《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》38 のけぞるようにして

依然、何も起きない。

十分経過、十五分経過。二十分経過。

ようやく突き當りからルリイアが姿を現した。

直後、ケイキちゃん。

突き當りのところで、二人が立ち止まった。

ケイキちゃんが繋いだ手を振りほどいた。

ルリイアが手を差し出し、繋ごうとするが、ケイキちゃんはそれを無視して歩いてくる。

仕方なく、という様子でルリイアが先に立った。

階段のところまで來て、ルリイアが立ち止まった。

振り返って何か話している。

と、ルリイアは元來た道を戻り、突き當りを右に消えた。

ノーウェはその場に立ち止まっている。

ルリイアが、忘れをしたので自分だけ控え室に戻ったというシーンがこれだ。

ミリッサは畫面に目を凝らす。

ケイキちゃんの様子に。

周囲の変化に。

畫面の縁に現れるかもしれない何かに。

ケイキちゃんは、正面を向いて立っている。

下り階段のすぐそばで。

一歩でも左にけば、階段の一段目。

一分、二分と過ぎていく。

ん!

ケイキちゃんが右を向いた。

あっ。

右足を後ろに引いた。

踵が階段にかかった。

ああっ。

ケイキちゃんがバランスを崩した。

危ない!

のけぞるようにして、ケイキちゃんは背中から階段に落ちていき、畫面から消えた。

それだけだった。

ミリッサは、最初の方針を変更して、二人が突き當りから現れるところから再生した。

なにか、あるはず。

でなければ、ケイキちゃんがあんなふうに足を引くことはなかったはず。

ん、そうか。

ケイキちゃんは足元は見えていないのではないか。

さらに言えば、階段のすぐ橫に立っているとさえ思っていなかったのではないか。

いや、足元は見えずとも、階段のすぐ橫に立っているのはわかっていたはずか。

何度再生してみても、ケイキちゃんのき以外になにも発見できなかった。

黒い小さな點が、ちらりと現れ、白い筋が走っただけ。

ケイキちゃんが階段に落ち込んでから四分半経過。

突き當りからルリイアが現れた。

走ってきて、畫面下に消えた。

再び訪れる靜寂。

しばらくして畫面下から警備員が走り出てきた。

階段のところまで行き、下を見て一瞬立ち止まり、慌てふためいて降りて行った。

すべてがそれだけだった。

畫は終了した。

ミリッサは椅子の背にもたれ、目を瞑った。

深夜零時をとうに回っている。

目も頭も疲れていた。

警察もそれこそ何度も見たことだろう。

あとはジンの観察を待つのみ。

自分が何度見直しても、発見できることはないだろうと思った。

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