《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》30 これで、プラマイゼロ

また考えることが増えた。

ケイキちゃん殺人事件を自分たちの手で解決する。これに乗り気になったのは、正直に言うと、ミリッサ自がノーウェのことを快く思っていたからだった。

そしてもう一つ、警察が再捜査を始めた。ということは、事故という結論に疑念が生じたということだから。

それなのに、ノーウェの私生活は、決して褒められたものではなかったという。

そうなのだろうか。

またノーウェのことを思い出した。

素晴らしい人で、実際、男心をわしづかみにする魅力を持っていた。

と一緒にいるとき、ミリッサ自、自分の心を意識的にコントロールする必要があったことは確かだ。慎重の上にも慎重に。

いろいろなことが思い出される。

授業で、朝のタクシーで、食堂で、大學からの帰り道で。

競馬場では、こんなことがあった。

お晝時にはいつも、一緒に食べるといって付きまとわれたな。

こんなこともあった。ボーハーバー・ワイでコーヒーカップに一緒に乗ったことがあった。

これじゃまるでデートだ、と思ったものだ。真ん中のハンドルを力一杯回すのはもっぱらノーウェの方だったが。

學校でもこんなことがあった。

ほとんど人の通らない、校舎と校舎を繋ぐ四階の連絡通路でたまたま出會った。

ノーウェはこちらの姿を認めると、両腕を大きく広げて駆け寄ってきた。

まさか、ここでハグする気か、とを固くしたが、ハイタッチしようというのだった。

それでさえ、學校ではありえないこと。肝を冷やしたものだ。

ねえねえねえねえ、ねえ、と言いながら、何かにつけて話しかけてきたノーウェ。

授業中、じっと見つめてくる癖。デザインの授業では、手をかせ、と叱ったものだ。

そういえば、ハイキングにわれたこともあった。

六甲山に登って、上から大學がどう見えるのか、見てみたくて、と。

大學の校舎群の現実的外見の見え方と設計者の意図との相違の考察、という學生にとっては面倒な課題を宿題にしたときのことだ。

數人の學生が賛同して參加するという。

六甲山の上から見てみるというアプローチの意外さで、容は薄くともなんとかクリアしようという作戦だ。

しかし、面白い考えだと思ったミリッサも參加したのだった。

ハイキングといっても、本格的に山道を登ったわけではない。

ほとんど林道や車道を歩き、そこここで大學が見えたといってははしゃいで寫真を撮り、蛇が出たといっては寫真を撮り、イノシシ捕獲用の罠があれば、ってみろと押し付けあったり、帽子に蝶々が止まったと言っては喜び、カワセミを見かけては大興

六甲の尾筋に出ると、そこで終了。いたるところにある休憩所でサンドイッチなどにパクついただけのこと。

曲蕓飛行の猛禽トンビに、そのサンドイッチが手の中からさらわれたことを繰り返し話しながら、下山はロープウェイでというお手軽コース。

學生たちは大いに楽しんだようだったし、ミリッサも楽しんだ。

その間、ノーウェは言い出しっぺとしてみんなの世話を焼き、なんと、萬一の時のためにと全員分の非常食までリュックの中にれていたのだった。

もう、斷片的にしか記憶にないが、下山後、ロープウェイ駅の近くの公園で、おやつと稱してその非常食は食べてしまった、と思う。

ノーウェは、ねえねえねえねえ、ねえ、と話題を作ってはみんなに話しかけ、駅で解散となるまで、しっかりホスト役を務めあげた、と思う。

そのノーウェが、男漁りの悪……?

とてもそんな……。

信じられない……。

ジンはさっき言ったことをすっかり忘れたのか、別のことを言い出した。

「アイボリーがサークルに部したいんだって」

「お、そうか」

「いいかな」

「それはフウカに言わなきゃ」

「言ったよ。でも、ミリッサにも了解取った方がいいのかなって」

「もちろん歓迎だ」

しかし、彼は競馬場のアルバイトを掛け持ちしている。

「アルバイト、ひとつ、首になったんだって」

「へえ! どっちの?」

「イベントの方。會社が廃業したんだって」

「そうなのか……」

「さっそく、ケイキちゃん殺人事件にも加わってもらうよ」

「言ったのか?」

「いけなかった?」

ジンがニッと笑った。

スペーシアとアイボリー、ジンの中ではこれでプラマイゼロ、なのだろう。

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