《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》35 全部、噂レベルだし

次に口を開いたのは、メイメイ。

ノーウェの友関係その一。大學編である。

「それが、言いにくいんだけど、芳しくない」

「聞けなかった?」

「そうじゃなく……」

今日、ジーオは參加していない。

ハルニナはノーウェと同年學だが、親しかったわけではない。

気にすることはない。

「いいから、話して」

フウカとハルニナに促されてメイメイが語ったことは、ミリッサを驚かせた。

「いまからする話は、全部噂だよ。本當かどうかはわからない」

とジンは斷って、ジントニックでらせた。

「おいしいね。この缶のお酒」

「いいから、いいから」

「ハイハイ。前に大學にウチダっていう職員がいたそうなんだけど、ノーウェ先輩とのことで首になったんだって」

ノーウェに惚れたあまりに、ストーカーまがいのことをやって、大學から追放されたらしい。

「でも、職員仲間からはウチダに同する聲が多くて」

いわゆるピンクトラップに落ちたらしい。

「男職員の中には、危ういところで踏みとどまれた人も多いんだけど、ウチダっていう人は騙されちゃって」

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ウチダ。

ミリッサも覚えている。

大學で教鞭をとるようになった時にはすでに在職していた教務課の職員。

新人講師で様々な手続きに手を焼いていたミリッサに、粘り強くいろいろなことを教えてくれた男である。

優しい風貌の持ち主で、自由な雰囲気を持つ男だった。

妻子あるかどうかは知らないが、あの男がノーウェに付きまとっていたとは……。

ノーウェからそんな話はもちろん聞いたことはない。

二人が一緒にいた記憶もない。

なぜ?

ウチダは何をしたのだろう。

「それが、実際は免職になったんじゃないらしい。とりあえず一週間の出勤停止、つまり謹慎処分になった。ところが、それきりウチダは大學に來なくなったって」

そうだったのか。

親しくしていたわけでもないし、普段は接點もなかったから、そんなことになっていたとは知らなかった。

「職員の間では、もっぱら悪いのはノーウェ先輩の方で、ウチダって人は被害者。そんなことを言う人がたくさんいた」

ランと目が合った。

ミリッサは?

どう思っていたのか、という目だ。

ミリッサは迷った。

自分のノーウェに対する印象と、今の話にはずいぶん隔たりがある。

いや、自分も騙されかけていたのかもしれない。

ミリッサは一気に落ち著かなくなった。

かろうじて、

「で、ウチダはどうなったんだ?」

と、かわすだけで一杯だ。

「それが、行方不明」

「え?」

「結局、大學はウチダを解雇したんだけど、本人には連絡がつかず」

これについても警察は調査したのだろうか。

もし今の話が事実なら、ウチダはノーウェを恨んだことだろう。

あってもなくても、ノーウェがストーカー被害としてウチダの名を挙げたのなら。

ふと思った。

フウカはその噂を知っていたのではないだろうか。

それを知っていて、このケイキちゃん殺人事件なる調査を始めたのだろうか。

なぜ?

単に、その結果をもって、人に手柄を立てさせようとしたのだろうか。

「もうひとつ。アンジェリナって先輩がいたんだ。ハルニナは知ってるでしょ。先生は?」

アンジェリナ。記憶にない。

「ノーウェ先輩とジーオ先輩は仲良し。でも、もう一人いたんだ。仲良しが」

ハルニナが微妙に笑ったが、何も言わなかった。

「アンジェリナっていう先輩なんだけど、職員の間では、同の言葉が多くて」

ノーウェと仲良しとはいえ、いわば上司と部下。

もっと言えば隷屬的でさえあったという。

「いつもノーウェ先輩に用事を言いつけられていて」

ミリッサは、アンジェリナという名、ノーウェとジーオと一緒にいた學生、という言葉を、當時の授業中の景の記憶の中に転がしてみた。

名前はピンとこない。

授業中の景の中にもない。

績は? これも記憶を蘇らせる効果はない。

報源を明かすのはどうかと思うから言わないけど、泣いている姿を見かけた職員もいたんだ」

ミリッサの中に、おぼろな記憶が姿を現した。

おとなしい、目立たない學生で……。

顔や姿は見えてこないが、なんとなく、ノーウェがいつもきつい言葉で話していた學生……。

「そういや、アンジェリナって人、大學の助手してなかった?」

と言ったのは、アイボリーだった。

「去年、ちょっとの間、いた人」

完全に迂闊だった。

そうだった。

ほんのひと月ほどだろうか。

結局、挨拶もしなかったし顔を合わすこともなかったが、アンジェリナがアルバイト的に大學に來ていると聞いたことがある。

それほど、ミリッサにとって印象のない學生だったわけだ。

「メイメイ、でも、それって、アンジェリナ先輩が今度の事件に絡んでるってこともあり、ってこと?」

フウカの問いにメイメイは、首を橫に振った。

「何でもかんでも怪しいって方向にもっていこうとしてるんじゃないよ。ノーウェ先輩の友関係を調べてたら、そんなことも出てきたってだけのこと。さっきも言ったけど、全部、噂レベルだし」

「そう?」

「先生はどう思う?」

ミリッサは、ノーウェに対する気持ちを學生たちに見かされているのではないかという気にさえなった。

教える側の印象とあまりに違う噂、あるいは事実。

突きつけられて、まともに相槌を打つこともできなかった。

ジンがスペーシアを見ていた。

握り壽司に手をばしたかと思えば、ピザを頬張る。

ハイボールの缶に口をつけたかと思うと、今度はたこ焼きに爪楊枝を突き刺す。

會議が始まってから、一言も口をきかない。

何が話し合われているのかさえ、分からないだろう。

誰も教えようとしない。

それならそれで、聞けばいいものを。

ミリッサもし意地悪な気持ちになって、そのままにしていた。

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