《モフモフの魔導師》25 母と息子

暇なら読んでみて下さい。

( ^-^)_旦~

ウォルトの母親であるミーナは、三貓の獣人。

皮はウォルトよりモフモフしていて、可い…風にしているのだが、母親だけあって実際はそこそこの年齢。

人間から見ると獣人は年齢不詳らしく、総じて若く見られがちなため、母さんは調子に乗って若作りをしてる。

ただ、獣人同士は見た目ですぐ判別できるから効果はないけど、それを母さんは不満に思っている…。

実際、年齢より若く見えることは否定しないけど、息子としてはいつまで若いつもりなんだという思いもある。

言うと激怒されるので言わないけど…。

「ところで、ケンカの原因は何?」

「…浮気された」

「浮気…? 父さんが?」

「他に誰がいるのよ!アタシに人がいるとでも思ってんの?」

「そんなこと思ってないけど」

「あの人も若い子が好きなのよ。所詮、獣人よね!」

それは、ボクも母さんもだよね?と思ったけど、口に出すのはやめておく。面倒くさいことになるのが、目に見えてる。

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「何があったの?話してみてよ」

「さすがに… 息子にも言えないわ…」

そんなに深刻なのか…。

これはちょっと長引きそうだ、と真剣に耳を傾ける。

「母さんが浮気するならわかるけど、父さんが…」

「アンタ……本人の前でサラッと、とんでもないこと言うわね…」

「だってそうだろ。いつも若作りして、若い男に目を使ってるよね?」

「使ってないわ!人を軽貓みたいに!」

「それはさておき…。ちゃんと話し合ったの?」

「話し合ったわよ。でも、あの人は…いつもあぁだから…」

「それは…同意見だね」

母さんが落ち込んでしまった。こうなったら直接、父さんと話すしかないと決意する。

「母さん。ボクと一緒に家に帰ろう。父さんと話がしたい」

「ウォルト…」

「2人には、仲直りして一緒に暮らしてしいからね。このままじゃ、ボクの帰る家もなくなるし」

「…アタシはいい息子をもったわ」

今日のところはこのまま泊まってもらって、明日の朝早くに実家に戻ることに決めた。

夕食を笑顔でパクパク食べる母さんを見て、本當に落ち込んでいるのか怪しさをじたけど…。

『いい息子、か…。そんな風に言ってくれるのは父さんと母さんぐらいだよ』

今でこそ冗談じりに話ができるようになったけど、昔…ボクにとって生きることが辛いことでしかなかった時代に、なんとか生きてこれたのは両親の優しさがあったからだ。

ボクがまだかった頃、母さんはいわゆる『普通の獣人』に生んであげられなかったと自分を責めていた。

毎日のようにいじめられ、傷つけられて帰ってくるボクをめて、とにかくしてくれた。

そんな優しい母親に苦労をかけまいと、必死にを鍛えたりして、いじめられないよう努力したことを覚えてる。結果、思ったほど効果はなくて、やっぱりいじめられたけど。

でも、そんなボクの頑張りは母さんに変化をもたらしたらしい。大きくなってから教えてくれた。

『前向きに頑張る息子と向き合うのに、後ろ向きな母親じゃ駄目だ!』と起して、ボクの生きる道を一緒に模索してくれた。

それからは努めて明るく振る舞うようになって、現在の騒がしい母さんに至る。どこかで完全に違う方向へ行ってしまった。

獣人らしくないけど勉強するのは得意だったボクを、気味悪がらずいろんなことに挑戦させて、獣人という枠にとらわれず活躍してしいと願ってくれた。

魔法を使えるようになったのも、両親のおだと謝してる。世界の常識では獣人が魔法をれるはずはない。でも、ボクはその常識にとらわれなかった。

だからこそ魔法を習得することができて、マードックのような獣人とも渡り合えたと思ってる。

『ボクは2人の息子でよかったよ』

子供のように料理を頬張る母さんを優しく見つめて、心の中で謝を告げる。すると、視線に気付いたのか料理を口いっぱいに頬張ったまま答えてくれた。

「何、見てんのよ!…モグモグ。ウォルトのご飯が味しすぎるのがいけないんだからね!…モグモグ。アタシは悪くない!…モグモグ」

