《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》28 もしかして、お家に帰ってないとか

第一レースのパドック。

ハルニナを除く、全員が集まっている。

ケイキちゃん殺人事件を解決する、というフウカの檄の元、競馬にも真剣ムード。

今日は花賞。

日本のクラシック三冠競走最終戦。

二度の坂越えと三千メートルの長丁場。

「最も強い馬が勝つ」と稱される重賞レース。

京都競馬場には多くの観客が詰めかけていた。

もう一人の四年生、スペーシアも第一レースから來ている。

三か月來の復帰だ。

ご無沙汰してすみません。待ってたよ。元気?

などとわされたが、なぜか、と聞く者はいない。

聞いても答えまい。気分屋なのだ。

しかし、聞かぬも水臭い。ということでミリッサは聞いてみた。

「どうしてたんだ?」

もちろん、叱責口調ではない。

「それが……」

言わなくてもいい。

気分がすぐれなくて、というような理由でお茶を濁すのだろう。

違った。

「祖母の介護で、鹿児島に」

「そうだったのか。大変だったんだな。それで、もういいのか?」

「はい。亡くなりましたので」

「そうか……。それはご愁傷様です」

口々に、お悔やみの言葉を言ったが、その話題はそれきり。

まさか、死因はなにかとも聞けず、話は続きようがない。

それに、どことなく、本當かな、というニュアンスもあった。

「出て來たよ」

ジンの聲に、パドックに集中。

「一番、やっぱりいんじゃないかな」

「でもさ、馬重、増えすぎじゃない? いくら休み明けと言っても」

「すごい発汗だし」

などと、たちまち競馬モードに切り替わった。

昨夜、ミリッサは京都競馬場の地下の部屋で、思いのほかぐっすり眠った。

誰かが訪れてくることもなく、危険をじることもなかった。

目覚めて気付いたが、広めのシングルの部屋だった。窓がないことで気にじるが、テレビに冷蔵庫、一通りのものは揃っている。

朝食は部屋に運ばれてきた。

ご飯とみそ、ウィンナーと卵焼きとキャベツの千切りというレトロな家庭的ニューだった。

昨夜の晩餐は、一何だったのだろう。

何を食べたのかほとんど思い出せなかった。

最初のスープは、胡椒の効いた野菜のスープだったことは覚えているが、メインがなんだったのか、パンだったのかご飯だったのかさえ思い出せなかった。

浴室のことは覚えている。

食事の後、メイメイに案されて向かった先は、地下をさらに深く降りていった天井の高いエリア。そこに巖がむき出しになった風ある天風呂があったのだった。

天風呂というより窟風呂だな、と言ったことを覚えている。

先客はなかったし、ってくる客もいなかった。広い浴槽を獨り占め。

それにしても、と思う。

今、目の前を周回する馬を見ていると、昨夜のことが噓のように思えてくる。

「先生、今朝はなんだか、すっきりしてますね。髭、剃ってないけど」

などと、張本人メイメイに言われては。

「もしかして、お家に帰ってないとか」

「さては昨日、素敵なお方と熱々のデートとか」

ランやジンにはからかわれ、ギクリとしたが。

レースは順調に進み、第四レースが終わった。

パドックを見ても集中できないし、そもそも事前の予想さえしてきていない。

適當に買った馬券が四レースとも的中し、そんなもんだな、と苦笑いした。

「さーて、さっさと飯食って、頑張るか!」

というジン。

「一緒に行こう。あらかじめ何人かには會ってるし」

「えっ、そうなんですか!」

ジンは、捜査チームの、競馬場関係者聞き込み擔當である。

「清掃員のと警備員の男、だけどね」

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