《【書籍化】初の人との晴れの日に令嬢は裏切りを知る〜拗らせ公爵はを乞う〜》

レグルス公爵家からの使いと聞き、慌てて応接室に向かった。

ドキドキしながらノックして部屋にると、執事服を上品に著こなした男が立っていた。

質の良いメガネと、すらりとそこに立つ姿はよく出來る有能な人間だという印象を一目で相手に與える佇まいだった。

「初めまして、ティツィアーノ=サルヴィリオと申します。お待たせ致しまして申し訳ありません。」

「とんでもないことでございます。こちらこそ突然の來訪の無禮をお許しください。私はレグルス公爵家で執事をしておりますアーレンドと申します、以後お見知り置きを。」

彼はそう挨拶をすると、大きな花束を差し出した。

「こちらは私の主人のレオン様からで、レグルス邸に咲く花で公爵様が作られた花束です。本日は主より一つ指令をけて參りました。」

にこりと穏やかに笑いこちらの張をほぐしてくれようとしているのだろうが、『一つの指令』とやらに不安を覚え、け取るのにも余計に張する。

「な、何でしょうか……。」

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ドキドキしながら問いかけると……。

「お嬢様のお好きなお花は何ですか?」

「……………………はい?」

「お嬢様のお好きなお花は何ですか?必ず答えを頂いてこいと命を頂いておりまして。お答えを頂かないと、私は本日屋敷に戻れません。」

アーレンドさんは悲しそうに言うが、私は予想外の指令過ぎて、頭が働かなくなってしまった。

「……え、あ、……お花……ですか。特にどのお花も綺麗だと……野に咲くお花も、丹込めたお花もどれも綺麗です。」

「それでは、嫌いなお花は何ですか?」

當然彼の期待に沿う答えでは無かったようで、違う方向から聞かれた。

「……嫌いな花は無いですが、強いて言えば香りの強い花が……苦手です。」

すると、彼は満面の笑みで「ありがとうございます。」とお禮を言った。

「これで、主人の元へをはって帰れます。あ、こちらは主人からお嬢様への手紙です。」

そう言って封筒を渡し、彼は帰って行った。

部屋に戻り、また機の上で手紙と睨めっこする。

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『あなたのお好きな花が分からなかったので、レグルス公爵邸に咲く庭師自慢の花達です。以前伯爵領を訪れた際のしさは忘れられません。貴方の盡力あってのことと思います。國境で他國と魔達から國民を守る為に戦うあなたの癒しにしでもなれば嬉しい。』

そして、前回同様赤面してデスクに崩れ落ちた。

「リタ……このお花、部屋に飾りたいから花瓶を用意してくれる?」

機に突っ伏しながら言うと、「かしこまりました。」とリタが珍しく口元を緩めながら言った。

國境警備も、魔との戦いも、當然のことと思っている。

だから誰も、……アントニオ王子だって、社界で會う大人も、同年代の子も、こんな風に気遣ってくれる人なんていなかったし、そうしてしいとも思ったことなんてなかった。

彼のメッセージに心がじんわりと溫かくなり、なぜかし瞳が潤んだ。

「噂の公爵様とはイメージが違いましたか?お會いするのが楽しみですね。」

「そうね……。」

返事を書かなくては……そう思いペンと紙を用意するも、なんと書いたら良いか分からなかった。

彼の訓練を見たことがあることを書こうか。

會うのを楽しみにしていると書こうか……。

そんなことを思っているとふとアントニオ王子の言葉を思い出す。

『お前のようならしさのかけらもない野ザル。』

『剣を振り回す暴者。』

あんなクズ王子にどう思われようと構わないが、言っていることは當たっている。

部屋にある鏡臺に映った自分を見てため息をついた。

あの婚約破棄を言い渡された日、王子の橫に立っていたマリエンヌ嬢は、輝く金髪に、深いエメラルドグリーンの瞳。白魚の様な手にけるような白い、紅くづく。華奢でありながら出るところはしっかりと主張をしているらしい付きをしていた。

