる。俺がアニカでもウォルトさんにお願いしてる。

「それならいいんだけど」

「俺も、その間に稽古をつけてくれる師匠がいれば丁度いいんですけど…って、ウォルトさんは獣人だから力も強いんじゃ?」

冒険者の前衛には獣人も多い。魔法を使えない代わりに、とにかく能力が桁外れだからだ。

「多分、普通の人間よりは強いと思う。獣人の中にると底辺だけど」

「もしよければなんですけど…俺の剣の稽古に付き合ってもらえませんか?」

駄目元でお願いしてみる。

「構わないよ。剣は素人だから役に立てるといいけど」

「やった!お願いします!」

という訳で、早速、魔法の実演をした更地で軽く稽古してみることにした。

ウォルトさんが即席で作ってくれた木刀を持って対峙する。アニカは離れたところで見學。

「ウォルトさぁ~ん!頑張って下さぁ~い!オーレンに負けないでぇ~!」

「俺の応援もしろよ!この薄者!」

ウォルトさんはニコニコしながら木刀を構えた。

「それじゃ、打ち込んでいきます。準備はいいですか?」

「いつでもいいよ」

剣は素人だって聞いたけど、獣人だから能力は高いはず。ウォルトさんは優しい人だ。それでも、油斷は

「行きます。ハァァァ!」

「2人とも頑張れぇ~!」

お願いした以上は先制攻撃。ウォルトさんに向かって駆け出した。

ー 10分後 ー

焦っている。それはもう、どうしたらいいのか解らないくらい焦っている。

最初は通用すると思っていた剣技だったが、稽古が始まるとその余裕は一蹴された。

「くぅぅ!おらぁ!このっ!!」

息を切らして、連続攻撃を仕掛ける。

「鋭い斬撃だね。凄いよ」

対するウォルトさんは、余裕の表ですべてを軽やかに躱したりけ止めてる。焦りなんか微塵もじない。

「もっと速くかなきゃウォルトさんには當たらないよ!倍速でけ!」

「無茶言うな!これが限界だ!」

アニカの言うとおり、まず攻撃が當たらない。當たらなすぎて直ぐに全力を出したけど、掠りもしない。

剣は素人というだけあって、構えも剣筋もまったく洗練されていないのに、獨特のきで予想しづらく逆に軽く攻撃を當てられてしまって防ぐことすらできない。

平然と眼前に立つウォルトさんの強さをじてふと思った。

『この人…もしかしてムーンリングベアより強いんじゃ…』

ムーンリングベアとの戦闘では、致命傷は與えられなかったけど攻撃を當てることはできた。けど、ウォルトさんには全く當たる気がしない。

それどころか涼しい顔をして心配してくれる。まだ本気を出していないのが一目瞭然。

ウォルトさんが本當に獣人の底辺なら、頂點に君臨する獣人の強さがどれ程なのか見當もつかない。

「大丈夫かい?し休んだほうがいいと思うけど」

休憩を勧めてくれるけど、稽古してしいと言い出したのはこっちだ。やりきらなきゃ。

「大丈夫です!まだいけます!!ハァァ!」

「うん。けて立つよ」

「オーレン!ふがいないぞ!」

アニカは笑顔で2人の闘いを見守っていた。

ー さらに10分後 ー

疲れ切って芝生で大の字になり、空を見上げていた。肩で息をしていると、アニカが覗き込んでくる。

「オーレン、眠いの?」

「違うわ!疲れて立てないんだよ!」

「知ってる♪」

格悪いな!?」

負けた…。完なきまでにやられた。

そもそも勝負してないけど、ぐうの音も出ないほど力の差を見せつけられた。力だけじゃなく、スピードでも圧倒された。

ウォルトさんが剣を持ってるところを見たことも無かったし、力が無いって聞いたから能力が魔法に特化していると完全に勘違いしてた。

まさか、これほど強いなんて…。これで魔法まで使われたら勝ち目なんか無い。獣人が凄いのか、ウォルトさんが凄いのか解らないけど、とにかく強い。

「オーレン、お疲れさま。ちょっといいかい?」

しばらく寢転んでいると聲をかけられた。そういえば、手合わせのお禮を言ってない。サッと起き上がって口を開く。

「手合わせありがとうございました。なんでしょうか?」

「アドバイスって訳じゃないけど、気になったことがあるんだ」

「教えてもらえると嬉しいです!」

「ボクは剣のことは解らないから合ってる自信はないけど、力の使い方と構えを改良して剣を振ればもっと良くなると思う」

「構え…ですか?」

「ちょっと基本の構えをとってみて」

いつも通り構えてみる。

「こうですか?」

「ちょっとそのままで」

構えを頭から足先まで細かく手取り足取り微修正してくれた。それに加えて、剣を振るときの姿勢も教えてもらう。

とても窮屈にじられたけど、ウォルトさんのアドバイスは素直にれられる。俺より強いんだから。

「うん。良いじだと思う」

修正を終えると、打ち込んでくるよう言われた。

の力は可能な限り抜いて、剣をギリギリ握れるくらいの力で振ってみてほしい。そして目標に當たる直前に、グッと握り込むじで」

「力を抜いてギリギリ持てるくらい…。こんなじですか?」

言われたとおりに剣を振る。すると、今までで1番の斬撃がウォルトさんを襲った。ヒラリと躱されたが、さっきまでの斬撃とは雲泥の差だった。

「今の斬撃は良かったと思う。力が無駄に逃げてなかったように見えたよ。手応えはどう?」

「窮屈な姿勢なのに威力が上がりました。力の使い方に気をつけるだけで、こうも変わるなんて…」

獨りの修練では絶対気付けなかったこと。

「これは、ボクが勝手に良いと判斷した姿勢だから正解とは言えない。剣士に師事して稽古すれば、もっと力が上手く使えるようになると思う」

そう言って笑ってくれた。

その後、弟子り志願者が2人に増えたのは言うまでもない。

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