うん。いつも通りだね。落ち著くよ。

次の日。

仲良く朝食をとったあと、ボクらは実家に向けて出発した。

実家は、森の住み家から走って2時間程のところにある。親子2人で野を越え山を越えて駆けて辿り著いた。久しぶりの帰省。

母さんはいい歳なのに駆けるのが速い。ボクも得意だけど、そこは母さんに似たのかな。

実家の前に立つと、母さんが話しかけてくる。

「さぁ、戦場に著いたよ。覚悟はいい?」

「こっちの臺詞だよ」

「よし!行くわよ。たのもぉ~!」

「自分の家なんだから、普通にりなよ」

ドアの前で聲を上げても、中から反応はない。

「ん?いないのかな?」

「父さんならいるよ。知らない人と一緒にいる。裏庭のほうだ」

「それを早く言いなさいよ…。それにしても…アンタの鼻はどうなってんのよ」

「どうって………?………!!」

「どうしたの?」

鼻をスンと鳴らして、無言で駆け出す。

母さんは訳がわからないといった様子で後をついてくる。裏庭に回ると、知らない獣人の男と倒れている父さんの姿が見えた。

父さんは頭からを流している。知らない男は牛の獣人だ。

知らない男に向かって一目散に駆け出す。『強化』を纏って、怒りの表を浮かべながら。

見知らぬ男はボクに向かって吠えた。

「なんだテメェは?!」

「息子だよ」

一気に間合いを詰めると、男は拳を構える。

間合いにった瞬間に拳を繰り出してきたが、軽やかに躱して顔面に膝を叩き込んだ。グシャリと鼻の潰れた男は、そのまま倒れ込んで喚き散らす。

「痛ぇ!クソがっ!テメェ、殺してやる!」

そんな男を見下ろして告げる。

「それは無理だな」

「なんだと!舐めてんのか、コラァ!」

「今からボクがお前を殺すから」

獣の顔で嗤うウォルトを見て男は戦慄した。背筋が凍る。コイツはヤバい!と本能が警鐘を鳴らしている。逃げたいが、さっきのダメージで足が言うことをきかない。

「死ね」

男に向かって右手を翳した。

『火炎』

「何だぁ!?うわぁ!」

右手に炎が発現して、怯える男に向かって放とうとしたとき…。

「ウォルト… 待て…」

父さんが起き上がって口を開いた。

突然、炎を目にした男はパニックを起こして逃げ出した。あとを追うことはせず、炎を消滅させる。

両親はボクが魔法をることを知っているので、驚いたりしない。

「父さん。大丈夫か?」

「あぁ…」

「ストレイ!大丈夫なの…?」

「ん…」

父さんの様子に『相変わらずだな』と苦笑する。

ウォルトの父親であるストレイは、茶のモフモフ皮とおっとり優しげな表らかさを醸し出す茶貓の獣人。ウォルトと同じで顔は貓そのもの。

貓の獣人には珍しく、は大きくガッチリしていて、その點は真逆といっていい。ただ、そんな見た目に反して格は優しくて思慮深い。

父さんの1番の特徴は、とにかく無口なこと。元気でやかましい母さんと対照的だ。

昔から必要最低限の會話しかしないし、更にいえば、ボクは父さんが聲を出して笑ったのを見たことがない。母さんが、話し合いにならないと言ったのにはこんな理由があった。

「父さん。さっきの男は誰だ?」

「む… 名前は知らない…」

「知らない…?毆られたのに?」

「ん…」

どことなく歯切れの悪い返答をする父さんにに、しびれを切らした母さんが聲を荒げる。

「そんな訳ないでしょ!…『名前は』って言ったわね?じゃあ『誰か』は知ってるのね?」

「あぁ……」

「とりあえず、家にってゆっくり話を聞かせてもらう!行きましょ!」

母さんは父さんと連れ立って家にっていく。ボクはゆっくり2人の後を追った。

実家にると、父さんに『治癒』を施して3人でテーブルを囲んで座る。

口火を切って話し始めたのは母さんだ。

「今からストレイの隠し事を暴きます。被告はストレイ。検事はアタシで、裁判長はウォルト。それでいいわね!それでは開廷!」

母さんは、料理用のおタマでテーブルを2回叩く。

3人による裁判ゴッコが始まる。

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