まさに庇護をそそるようなの子だった。

それに比べ、自分はどうだろうか。ありきたりな薄い茶い髪に、濃い茶の瞳、焼けたに剣だこの出來た手は荒れている。

立ち姿もどこか男らしい気がする。

魅力どころか、らしさという言葉をじさせる部分が何もない。

どこに公爵様の目に留まるところがあったのか理解できない。

むしろ本當に私を見たのなら惹かれることはないのではと思う。

暗い気持ちになりながら、手元の紙とペンを引出しにしまった。

翌日から、毎日レグルス公爵様から贈りが屆いた。

らしい、鈴蘭を連想させるペンダントとイヤリングのセット。

華奢なデザインになっているが、細工や使われている寶石は見ただけで高級品と分かる。

『今いる南部で、見頃の鈴蘭が貴方のように可らしく、どうしても屆けたくなりました。』

その翌日はパステルグリーンと、パステルイエローのマーメイドラインのドレスが屆いた。

らしい合いだが、スッキリとしたラインが大人っぽさを出し、リタは「お嬢様のイメージにピッタリなドレスです!」と太鼓判を押してくれた。

また次の日は、茶と黒のペアの可らしいテディベアが屆いた。

それを見たテトが、「茶と黒のペアってまさか……。お嬢と公爵……?」と変な顔をしてぶつぶつ言っていた。

ぬいぐるみなんて自分のイメージと違う気がしてしくても手を出さなかっただった。

そして毎回、添えられている手紙が私の赤面を習慣化させた。

『水平線の凜としたしさに貴方を思い出した。』

『倒した海龍から取れた魔石の輝きに貴方をじた。』

『貴方に送る為、癒し効果のある魔石を持つ大ダコばかりを退治した。戦場で使う時にでも自分を思い出してくれたら嬉しい。』

なんでそこから私を連想する要素があるの?とツッコミたかったし、大ダコばかり獲しては、魔の生態系も崩れやすいので萬遍なく退治するべきでは!?とか、思うところが無かった訳ではない。

……訳ではないが、次々と屆く贈りのお禮の手紙を書く容に気持ちの変化も日に日に変わっていった。

一週間が経つ頃、結婚をれる旨の返事を出した。

父と、母のいる執務室に公爵様への返事を報告しに行くと、眉間に皺を寄せた母に、衝撃の言葉を伝えられた。

「分かった。一週間後に挙式を上げることになったから、準備をしておくように。」

「……はい??」

今結婚の承諾を決めた返事を出したと伝えたのに、なぜ挙式が決められているのか……。

「あの、一週間後は公爵様がこちらに來られる日ですよね……?」

聞き間違いだろうかと思い、確認する。

「どうせ結婚するなら早い方が良いだろう。公爵にも話はつけてある。挙式は王都の教會で挙げる予定だ。」

ありえないと思いながらも、嬉しい気持ちと、面と向かって顔を合わすのが怖い気持ちがないまぜになり、小さく「はい。」としか返事ができず、そのまま執務室を出た。

どことなく重い足取りで廊下を歩いていると、「姉上。」と後ろから聲をかけられた。

振り向くと、サラサラの金髪の可い顔をした弟が嬉しそうに駆け寄ってきた。

「オスカー、どうしたの?」

「この度はご婚約にご結婚、おめでとうございます。レグルス公爵様といえばあの噂に名高い王國騎士団の団長を務めてらっしゃる方ですよね。とても立派な方だと聴いています。あのクズ王……じゃなくて、アントニオ王子と破談になって僕も嬉しいです。」

こんな可い八歳児にまでクズと呼ばれる王子なんてどこの國にもいないと思いながら、「ありがとう。」と返事をした。

「姉上がいなくなってしまうのはとても寂しいけれど、僕がサルヴィリオ騎士団の団長になった時立派になったと褒めてもらえるように頑張ります!」

鼻息を荒くしながらガッツポーズを作り、尊敬の念をこめたキラキラして目で私を見てくる弟はとても可い。

「オスカーなら、お母様のように立派な団長になれるわ。」

そう言うと、オスカーはキョトンとした。

「もちろん母上も尊敬する騎士ですが、僕は姉上の様になりたい。」

「……え?」

「先日、魔の大群が押し寄せてきた時、こちらの騎士団に死者が出なかったと伺いました!!それから、隣國の人売買を行う組織を捕縛して領民への被害も出なかったと……。毎年何人か犠牲になっているのに、姉上が団長になってから被害はゼロと聞きました!!全て姉上の采配で功したと聞いています。皆自慢の団長だって口を揃えて言っています。」

しすぎて酸欠気味なのか、オスカーの顔が段々と真っ赤になっていっている。

「流石姉上の弟だと、言われるように僕頑張ります!!」

私としては、母のように一人先陣を切っていく姿が格好よく見えるが、私にはその才能も能力もない。今自分ができることを一杯頑張った。それを弟にそんな風に言ってもらえて嬉しくないはずがない。

母に認められなくても、こうして認めてくれている人がいる。自分の努力は無駄ではないと……。

「ありがとう。既に自慢の弟だけど、……オスカー、貴方の長がとっても楽しみだわ。」

そう言いながら、自分より一回り小さいを抱きしめ、滲む視界を彼から隠した。

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