《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》5 はい、ちょっとチクッとしますよ

額に冷たいものをじてミリッサは目を開けた。

ここは……。

目の前にチャーミングなの顔。

を著ている。

白い天井に蛍燈。

「ご気分は?」

聞いてくると目があった。

「あ……」

言葉が続かない。

朦朧としていた。

ベッドに橫たわっていた。

「先生」

「大丈夫ですか」

「先生……」

フウカとジンとランが口々に言う。

「私、今日からサークルにります。れてください」

ん?

メイメイもいるのか……。

「このタイミングで言うことか? 喜んで、って言うけど」

フウカはメイメイには顔も向けずにそう応えると、

「先生」と心配そうな顔を近づけてきて、手まで握ってくれる。

「ここ、は?」

ミリッサは自分の聲に驚いた。

あまりに弱々しかった。

「醫務室」と、看護師は短く応え、邪魔だと言わんばかりにフウカとの間に割ってると、酸素マスクを押し付けてくる。

「點滴をします」と、今度は右腕を取った。

「はい、ちょっとチクッとしますよ」

京都競馬場の醫務室。

そうだ。

ルリイアのくれたチケットを持って、パドック脇の馬主席へ向かったのだった。

メインレース秋華賞の勝ち馬が「イトシノレイチェル」で、猛然と差しきったことをアナウンスが絶していた。

二著、三著が、それぞれウタエチョットマ、ジェイピーゼロイチで、ミリッサは的中とはならなかった。

そして、言われるがままに十六番「ハイペリオン」の特別に長い手綱の先っぽを持ったのだ。

立派な軀を持つ牡馬で、艶やかな黒い馬が雄大だった。

対象ではなかったが、こうして縁を持った以上、買わねばなるまいと本命単勝に抜擢したのだったが、さてどうなることやら……。

地下馬道に降りていく。

しんがりだ。

ジョッキーはもちろん手綱を持つ廄務員も、その先端を一ファンが握っていても、まったくの無関心だ。

変に話しかけて、馬の気を散らせることになってはいけない。

心の中では、きっと、なんでこんなイベントを、迷なことを、と毒づいているに違いない。

地下馬道には見學ツアーで何度もったことはある。

しかし、今日のようにレース前の闘志漲らせる馬たちと一緒に歩くのは初めてのことだ。

コンクリートの床や壁に、蹄鉄の音がカツカツと快く響き、いやがうえにも期待が高まる。

勝ってくれよ。

泣いても笑っても、今日の最終レース。

ハイペリオンは落ち著き払って、悠然と歩を進めている。

トモは力強く、踏み込みも深い。歩調がれることもない。

よそ見をすることもない。ぐっと床だけを見つめ、首の上げ下げも小気味よい。

発汗もないし、余計なきもしない。

期待が持てる。

前を行く馬たちが曲がり角に消えた。

そこを曲がれば、馬場に向かう上り坂。そしてその向こうには青空が見えるはずだ。

と、記憶はそこまでだった。

「どうして、ここに……」

かろうじて聲を出したが、ふと別の記憶が蘇ってきそうな予があった。

「北側のインフォメーションの裏で。植込みの前に」

と、メイメイ。

フウカの怪訝な聲。

「先生、あのエスコート券、もらったんじゃなかったんですか? 參加しなかったんですか?」

「行った」

「じゃ、なぜ……」

「それが……」

ルリイアが駆け込んできた。

「先生! 大丈夫ですか!」

「や、あ……」

「心配してたんですよ。地下馬道から先生が上がって來られないので」

「ああ……」

「どうされたんです?」

「それが……」

「でも、よかった。ご無事のようで」

ルリイアは、心配顔をし緩めた。

「本當に心配してたんですよ」

「すま、ない」

「先生が他の出口から上がってしまったなんて考えられないし」

額に手を當ててくれた。

「そもそも地下馬道に一般の人が使える出口って、ないし」

と、これはフウカに言ったようだ、

あれ以降の記憶が、滲み出るように脳で形になってきた。

そうだ。

ハルニナが……。

今、この看護師と同じように、顔を覗き込んで……。

「大丈夫」と、言ってくれたような気が……。

ハルニナのその大丈夫は、心配からそう言ったのではなく、安心して、という意味だった……。

ただ、ハルニナはすぐに視界から去り、誰かに何かを指示し……。

そしてまた意識は途切れた……。

    人が読んでいる<パドックの下はパクチーがいっぱい/女子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください