《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》34 二つほくろもうれしそうだった

第十二レースが終わり、生まれて初めての帯封を忍ばせたバッグを大事に抱えながら、いつものミーティング、ルリイアのマンションに向かった。

「パドックを見ろっていうサークルのポリシー、どうなんだろ」

「意識して買い間違えた方がいいかも」

「こらこら」

「意識して買い間違えるって、どうやって」

「それにしても、競馬解説者の言うことって」

「なんなんだろうねー」

などと言いながら。

例によって、買い目の解説はあっさり終わり、買い出しに行ったジンとアイボリーが戻ってくると、々豪華な祝宴となった。

「じゃ、報告のある人は?」

というフウカの口火で、ケイキちゃん殺人事件の話題に移行する。

じゃ、ボクから、と言ったのはジン。

清掃員への聞き取りと警備員への聞き取りの報告。

売店の店員からは意味のあることは聞けず、客への聞き込みも果なし。

「ルリイア先輩の周辺にも聞き込みをする予定です」

とジンの報告は終了した。

次に口を開いたのはラン。

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ノーウェの親族への聞き込み擔當である。

もっとも難しい役を引きけることになって、困していたラン。

それでも、わずか二日でそれなりに果を挙げていた。

電話で聞いた範囲、と斷ってランが話してくれたことは、疑問符がたくさんつく話だった。

「一言でいうと、意外な話」

ノーウェはまだ新婚。

パートナーはそこそこ売れるようになった蕓人で、最近はたまにテレビでも顔を見かける。

ものまねを得意とする三十半ばの好男子で、通稱ユーリー(由利)。

「通稱というより蕓名。で、ノーウェ先輩の自宅に電話した。出たのが夫ユーリー。すぐに切られそうになって焦った」

「迷そうだった?」

合いの手はフウカだ。

「ううん。そうじゃなく、忙しいみたいで」

「仕事が?」

「そう思ったんだけど、ちょっと違うみたい。電話切ってから、マンションに行ってみた」

「へえ!」

「そしたら、外車がずらっと並んだ豪華なマンションなんだけど、部屋に続々と人が集まってくるのね。それも、著飾ったきれいなの人ばかり」

「どういうこと?」

「なにか、パーティーでもするような」

「へえ! でも、あんた、ノーウェ先輩の部屋、知ってたの?」

「もちろん。抜かりなく調べておいたからね」

「へえ! できるのね、そんなことが」

「まあね」

人のプライベートが極端に隠された今、住まいを特定することは難しい。

名前でさえ、通稱で通すのが一般的な世の中だ。

「どんな方法で?」

「それって、聞いて意味ある?」

ランは種明かしをしようとしなかったが、問題はそこにはない。

ノーウェの話が先だ。

「パーティーが終わったのは金曜日の深夜零時を回ってた。で、聞いてみた。出てきた人に」

「うんうん」

「なんと。なんのパーティだったと思う?」

「さあ、新しいテレビ番組か何かのレギュラー出演が決まったとか」

「とか思うでしょ。全然違う」

「じゃ、なに? 子供の一歳のお誕生日とか」

「ノーウェ先輩に子供はいないよ」

ランは勿つけすぎたと思ったのか、あっさり訳を話した。

「新しい奧さんをもらうんだって」

「えええっ! どういうこと!」

「プレ披宴ってところ」

「なんだって!」

「何回言わせる気? この度、めでたく別の新しいと結婚することになり、そのお披目も兼ねて、ささやかながら自宅でパーティーを、ってこと」

信じられない、なんて男。

という結論にはなった。

「でね、このユーリーは怪しいってことになるわけ」

「そりゃそうだ」

「ここからは警察の仕事。もうとっくに調べてると思うけど、ユーリーのアリバイはどうかってこと」

ランは、フウカにその役割を託し、次の話に移ろうとした。

「ちょい待ち。そのパーティの參加者に見知った人は?」

フウカの問いに、ランはしも迷わず、こう明かした。

「言い忘れるところだった。パーティの參加者がパラパラ出てきたんだけど、最後に出てきたのは」

「まさか」

「おい!」

「そう、ジーオ先輩」

「なんと!」

ということは、このことをジーオは事前に知っていたと思っていいだろう。

パーティに招待するのに數日前に連絡、とは考えにくい。

なんだかなあ、という雰囲気になったが、さりとてことさらジーオを責めるわけにもいかない。

「で、次のターゲットはユーリーの母親。ちなみに言っとくけど、ノーウェ先輩の親は摑めなかった。ユーリーは曲りなりにも蕓能人だから報はいっぱい出てるけど」

ランは、この二日でいったいどこまでやったのだろう。

「母親はモアナという人。彼には直接會った」

「へえ! すごいな、ランの行力は」

「部長にお褒めいただいてうれしく存じます」

「で?」

「これがなかなかので。ノーウェ先輩のことはボロカス。今度のは息子にぴったりだって」

「なんかむかつくね」

「あれは、息子フェチだな。一人息子溺タイプ」

「その、モアナがノーウェ先輩を亡き者にしようとしたってこと、あり得る?」

「さあ。どうかな。あり得るかもしれないけど。ま、それも警察の仕事かな」

次はユーリのお父さんに會うつもりなんだけど、それはまだ。

競馬場の清掃関係の仕事をしてるそうなんだけど、今日は會えなくて。

そう言って、ランは報告を締めくくった。

ミリッサはランの行力に舌を巻いた。

それほどこの件に前のめりになっていたようには見えなかったが、素早いきだ。

フウカに散々褒められて、喜んでいるランの顔に思わず見ってしまった。

「いやよ、先生。そんなに見つめちゃ」

「いや、すごい」

「じゃ、今度、デートしよう」

「ハイハイ。仰せのままに」

冗談のつもりだったが、ランは本気にしたのか、冗談に冗談を上乗せしたのか、

「次の木曜日、一緒に帰りましょう」

と、言われてしまった。

一緒に駅まで、ということなら、全然構わない。

來週の放課後帰宅デートは、これで予約が埋まった。

なんとなく、もてているようでうれしかった。

ランの二つほくろもうれしそうだった。

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