暇なら読んでみて下さい。

( ^-^)_旦~

ここ數日の間に様々な出來事が起こった。

目まぐるしい日々にしだけ疲れたウォルトは、住み家にいてもボーッとしていることが多い。

そんな中、久しぶりにオーレンとアニカが訪ねてきてくれた。

「ウォルトさん！こんにちは！」

玄関のドアを開けると２人が気持ちのいい挨拶をしてくれる。いつもと変わらない笑顔にホッとする。

「久しぶりだね。元気そうでよかった」

ボクも笑顔で出迎える。住み家に招きれて、お茶を淹れて差し出した。

「はぁ…ウォルトさんのお茶は味しい…。そうだ！私『治癒』が使えるようになりました！」

「凄いなぁ。こんなに早く覚えるなんて」

「エヘヘ…！まだ、全然回復力弱いんですけど…ウォルトさんのおかげです！」

「大袈裟だよ。ボクは基礎しか教えてない。あとは、修練すれば回復効果がびていくからね」

以前、他に何か修得したい魔法がないかアニカに聞いたところ、冒険には欠かせない『治癒』を覚えたいと言っていたので、基礎だけ教えていた。

手応えを摑んだのを確認して「あとは自分で修練あるのみだよ」と伝えていた。魔法の中でも治癒魔法は詠唱するればするほど上達する。

それだけで修得したということは、努力も當然だけど魔法の才が人並み外れているということ。アニカは凄い。

「俺も剣上達したと思います。ゴブリンやフォレストウルフなら一撃で両斷できるようになりました」

「それは凄い。かなり稽古を積んだね」

オーレンは自己流の剣で魔に挑んでいたが、最近では他の冒険者と積極的に流して、剣を磨いているらしかった。

「それで…お願いがあるんですけど」

急にかしこまった様子の２人。

「なんだい？」

「俺たち２人同時に手合わせしてもらえませんか？」

意外な提案にし驚く。

「２人を相手に？」

「はい！果も見てもらいたいですし、もしよかったらパーティーの連攜とかで気付いたことを教えて貰いたいです！」

「そういうことならいいよ。ボクの意見でよければ」

「「お願いします！」」

笑顔の２人を見て思う。

『２人は何故かボクを慕ってくれる。しでも力になれるなら嬉しい。師匠もこんな気持ちだったのかな？』

「早速やってみる？」

「「はい！お願いします」」

「じゃ、表に出ようか」

外に出ていつもの更地で２人に対峙する。

オーレンは、修練用に作った木刀を手に準備萬端といった様子だ。

「行きます」

「いつでもいいよ」

まずは先制攻撃でし離れたアニカが詠唱した。

『火炎』

翳した両手から大きな炎が発現する。

アニカは詠唱までの作もかなりスムーズで、威力もグンと増していて修練の果が見て取れる。そこら辺の魔なら、命中すれば一発で討伐できるであろう威力。

『やっぱり凄い』

炎を軽やかに躱すと、そこにオーレンが剣を構えて突進してきた。

『魔法は囮？いや、もし當たればその時は追撃か。いい連攜だ』

オーレンは接近して袈裟斬りを繰り出した。攻撃の予備作も無駄がなく、以前とは斬撃の速さも比べものにならない。２人の長に目を見張る。

剣をひらりと躱して距離をとった。

「もうちょっと揺してもらえると思ったんですけど…」

オーレンは苦笑してるけど、ボクは余裕で躱してるわけじゃない。

「驚いてるよ。２人ともこの短期間で腕を上げたね」

オーレン達から見ても、ウォルトさんは『驚いたニャ』とか言いそうな顔をして、本気で心してる…んだけど…。

２人して苦笑いを浮かべる。

今の連攜は、この辺りの魔相手ならほぼ通用する必勝パターンに仕上がっていた。それを、軽々といなされた上に心されている。

薄々気付いていたけど、ウォルトさんはかなり強い。街の冒険者でいえば恐らく上位クラス。

そんな実力者を相手に、自分達が今できることの全てをぶつけて、どこまで通用するのか知りたいと思っていた。

ところが…。

「次はこっちの番だね」

「？！」

ウォルトさんが右手を翳す。マズイ！とじたものの、何が來るのか予想できない。

『氷結』

両足がくるぶしの高さくらいまで凍り付いた。地面にが張ったようにけない。

「足が…！」

次の瞬間、ウォルトさんは膝を曲げて力を溜めると、一瞬で間合いを詰めてきた。

「はやっ…！」

繰り出された拳を辛うじて剣でガードした。それでも腕が痺れる。なんとか押し返して斬りつけようとするが、足がかせず力がらない。當然、軽く躱されてしまう。

その後、しばらく接近戦での撃ち合いになった。

「ぐぅっ！」

かなり手加減されているであろう拳でも、一撃が重い。最初は手數も出たけど、次第に防戦一方になる。手數が半端じゃない。

『火…』

離れているアニカも魔法でオーレンを援護したいと思って詠唱しようと試みる。でも、２人の距離が近すぎるし、オーレンがけないから『火炎』は使えない。

