《モフモフの魔導師》35 一宿一飯の恩
暇があったら、読んでみて下さい。
( ^-^)_旦~
『この森に來るも久しぶりだ。懐かしい』
エッゾはマードックに教えられた強者に會うため、朝早くから貰った地図を頼りに目的地を目指している。
森にってから、かれこれ3時間は歩いただろうか。
『なかなか奧深い所に住んでいるようだな。おそらく、人里を離れて長年修業している獣人に違いない』
マードックが教えたのはウォルトの住み家だ。獣人の足なら、森の口から歩いて1時間もかからない場所にあるのだが…。
通常の3倍の時間をかけても住み家に到著しない理由…。それは、エッゾが極度の方向音癡であること。
エッゾが冒険者としてパーティーを組んでいた頃、現地集合のときは1度たりとも時間に間に合ったことがない。
むしろパーティー攻略を予定していたダンジョンを、エッゾ抜きで攻略された挙げ句、次の日に到著したという伝説も持っている。
そんな男だから、マードックも「大丈夫か?」と心配していたのだが、本人は未だに自分が方向音癡だと気付いていない。
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俗に言う天然…。
その後も、ふらふらと森を彷徨うエッゾは、フッと魔の気配に気付く。どうやら気配と匂いから察するに『バラック』と呼ばれる馬のような魔だ。
『腹も減ったし、狩るか…』
一目散に魔へ向かって駆け出す。バラックを視界に捉えると、駆けながら刀を抜く。
程圏にったところで、魔も嘶いて威嚇してきたが、その位では止まらない。逆に加速するとすれ違いざまに刀を薙いだ。
その直後、バラックのがゆっくり傾いたかと思うとの上半分がズルリとズレた。
ズゥンと音を響かせ倒れた魔は、ピクリともかない。刀を軽く振るってを払うと、キン!と鞘に収める。
その後、かぬバラックに手を合わせて、そのを焼いて食った。しっかりと腹ごしらえを終えて地図を確認すると、再びウォルトの住み家を目指し歩き出す。
しかし、その方向が真逆であることをエッゾは知らない…。
さらに3時間ほど森を徘徊して『このままでは今日は野営になるな』と呑気に考えていた時、突然目の前が拓けて一軒の家が目にる。『これは、もしかして…』と家へと向かう。
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歩みを進めると、獣人の匂いがした。
風上である家の方角からするということは、住人がそうであることは間違いなさそうだ。
すると、暑苦しいローブを著て手拭いで頭にほっかむりをした変わった獣人が、畑作業をしている姿が目にった。
とてもマードックと爭う雰囲気ではないな…と思いながら聲をかけてみる。
「すまん。ちょっといいか?」
その聲を聞いた変わった獣人は、ちょっと驚いたようにきを止め、こちらに振り向いた。
「ボクに何か用ですか?」
こちらに近づいてくる。顔の見える距離まで近づくと白貓の獣人。何故か見覚えがあるような…。
「あれ?エッゾさんじゃないですか」
その獣人は俺の名を呼んだが、心當たりがない。
「俺を知ってるのか?」
「覚えてないですか?前にエッゾさんがクエストに向かう途中に、此処で1泊したんですけど」
「クエスト?………あぁ!あの時は世話になった。久しぶりだな、ウォルト…だったか?」
「そうです。今日はどうしたんですか?」
ウォルトが笑顔で尋ねる。
「人捜しをしているんだが、なかなか遠い所に住んでるようで、ちょっと困っていたところだ」
地図を見ながらウォルトに告げる。
目的地はココ!なのだが…。
「それは大変ですね。そうだ。長い移になるなら、ちょっと休憩していきませんか?」
「いいのか?そうさせてもらえると助かる」
ウォルトは、エッゾがずっと自分を探していたことなど知らず住み家に招きれる…。が、當然互いに気付くことはない。
「懐かしいな…。家にって思い出してきた。あの時は、かなり遠いダンジョンに行く途中で、泊まらせてもらったんだったな」
その場所は、獣人ならフクーベから走って30分の場所だったのだが…。
テーブルでお茶を淹れながらウォルトが聞く。
「あの後、無事にクエストを終えたんですか?」
「いや。俺が著いたときにはもうクエストは終わってた。そして、パーティーをクビになった」
「えっ!」
「仲間から『今回は許せん!』とか『堪忍袋の緒が切れた!』と激怒されてな。あの時は意味もわからず混したもんだ…」
全て、エッゾが時間に遅れたせいなのだが…。
「そんなことが…。じゃあ、その後は単獨で冒険を?」
「いや、ずっと世界の強い奴に會ってみたいと思っていたんだが、いい機會だと思って旅に出た」
「いつ帰ってきたんですか?」
「昨日だ」
「ということは、あれから3年くらいですか…。隨分、長い旅でしたね」
「あぁ。だが、いい旅だった…」
エッゾは遠い目をして微笑む。
…実は3年のうち2年は道に迷って徘徊していただけなのだが、本人は気付いていない。そして、ウォルトはエッゾが方向音癡であることに気付いていない…。
