《パドックの下はパクチーがいっぱい/子大の競馬サークルの先輩が殺された?著ぐるみの中で?先生、どうする? 競馬ファン必見、妖怪ファン必見のライト・ラブリー・ミステリー》44 大方の日本人なら、好度大

水曜日午後十七時。

ミリッサは、大阪の本町にある日本活力再生財団関西支部のビルの前で、ハルニナを待っていた。

ミリッサが自ら手を挙げた聞き込みである。ハルニナが補佐役。

もちろん、メイメイから聞いた話を確かめるためにも、ハルニナを呼んだのだった。

堂筋と四ツ橋の間、河原町にそのビルはあった。

青く塗られたエレベーターシャフトが目立つ六階建てのそのビルは、全フロア再生財団が占めていた。

一階エントランスは、外からでもそれとわかる々しい雰囲気の警備態勢が敷かれてあり、ロビーでハルニナを待つことさえ躊躇われた。

夕方の時間帯を選んだのは、ハルニナの授業の関係もあるが、もし都合よくヒアリングが運んだ暁に、ハルニナとゆっくり話がしたいと思ったからである。

ハルニナはいつものように黃いローブ姿で現れた。

ミリッサと一緒でうれしいな、とハルニナは言って、じゃ、行きましょう、と早速ロビーにっていく。

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付に聞くと、ノーウェが所屬していたのは老人福祉部という部所であり、上司を呼んでくれるという。

ロビーで待つことしばし、瘦で背広を緩く著こなした男がやってきた。

どこか、ミーティングスペースにでも通されるのかと思ったが、ロビーの隅で立ち話で済まされるらしい。

男の名刺には、ツータック(2択)と名が記されており、老人福祉部広報宣伝課課長とあった。

ミリッサより年下に見えたが、やけに尊大な態度で、

「ご用件は?」

と聞いてきた。

付で、ノーウェの普段の様子などについて聞きたいと伝えてあるのに、改めて聞いてくるのは、立場の違いを強調したい奴の常套手段だ。

ミリッサは幾分ムッとしながら、それでも下手に出た。

「お忙しいところ、突然押しかけまして、まことに申し訳ございません。私は」

と、ノーウェとの大學時代の関係を話し、ハルニナを紹介した。

「彼のことをもっと知っていてあげたいと思いまして」

ノーウェの死に疑問を持っているとは言わなかった。言えば、警戒させるだけだろう。

あなたにとって、どんな部下だったかと聞いてみた。

ツータックは、落ち著かない様子で、吐き捨てるように言った。

「警察にでも聞いたらどうです。一週間前にも刑事が來て、同じようなことを聞いていきましたよ」

構わずミリッサは次の質問を繰り出す。

「ノーウェは、競馬場での社のイベント擔當でしたよね。それはいつ頃からでしょう」

社當時から。これでもう、いいですか」

「ほかにもご擔當されている方がおられるのでしょうか」

「當然でしょう。とても重要な仕事ですから、數名で。おたく、何を知りたいんです?」

「ノーウェは生き生きと働いでいましたでしょうか?」

「は? ええ、まあね」

「あのイベント以外に、ノーウェが関わっていた仕事にはどんなことが?」

「それをおたくに話す必要はありませんね」

「では」

と、二人のの子が通り過ぎようとする。

ツータックが、

「おい、帰るのか。あれ、できたのか?」

の子たちは、明日しますね、失禮します、と立ち止まりもせずロビーを出ていく。

すっとハルニナが追っていく。

ミリッサはなおもいくつかの質問を続けたが、もうこの上司とやらから意味のある答えは聞けなかった。

ツータックがいかり肩でエレベーターに乗り込むのを見屆けてから、ミリッサは再び付に向かった。

「老人福祉部の部長さんにお會いしたい。アポは取っていませんが、ノーウェのことについてお聞きしたいので」

付に座ったは、

「かしこまりました。々お待ちください」

と言ってくれたものの、結局は不在ということでシャットアウトされてしまった。

しかたがない。

ミリッサはハルニナに連絡を取ろうとしたが、どこに行ったのやら、所在は不明で繋がらない。

ロビーに展示してあるケイキちゃん。

見て回るか。

間近でまじまじと見るのは初めてだ。

著ぐるみはよく見かけたが、こちらの展示はFRPのような樹脂をベースにしたハードタイプ。細かい部分まで作りこまれてある。

その名が表すように、とてもチャーミングなの子。顔の造作に々漫畫的な表現もあるが、おおむね実際の人間のの子の表に近い。

かすかに微笑み、大方の日本人なら、好度大だ。

足元にまで及ぶ長い金の髪。そしてスリムな長。この點は幾分、現実離れしている。

肩幅ほどもある大きなつば付き帽子。黃と緑などとりどりの無數のリボンが白い帽子に結んである。

これがケーキと呼ばれる所以だそうだ。

戦闘員的なクリームのユニフォーム。デザインとして、っぽいアイコンがちりばめてある。リボンや花、蝶やハート型。

短めのフレアスカートの下には、ラメ糸で花鳥が刺繍されたワインカラーのブーツ。

解説文によれば、高齢者になじみのある七十年ほど前に人気を博したアニメキャラを參考にし、親しみ慈しんでもらえるよう、新たなキャラを創造した、とあった。

競馬場で見る著ぐるみのケイキちゃんと構はほぼ同じ。

ただ、人がって作するため、著ぐるみの方がかなり太め。

その太めのケイキちゃんが全國各地のイベントで活躍している寫真もたくさん掲示されていた。

自畫自賛の辭麗句が被せられた寫真の數々。

もちろん、その中に京都競馬場も。

ミリッサはその寫真に目を凝らしたが、見知った顔は発見できなかった。

ケイキちゃんからのメッセージが流れる仕掛けもある。聞いてみたい気もしたが、警備員の視線が痛すぎて、そのボタンを押す気にはなれなかった。

高齢者の話し相手ロボットの実

ケイキちゃん以外にも多くの種類が展示されてある。

ミリッサはそれを見て回りながら、ハルニナからの連絡を待った。

ごめんなさい、もうちょっと待ってて。

なんとか話が聞けそう、という連絡がきたのは、ネコ型ロボット黒貓に見っているときだった。

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