まだ、ピンポイントにウォルトさんだけを狙えるほど上手く魔法をれない。

結局、オーレンは力が切れたところで降參した。

ウォルトさんはこっちに向き直ると、し距離をとって話し掛けてくる。

「アニカ。全力でボクに『火炎』をぶつけてみて」

意味の無い挑発をするような獣人じゃないことは知ってる。頷いてウォルトさんの意図に応えるだけ。

「わかりました！全力でいきます！」

神を集中して、だし惜しみなく全力で放つ。

『火炎』

ウォルトさんもほぼ同時に詠唱した。

『水撃(ウォタル)』

翳した右手から水がうねり出て、『火炎』と衝突すると蒸発を始めた。

「この『水撃』に負けないように、魔力を放出し続けるんだ」

「はい…。ぐっ…　く…」

その言葉に気合いがる。炎が勢いを増してもまだ明らかに劣勢。このままでは、押し切られてしまう。どうすればいいのか解らない。

「その調子だ。でもまだいける。炎を巨大化させるような覚で魔力を放出するんだ」

言葉通りにイメージを膨らませて、魔力を練り上げて放出する。

「ぐ、う…ぁ…ぁぁぁああああ！」

『火炎』は激しく燃え上がり『水撃』を包み込むと、蒸発させてウォルトさんに襲いかかる。

「本當に凄い……『風流(フーリー)』」

竜巻のような突風がウォルトさんのを包む。それに巻き付かれた私の『火炎』は、空へと上昇しながら霧散してしまった。

アニカが全ての魔力を使い果たし、その場にへたり込んで今回の手合わせは終了となった。

「２人ともお疲れ様」

『氷結』を解除して２人に『治癒』をかけると、アニカに魔力を譲渡して家に招きれた。

住み家に戻ると、お茶を飲みながら手合わせの反省會をすることに。

「２人とも、かなり腕を上げてるし連攜も上手くとれてる。見違えたよ」

笑顔のウォルトさんに褒められて純粋に嬉しい。やれることはやった。

「ありがとうございます！でも、まだまだです！」

「次はもっと上手くやります！」

「その向上心があれば大丈夫。ボクが言うことは何もないよ」

「「え？」」

「ん？どうかした？」

「何か、もっとこうしたほうがいいとか…」

「う～ん…。…特に無いかな？」

「「えぇぇぇ～！」」

「あとは初心を忘れず修練すれば、自然に強くなるよ。ボクなんか、あっという間に追い抜かれるだろうね」

そんなあり得ないこと口にしたあと、微笑んでお茶をすすっている。『お茶、うミャ～』とか言いそうな顔をして…。

そんなウォルトさんを見て、解ったことがある。それは『本気で言ってるんだな…』ということ。

ウォルトさんは自己評価が異常に低い。底がしれないけど、冒険者で例えるなら上位ランクはありそうな強さなのに、本人は強いなどと微塵も思っていない。

そもそも、獣人なのに魔法をるのは凄いことだと思う。本人は獣人の底辺と言っている能力も、人間に比べれば遙かに優れているし、それに加えて多彩な魔法をるのはホントに反則級だと思う。

それなのに、本人は至って普通に『ボクは弱いからね』と言ってのける。

２人は思う。

ウォルトさんは、なかなか出會えないであろう心優しい獣人。

田舎から出てきて數ヶ月。フクーベでの冒険や生活で気づいた。巷は暴な言や力自慢ばかりする獣人で溢れてる。獣人の、特に男は大半がそうなのだと実してる。

そう考えると、ウォルトさんは獣人の中でも珍しい。限りなく優しくて、強いのに力をひけらかすこともしない。森で靜かに暮らして、誰とも闘いたくなんかない。そんな獣人がいてもいい。

「今回の手合わせで、２人は學んだことがあるんじゃないか？」

ウォルトさんの言葉に、揃って頷いた。

「そんな君達だから、ボクが偉そうに教えることは何もないんだ。でも疑問があったら答えるし、手合わせも何度でも付き合うよ」

その言葉に、２人は嬉しさを隠しきれず笑みがこぼれた。ウォルトさんはまた味しそうにお茶を啜っている。

オーレンは、ちょっと興して目標を口走る。

「これからもよろしくお願いします！俺は、もっと強くなって…ウォルトさんは知らないかもですけど、マードックさんみたいな戦士になりたいんです！」

ウォルトさんは「ゴフッ！」とお茶を吹き出して狼狽えている。初めて見た…。

「ごほっ！ごほっ！ふぅ…。マードックって、狼の獣人の？」

「知ってるんですか？ちょっと近寄りがたくて怖いんですけど、男らしくて逞しくて何より強い。憧れてるんですよ！」

「そうか…。きっと、オーレンのほうが強くなれるよ」

「そうですか！？お世辭でも嬉しいです！」

心優しいオーレンが、マードックのような戦士に憧れるなんてと思いながらも、奇妙な縁のようなものをじて、何故か嬉しい気持ちが湧き上がるウォルトだった。

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