《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》40 あんな巨大な蛇、普通は気付くよ

メイメイに引きずられるようにして、ミリッサは阪急の駅、JRの駅、阪神電車の駅も通り過ぎ、小さな神社の境った。

始めて來る小さな神社だった。

小さい割に、木々がうっそうと茂り、鎮守の杜を形している。

常緑樹の間に灌木や雑草がびっしり生えていて、都會の中とは思えないほど薄暗く靜寂で、外界から隔絶していた。

通り過ぎる者さえなく、子供たちの姿もない。

犬を連れた散歩の人さえいない。

「ここで。じゃ、先生、どうぞ」

「どうぞって」

「ここなら學生も職員もいないよ。キスしても平気」

「おい!」

「おふざけすぎ?」

「當たり前だ」

「じゃ、本題を」

メイメイの話はこうして始まった。

「まず先生が殺されかけた理由。これが一番知りたいでしょ」

犯人はハジカミという人。

老人。競馬のある日はいつもスタンドにいて馬券を買ってる。

彼はルアリアン。

勘違いしてたのね。

先生を敵対する相手だって。

「ハジカミ……」

きっと、あいつだ。

競馬場でやたらと目につくやつ。

時々目が合う、不吉な老人。

「あの日、先生は第十二レースの出走馬の手綱を持って地下馬道を歩いてた。そこで襲われたのよ」

人の意識を一瞬にして奪う銃、これが使われたのね。

そして、地下エリアに連れ込まれ、首を絞められた。

たまたま私は近くにいた。駆け付けると、ハジカミは逃げた。

先生の意識を回復する施をしてるうちにハルニナも來た。代して私はハジカミを追いかけた。

捕らえたハジカミをグリーンに引き渡しておいて、再び意識を失ってた先生を競馬場の醫務室に運び込んだ。

「というわけ」

「そんなことが……、ありがとう」

「いいえ、私、ハルニナにこってり叱られた。あんたが付いていて何をしてたんだっ、て」

「付いて?」

「それは後で話すよ。それより、地下エリアのこと、聞きたくない?」

「ああ、何もかも聞きたい」

「だよね」

私たちが住んでるあのエリア、つまり京都競馬場の地下に広がるエリアをコアYDと呼んでる。

夕飯を食べて、溫泉につかり、お休みになったあのエリア。

コアYD。

京都競馬場に十か所、場外の近隣に五か所の出り口がある。

馬場にもあるし遊園地にもあるし、もちろんスタンドにもね。

実は、ほとんど使われることのない出口はもっとあるのね。

先生がハジカミに連れ込まれたのは、そういう出り口。

地下馬道の壁に、消火栓風のハッチがあって、そこから撃たれ、そこから連れ込まれたのよ。

「ちょい待ち。メイメイ、君の家は確か京阪守口の當たりだったよな。ハルニナは京橋近くだと聞いたことがある。京橋のガード下で占いの店を開いているとも聞いた。で、そのコアYDってのは? 住んでいるのか?」

「ええ、そうよ。基本的にはね」

「うーん、ということは守口の家とか京橋の家ってのは」

「まあ、カムフラージュってところかな。住所地が京都競馬場の地下っていうわけにもいかないでしょ」

「なんというか」

妙な話もあったものだ。

京都競馬場の地下に広がるコアYDなるエリアに住んでいる、とは。

いったい、メイメイやハルニナは何者。

とはいえ、ミリッサは気味悪くなったわけではない。

いずれもかわいい教え子。

たちには彼たちなりのがあるということだ。

そしてそれを、今、打ち明けようとしてくれているというだけのこと。

では、グリーンは?

ヘッジホッグは?

愚問なのだろう。

いずれも同じPH。

ハジカミはどうなのだ。

「俺は殺されかけた。その狀況は分かった。でも、なぜ?」

「ハジカミ爺の勘違い」

「勘違いで済ませられるようなことか?」

「もう大丈夫。誤解は解いたはずから。でも、しは心配。納得したかどうか、確かめようがないから」

「敵対する相手とは?」

「慌てないで。順に話すから。今日話すのは、ハルニナも合意のことだから、隠し事はしないよ」

「ああ、そうしてくれ」

「先生、蛇に憑りつかれてたこと、知ってた?」

「えっ」

急に、何を言い出す。

「でしょうね。でも、あんな巨大な蛇、普通は気付くよ」

「知らんぞ」

「先生がPHだったらね」

「俺がPH? メイメイ、ちょっと話をややこしくしようとしてないか?」

「ぜんぜん」

「じゃ、俺をからかっているとか?」

「違うよ。ハルニナも言ったでしょ。マニフェストしてねって」

「なんだよ、それ」

「だから、それは今から話すね」

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