何故なら【獣人に方向音癡はいない】というのは【獣人は魔法を使えない】と同様に、世界の常識だからだ。
「その背中の剣は、他の國の武ですか?」
鞘に収まっているが、微かに刀が反っているように見える。珍しい形だ。
「あぁ。『ポントー』っていうんだが、よく斬れる」
「へぇ~。凄いですね」
その後、他ない話に花を咲かせていた2人だったが、エッゾが思い出したように言う。
「そういえば、あの時のお禮をするのを忘れていた。一宿一飯の恩を忘れては冒険者の名折れだ。今度、何か持ってこよう」
「そんなの必要ないですよ」
「そういうわけにはいかん。思い出したからには、こっちの気が済まない」
「…そうだ。もしよかったらエッゾさんが見てきた剣技とか見せてもらえませんか?それで充分お禮になります」
「そんなことでいいなら構わないが…。じゃあ、外に出るか」
外に出た2人は、1本の木の前に立つ。
エッゾはいつの間にか背中に背負っていたポントーを、帯に通して左腰にぶら下げている。
「今から見せるのは『居合(イアイ)』という技だ。一瞬だから、判りにくいかもしれんが」
「わかりました。お願いします」
頷いて、木を蹴り飛ばす。
パラパラと何枚かの葉が落ちて、右手を刀の柄にかけると腰を落として前屈みになる姿勢をとった。
「フンッ!」
目にも止まらぬ速さで抜刀された後に、両斷された葉がハラリと落ちる。いい音をさせてポントーを鞘に収めた。
「凄い!技も、刀の切れ味も!」
ウォルトは純粋に驚いている。褒められて悪い気はしないな。
「もう1つ見せてやる」
そう告げて、さっきよりも強く木を蹴ると今度は大量の葉が落ちた。また『居合』の姿勢をとって集中する。舞い落ちる葉が目の前に到達したその時…。
「桜花繚(オーカリョーラン)」
抜刀したかと思うと、一瞬にして舞い散る葉は全て斬り刻まれ、倍に數を増やして地に落ちる。何度斬りつけているのか常人には判りようもない斬撃。
ふう、と一息ついて刀を収めた。
「凄い剣技です…。いいものを見せてもらいました。ありがとうございます」
「こんなものでよければ、いくらでも見せてやる」
「斬り、薙ぎ、突きと凄い連続攻撃で、息つく暇もない。かなりの修練が必要ですね」
「そうだ。これを會得するには… ん?」
ウォルトの言葉にし引っかかるものをじた。
「どうしました?」
「今の技…突きが見えたか?」
「2回、突いたように見えました。それが何か?」
まさかとは思うが…。
俺がハポンで初めてこの技を見たとき、何を繰り出しているか全く見えなかった。それなのにウォルトは見えたと言う。
その時の業師よりも、今の自分の方が技量は上だという自負がある。確認した突きの回數も間違っていない。
獣人は視力に優れる者が多いので、なくはないなと思いながらも、ふっと頭をよぎった疑念を晴らすように尋ねる。
「ウォルト…。もしかして、最近マードックと引き分けた獣人ってのはお前か?」
エッゾの急な問いに、ちょっと思考を巡らせて、『この間の賭けの話かな?』と思ったウォルトが答える。
「そうですけど…それが何か?」
答えを聞いて驚愕した。
まさか、この見るからにひ弱そうな獣人が、あのマードックと引き分けたとは予想できなかったからだ。
しかし、『桜花繚』を認識できて、引き分けたと本人も肯定している…。ひ弱そうに見えるのは俺も同じか…。愉快な気持ちがこみ上げて止まらない。
ウォルトが訝しがっていると、エッゾは不敵な笑みを浮かべながら口を開いた。
「ククッ!ウォルト……。俺と勝負しないか?」
何の脈絡もないところから突然勝負のいをけて、眉間に皺を寄せる。
「勝負?何のですか?」
「獣人の勝負といえば決まってる。真剣勝負……力の比べ合いだ!」
「お斷りします。エッゾさんは、多分勘違いしてます」
マードックと引き分けたと言った辺りからエッゾさんの様子がおかしい。絶対に何か勘違いしてる。
「いや……してない!」
兇悪に嗤いながらいきなり『居合』を繰り出してきた。間一髪、後方へ跳んで躱す。
「普通の獣人なら今ので上下に真っ二つだ。今のは……手加減してないぞ」
ゆっくり刀を収めながら鋭い視線を向けてくる。
「エッゾさん…」
「恩を仇で返して悪いと思うが……強い奴とは闘わずにいられないんでな」
エッゾさんが見つめる眼は、獣が獲を狙う眼と同じだ。冒険者時代『狂狐』の二つ名で呼ばれていたエッゾさんの格は、フクーベでは知らない獣人がいないほど有名だった。
これ以上の反論は無駄だと思いながら、気になったことだけ尋ねる。
「……わかりました。1つだけ聞いても?」
「何だ?」
「マードックは、ボクのことを何て言ってたんですか?」
「俺と闘って引き分けた奴がいる。お前が闘っても負けるかもってな…。それで、噂の強者を捜してた」
「なるほど……。ボクは強者じゃないです…。でも……負けたらマードックを恨んで下さい!」
「面白い!! さぁやろうか!」
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