《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》20 観覧車ではなく、コーヒーカップか

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やれやれ、この男、今日は競馬もせずに、考え込んでいる。

箒を持ったと立ち話の後は、制帽を被った男と立ち話。

やっと一人になったかと思うと、パドックに行くこともせずに、スタンドに座ったきりこうとしない。

この男を見張ることにどんな意味があるのか、もうそろそろ聞かせてもらわねば。

かれこれ五、六年にもなる。

退屈としか言いようがない。

最近までは、まだよかった。

オロチがうろついているおかげで、ワレにもというものがあった。

今は、奴も姿を消し、ワレの行を制約するものはもう何もない。

ハリがないとはこのことだ

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ポーハーハー・ワイのゲートではハルニナが待っていた。

さて、どうするか。

二人で観覧車にでも乗って、話を聞くか。

ハルニナは微笑むだけで、會の理由をまだ話そうとしない。

まあ、いい。

どこか人目の付かないところに連れて行けということだろう。

まだ、は十分高い。

ここで立っていれば人目にはつく。

しかし、聲は聞こえまい。

立ち話でもいいではないか。

と、ようやくハルニナが、こちらへ、というようにちょいと手を挙げ、歩き始めた。

観覧車ではなく、他のライドだな。コーヒーカップか。

違った。

通り過ぎていく。

まさか、スリラーハウスでは。

これも違う。

メイメイと出會った。

というか、出會ってしまった。

そもそも、メイメイはここでアルバイトをしているのに、なぜ、ハルニナは。

が、メイメイは、軽く會釈を寄越してきただけで、驚くふうでもないし、近づいて來ようともしない。

そうか。

ここで會うことを知っていたのか。

ハルニナとメイメイは仲が良い。

話してあったのだろう。

ハルニナは今日も黃いローブ姿。

いやがうえにも目立つ。

こんな娘はめったにいない。

若者のファッションのバリエーションは、ここ數年で飛躍的に増えたとはいうものの、黃いローブがよほど好きなのか、何か意味があるのか。

一言で黃といっても、山吹、ウコン、たまご、レモンなどと、日によって違う。

いったい、何著待っているのか、と聞いてみたいが、ミリッサはそれも自分にじている。

普段から、學生の服裝を話題にすることはない。

たとえどんなに素敵であろうと、逆に、今から海水浴に行くのかというような出度の高い格好であろうと。

褒めたら褒めたで、指摘すれば指摘したで、どうけ取られるか、分かったものではない。

毎年、契約更改時に渡される講師行指針には、節度と見識ある紅焔生としてふさわしい服裝がどうのこうの。つまり、華な服裝の學生には注意して是正させよと書かれてあるが、いまだかつて、ミリッサはその指針を守ったことがない。

例えばハルニナのように、いつも同じような黃いローブ姿なんて、どんな基準にもあてはまらない。華でも、質素でも、清楚でも、上品でも、セクシーでも、ダンディーでも、ゴージャスでも、なんでもない。

これをだめだと言えば、じゃ、私に何を著ろというの、と逆襲されて終わり、だ。

それにしても、ハルニナよ、どこへ行く。

ポーハーハー・ワイは、あらかた通り過ぎたぞ。

そう言おうとした時、目的地に著いたのか、パッと立ち止まり、振り返った。

至近距離。

まともに目が合った。

近すぎる距離

ミリッサは、し後ずさった。

この距離で向き合っている姿を、メイメイに見られるのはまずい。

しかし、ハルニナはますます笑みを大きくしただけで、依然として話しかけてこない。

元々、極端に口數のない娘。

授業中はもちろん、學食で一緒に食事することになった時も、競馬サークルの部活や競馬場でも。

以前はもうし口數はあったと思う。

それは単に、今より若く、學生生活をエンジョイしようとしていたから、だったのかもしれない。

何回も単位を落とし、留年を重ねていれば、おのずと口數もなくなろう。

「ここよ」

二人はポーハーハー・ワイの最奧部、野外音楽堂の裏にある資材庫のような小屋の前に立っていた。

ここで?

まずいぞ、これは。

この中に二人きりでるというのか。

しかも、木々がうっそうと茂る薄暗がり。一足先に夜の気配さえ漂っている。

どう勘ぐられようとも、抗弁できない。

「ハルニナ、ここで話そう。何も、中にらなくても」

幸い、周りに人の姿はない。

「立ち話じゃあ、さ。もっとおりったお話が」

だめだ、と言おうとした時、小屋の扉が開いた。

えっ。

顔をのぞかせたのはメイメイだった。

さっき會ったときは、ポーハーハー・ワイ・スタッフの制服を著ていたが、普段著に著替えている。

「どうぞ」

は?

なにが、どうぞだ。

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